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BLUE GIANTのsanbonのレビュー・感想・評価

BLUE GIANT(2023年製作の映画)
3.7
セルルックな3DCGって、技術的にこれこそ最適とか、これじゃなきゃ出来ない表現があるとか、作品としての完成度を高める為に採用されるというよりかは、予算の都合上コストを抑える算段としてこれを取り入れざるを得ませんでした、という苦肉の策としての表現法にしかどうしても思えず、これの存在価値をどうしても未だ見出せないままでいる。

あの違和感しか覚えない、のっぺりとしていてかつ挙動が不自然なアニメーションを、これめっちゃいいじゃんってなってる業界人がもしいるとするならば、直ちに制作からオサラバしてもらいたい。

そのくらい、この3DCGアニメが個人的には大っ嫌い。

今作も、一番の見せ所となる演奏シーンでこの表現法が採用されており、一番の見せ所なのに作画のクオリティが著しく損なわれていたのには、正直非常に残念極まりなかったと言わざるを得ない。

再三言うが、演奏シーンこそ一番の見せ所なのだ。

手描きで行う事の難しさ、モーションキャプチャーを取り入れたからこその折衷案だった事は百も承知だが、だったら3DCGパートを手掛けたスタジオがド下手くそだったと断言しよう。

何故なら、直近で「スラムダンク」という傑作を目の当たりにしているからだ。

技法的には同じものを使っているのに、これほどまでに差が目についてしまうのだから、そう言ってしまって差し支えないはずである。(まあ、あちらは企画段階から数えると20年近く製作に時間を要していたみたいだが)

劇場用アニメが最盛期を迎えている今、今作の作画レベルはハッキリ言って他の作品と肩を並べるだけのクオリティには至れておらず、メインターゲットを明確に目の肥えた大人に向けて制作されていたアニメだっただけに、これには期待していた分だけガッカリ度合いもより強く感じてしまった。

また、原作未読なのだが、どうしても話の展開がダイジェストにしか感じられず、大事な行間がことごとく抜け落ちてるように思えてならなかった。

特に、登場人物が感極まって涙を浮かべるシーンに対してはその感覚がより強く、もっと深掘りしなくてはいけないじっくりと見せるべきエピソードが絶対なにかあったのではないかと思わせる突飛さがいちいちついてまわり、いまいち感情移入が出来なかった。

例えば、最後の演奏シーンで度々観客の若いおねーちゃんの一人が、「ユキちゃん」と言って涙ぐんでいる姿がフォーカスされるのだが、ちゃんとメンバーの一人に縁のある人物の筈が、それについてろくな説明もなくぽっと出てくるもんだから、そのユキちゃん自身イケメンキャラという事もあり、見ているこっちはただの追っかけかなにかと勘違いしてしまい、お前誰やねんと抜かれる度に心の中でツッコミが入ってしまい、感動が引っ込んでしまったり。

それこそ、日本最高峰の舞台を目指す物語である中で、メンバーの一人が正に0からのスタートをする事になる全くのド素人であるという設定が、始点と終点の間にあまりに高い壁が隔たっている分、今作の尺だけでは総集編のような感覚を更に助長させてしまっており、上手く滞りなくまとめるには時間も足りなかったのではと感じてならず、これは本当に映画で作るべき作品だったのかと疑いを持たずにはいられなかった。

あと、音楽を題材にした漫画は、音が無いからこそのハッタリを、絵だからこそ出来る表現として魅せられる事が最大の難しさであり強みでもあるから、原作の持つ熱量を完璧に映像化するのは絶対に不可能だと思っており、その上でジャズにはとんと疎い僕だから、劇中に流れた演奏がどこまで原作に寄り添えていたかは計り知れないのだが、そこら辺有識者の方はどうだったのだろう。

個人の感想としては、ぶっちゃけそこもふーんって感じだった。

軒並み高評価レビューの中、このような感想となってしまった事が残念でならないが、作画クオリティもそこそこなら、しっかりと尺を担保出来る連続アニメとして作って欲しかったというのが本当のところだった。
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