翼

BLUE GIANTの翼のレビュー・感想・評価

BLUE GIANT(2023年製作の映画)
4.8
温度が高過ぎて青く輝くジャズを、新たな次元で体感する凄まじい作品!
コレなんでこんなに話題にならない!?2023年ベストムービーの類だぞ

心臓の鼓動から直接分泌されているような、理屈じゃ説明できない涙が溢れ続けた。泣ける映画は良い映画という論調は否定派だけど、音楽でこんなにも理屈抜きに感情が揺さぶられることあるか!?ファンタジアでしか味わえないようなこの体験は稀有。
原作の勢い・迫力をどれほど味わえるのかと観に来たファンを黙らせる息を飲むプレイは、大がジャズが好きな理由「熱くて自由だから。」をまさに体験したような感覚だった。

私は、ブルージャイアントの真髄は大の生き様と演奏に影響を受けた大人たちが変化していくことにあると疑わない。夢を諦めたり忘れてしまった大人たちが、大と出会うことで心に火が灯り瞳に輝きを取り戻す物語。その遍歴がブルージャイアントという物語なのだと解釈している。
漫画でお馴染みのインタビュー形式のカットもまさにイメージ通り撮られていて、原作愛をひしひしと感じた。製作陣とは絶対に良い酒が飲めそう。

雪祈が壁にぶちあたった時の大と玉田の反応が良いんだよな。自身で乗り越えるしか無い、と信頼した上で突き放す大と、慮って仲間じゃねえのかよと吠える玉田。やり方は異なっても二人とも最大限で雪祈を想っている。仲間って仲良しこよしじゃなくてこういう関係性のことを言うんだよな。

ただ触れておかねばなるまい、惜しむらくはCGパート。ここまで肉迫する表現の中にロボットのような無機的な人体表現は雑念でしかなかった。好きな作品にケチつけたくないけど、こればかりは無視できない。「よくやってる」は「良い」では無い。その分、線描された音楽表現はそれこそ息を飲む迫力で新たな次元に突入している感さえある。音楽の映像化はいろんな映画作品が挑戦して苦労しているけど、一つの解だと思える美麗さだった。だからこそ逆に引き立ってしまう3DCGの不気味さよ…。

余談ではあるのだけど、本作然りスラムダンク然り、3DCG表現は10年後くらいにどんな評価になっているのか気になる。昔のポリゴンCGを見て苦笑するようなものになっていないことを願う。真の名作はどんな時代にもどんな表現であれ受け入れられると信じているが、この名作たちが「この時代のCG動きキモw」と余計な部分でケチが付くことが本当に残念である。杞憂かな。
翼