カリカリ亭ガリガリ

真夜中のパーティーのカリカリ亭ガリガリのレビュー・感想・評価

真夜中のパーティー(1970年製作の映画)
4.5
フリードキンの作品で配信ナシ、DVDも廃盤でずっと観られなかった映画なんだけど、レンタル落ちで入手。マート・クロウリー原作による1968年初演のオフ・ブロードウェイ舞台劇が原作で、ハリウッド映画史において初めて「同性愛を真正面から描いた」作品だという。

素晴らしいホンだなー。基本はワンシチュエーションの台詞劇でありながら、複雑な心理描写と関係性の構築によって見事なサスペンスになっている。飽きさせないようにマルチアングルを駆使して、バッサバッサとカットを切りまくってるのもフリードキンっぽい。
特に、ゲイのパーティーに突然来訪してきたストレートの人物の登場シーンは、絶えず緊張感が持続していた。

極め付けは後半のかつて愛していた人への告白ゲームの開始で、これが修学旅行なら盛り上がるんだろうけど、各々が過去を告白していけばいくほどに地獄と化していく。愛について語る時、哀しみと自尊心の喪失だけが残り、誰一人として幸せにならない。これまでも、これからも。やっぴー!と楽しんでいたはずの時間において、その地獄に気付かされる、そしてパーティーは終わり、また日常が始まる……

主人公のマイケルが指摘する、大学の友人アランとの過去。「お前はそんな自分自身を認めたくなかったんだ!」「お前は自分のことが大嫌いなんだろ!」その言葉が、まるでマイケル自身に問われるクライマックスは圧巻で、精神分析的ですらある。
自分自身を認められず、他人をヘイトして責めてしまう。そんな自分がまた嫌になり、泣きながら朝を迎える。これはゲイの人々だけの物語ではない。

色々と語られない謎も残されているけれど、その謎の「分からなさ=他人の分からなさ=自分の分からなさ」が魅力的で、観た人によって解釈の幅が広がる作品なのも興味深い。
ただ一つ、分かってしまったことがあって、その答えを電話口で聞くマイケルの表情を捉えたショットは名シーンだ。

中盤から登場するハロルドさんがピーター・セラーズの如き怪演で、容易く場を掻っさらう説得力と支配力に満ちていて超良い。この人は何を言っても説得力が出てしまうので、だからこそ、最後にマイケルに投げ掛ける言葉が重い。しかも急にベルイマン『仮面/ペルソナ』オマージュなショットの中でその台詞を発するので、やっぱりこれはアイデンティティを巡る一夜の寓話なんだと一気に納得できた。

冒頭が"Anything Goes"で始まるのが『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』かよ!ってなったけど、もちろんこっちの方が先。「なんでもあり」って曲にのせて描かれるゲイの人たちの日常、なんでもありの時代が来た!というよりも、なんでもありの時代になることを祈っているかのようなモンタージュが実に良い。
バート・バカラックの"The Look of Love"の使い方も粋で最高。大雨の中で流しているのがマジ天才。

そして写真のモデル役で数秒だけ映る、ボンドガールのモード・アダムス。