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オッペンハイマーのtetsu3のレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
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僕は、こんなに恐ろしい映画を今までに観たことがない。

戦争を終わらせるために、これ以上アメリカと日本の犠牲者を出さないように、見せしめと降伏を促すために、落とされた2つの火。
トリニティ実験の成功の歓喜。
広島、そして、長崎への投下と被害。それによる日本の降伏への歓喜。狂喜乱舞。
笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔。。。

吐き気がした。

どこに正義があるのだろうか。
何が、誰が正しいのか。そもそも正しさがあるのか。
僕には全くわからない。

彼を中心として生み出された原爆は、日本に甚大な損害を与え、そして、さらなる脅威の水爆へ形を変えていき、核開発競争、米ソ冷戦へと突入していく。
保有すること、より強い武器を持つことによる均衡。それは、抑止力と言うのだろうか。
「ほぼ0」と言っていた、"爆発の連鎖"は、今もなお続いている。
大量殺傷兵器を生み出した者は英雄となり、その生み出したものがもたらすイタチごっこの末に英雄は邪魔者になる。
視点が変わることで、被害者は加害者となり、加害者は被害者になりもする。

なんなんだこれは。

自分の中にある、正義や倫理がものすごく揺らぐ。
その揺らぎを生み出す、音、振動、閃光、そして、クローズアップされる表情、そのどれもがどうしようもなく恐ろしかった。

日本について触れられるのは、投下選定地、被害の数値。それだけだ。
被害者というのは側面でしかないことはわかっている。惨状を描写することはこの作品の趣旨とは異なる。
それでも、木箱に入れられた「研究の成果物」が、広島へ長崎へ送られていくのは直視できなかった。

僕に、この作品を正しく評価することは難しい。
エンドクレジットが終わったあとに心に残ったものは、「無」だった。


OPPENHEIMER
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