山本

BLUE GIANTの山本のレビュー・感想・評価

BLUE GIANT(2023年製作の映画)
4.2
すさまじかった。ドラマやストーリーもあるけれど、音楽にかけるひたむきな熱意に感動した。不思議……悲しいとか、困難を乗り越えたとかいうのではない。ただ、演奏がすごい、熱量がすごい、そのエネルギーに感動して涙が出てしまう。こんなに人を動かす音楽があるのかと。しかもそれをほんとうのライブではなくアニメーションでやってのける。なんなんだ? これは。たぶん、いま言ったような音楽の強さだけでなく、アニメーションの表現にも感動させられている。音楽のパトスを音でない形で、視覚的に表現したらどうなるかという挑戦、試みの結晶だったのだと思う。たとえば終盤、あるライブハウスでユキノリがピアノを弾いているときに鍵盤と彼の指がぐにゃりと曲がって溶け合うような描写があるのたが、これは見方によってはピアノがユキノリを取り込もうとしてる、あるいはユキノリがピアノに入り込むようにも見えるのだが、いずれにせよユキノリが楽器と一体化するようなグルーブ感を表そうとしたらこういう描写になったんでしょう。または彼らの演奏を聴いたときに心の中に生起するさざなみをアニメーションにしたらどうなるか、ということなのだと思う。従来的な絵作りでは達成できないことを表現しようとしてアートっぽい、場合によってはサイケデリックな映像になっている。WMP(ウィンドウズメディアプレーヤー)を人力でやっているような…そういう、音楽のエモーショナルなパワーをヴィジュアライズしようというアニメーションとしての限界を超える熱量の高さ、野心的なところにも感動したのだと思う。音楽としての凄さと、映像としての凄さ、その二つがブレンドされた感動というか…。
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