カリカリ亭ガリガリ

デューン 砂の惑星PART2のカリカリ亭ガリガリのレビュー・感想・評価

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)
4.8
1より面白い!アート志向だった前作からガラリと方向転換して、重厚なSF映画から宇宙砂漠アクションエンタメ映画に変貌!矢継ぎ早な編集テンポ!もはやシーンが抜け落ちていて繋がっていない省略の乱暴さ!パート1からどうしてこのバカテンポでやらなかった!
あらゆる要素が驚くほどに荒唐無稽になっていて、良い意味で全く飽きなかった(1めっちゃ好きな人があんまり褒めてない空気もよく分かる)。

前作はアトラクションとしても最高に楽しかったし、ヴィルヌーヴはSF映画史に残る良い仕事をしたなーと擁護派、大変面白かったのだけど「好きな映画」では全くなかった(だから年間ベストにも選ばなかった)。リンチ版のデューンはあまりにも面白くないけれど「好きな映画」だ。ヴィルヌーヴが徹底するスカスカな画面設計もフレームのチョイスも、演技の演出も好みではない。何より『砂の惑星』にあるオリジンのセンス・オブ・ワンダーなヴィジョンが、アートっぽい文脈でそれっぽく処理されてしまっている凡庸な真面目さが目立ってしまう(リアリズムよりもファンタジーを信じているのがホドロフスキー版やリンチ版やTV版の良いところ)。ただ、『砂の惑星』を映像化するにあたって、他の誰よりも忠実に努力したことだけは事実だ。

デューン2はそういった点を踏まえて、歴然とヴィジュアルバリューなSFアクションエンタメ映画として完成していて、そこが素晴らしい。
惑星ギエディ・プライムのモノクロの空にブチ上げられる真っ黒い液状の花火なんか最高である。
オーニソプターが画面を覆い尽くして飛行するショットなんか、あまりにも既視感がある、でも観たことのないバカっぽさに溢れていて惚れ惚れした。
そうそう、こういうのでいいんだよ!砂の惑星がちゃんとポップコーンムービーと化していることの嬉しさがある。

尺の使い方にしたって、この速度を選択している判断が良い。まさかここまで詰め込まれているとは、ってか原作のそこまでやってくれるの?!という驚きもありつつ、前作のような高級志向と相反する、展開に次ぐ展開の快楽がある。
「こんなのただのハリウッド大作じゃん」という批判もあるみたいだけど、ただのハリウッド大作としてのエンタメな砂の惑星が観たかったんだからしょーがない!

パート2の良いところは、あらゆる点において、ちょっと皮肉ではないくらいには徹頭徹尾にバカっぽい、ということだと思う。
そして、自分はそういったキテレツでどうかしている、ファンタスティックなSFこそが観たかったし、それは原作の大きな魅力でもある(特に原作3部目の『砂丘の子供たち』の砂虫人間なんかは絶対に実写で見たい!)。
あんな重厚なパート1を作っておいて、ここまで振り切れてしまうのか。その思い切りの良さは大肯定したいのだ。
この感覚は、リアル主義、シリアス路線と思われがちなノーランに対する「バカっぽい可愛らしさ」と共通している。

ってかヴィルヌーヴ『砂漠の救世主』やりたすぎだろ。どんだけ『砂漠の救世主』要素を散りばめるんだと。この映画自体が『砂漠の救世主』の企画書みたいになっていてそこも面白い。確かに『砂漠の救世主』めっちゃ見たくなるからな。

ヴィルヌーヴのライフワークとなるか、いろんな監督によるデューンが作られることになるか、何にせよ今後も楽しみです!
リサーン・アル=ガイーブ!!

↓よりふざけた感想。
https://filmarks.com/movies/99843/reviews/171805357