カリカリ亭ガリガリ

ニューオーダーのカリカリ亭ガリガリのレビュー・感想・評価

ニューオーダー(2020年製作の映画)
5.0
大傑作!容赦ない阿鼻叫喚の地獄絵図が、僅か86分にギュウギュウに詰め込まれた"ホラー"映画。年間ベスト級。『福田村事件』は国境を越えてどこでもいつでも起きる。今の日本で本作のようなことが起きない保証は全く無くて、むしろベクトルは『ニューオーダー』に向かっているとしか言いようがない(インボイス制度然り、増税然り、低賃金然り、戦争の予感然り)。

社会構造そのものが"地獄"なので、ある日発生した"可視化された地獄"から抜け出そうと足掻いても、結局はまた新しい地獄が誕生するだけという現代の怪談。地獄の堂々めぐり感は、まるで人類史そのもののメタファーのようでもある。

日常が突然ブチ壊される演出が、やはりそこは嫌映画の天才ミシェル・フランコ、得意の長回しで華麗に魅せる。特に(これもお得意の)車中定点カメラが捉える景色が、文字通り"地獄の色"で染まる瞬間をワンカットで撮っていて、ああいった緊迫感の生み出し方は流石だ。

冒頭に映る絵画の意味が分かるエンドロールに戦慄する。

悪い人の顔がウド・キアに似てるのがウケる。