このレビューはネタバレを含みます
その地方への移住、本当に大丈夫?と一歩踏みとどまらせてくれるいい映画。
舞台のイニシェリン島から結構すぐ近くにある、アイルランド本土の内戦とパラレルに描かれた2人の関係。
毎夜大砲の音が結構近くで鳴っているのに、我関せず、というほどの島民の様子は面白い。
考えてみればおっさん2人の意味わからん喧嘩を終始見せられているだけだが、この映画を観る自分たちに火の粉がかからない戦争のニュースも、そういう目で見てしまっていないか?と思わされる。
この映画が始まるより以前の2人の関係、そしてこの映画が終わった後の2人の関係、これは映画を観ている我々から見えないが、一番気になるポイント。
内容の濃い映画だが、実は経過した時間としては1週間くらいだと思う。
恐らく今回映画で起きたような出来事があっても、イニシェリン島は何事もなかったかのように、明日からまた時を刻んでいくのだろう。
一癖も二癖もある周囲のキャラクターに加えて、2人のイライラハラハラする(しかし感情移入出来ないほどではない)、人間対人間の関係は薄張りのガラスだなと思わせる演技には敬服しました。
あとは映像が緻密で美しく、ザ・アイルランド感のある島の描写(?)はたまらなかったですね。
〈キーワード〉
・なぜThe Bansheesなのか
・ドミニクの死
・扉の内側、外側
・アイルランドの歴史
・コルムの部屋の家具
・キリスト、教会、牧師