カリカリ亭ガリガリ

窓ぎわのトットちゃんのカリカリ亭ガリガリのレビュー・感想・評価

窓ぎわのトットちゃん(2023年製作の映画)
5.0
大傑作。コレってつまり、高畑勲の意志は我々が継ぎますよ宣言なのでは?!(アンチ感動ポルノ、だからこそ、凄まじく感動する、という作劇が)
もはや戦争アニメーション、ひいてはアバンギャルド号泣映画として名作の域。去年観ていたら間違いなくベストだった……
戦場に行かなくても、戦争は描ける。

中盤、子どもがただ木に登るってだけなのに、アニメーションの力も相待って、心が揺れ動かされたという意味で、マジで「感動」して泣いた。
終盤のあのシークエンスにおいては、トットちゃんが目の当たりにする光景の残酷さに嗚咽してしまった。
時を超えて、トットちゃんたちとガザの子どもたちが重なってしまう。
一体、この子たちの頭上に爆弾を落としていい理由なんて、どこにもあるわけがない。
作り手の「怒り」に、戦争を知らない子どもも含めた誰しもが共鳴できると思う。

前半のトットちゃんの挙動もずっと可愛いし、とにかく子どもという生き物は可愛いくて面白くて楽しい!というダイナミズムが全力でアニメーションに描かれていて、だから子ども映画(小津?清水宏?)としても最高。子どもたちが運動会してやったー!ってなってるだけでもびーびー泣いちゃった。

ちびまる子ちゃんの『わたしの好きな歌』をレファレンスにしているようなアバンギャルドっぷりも(そこで描かれるアニメーションも)素晴らしかった。

役所広司演じる校長先生が、トットちゃんと話す時に必ずトットちゃんの目線までしゃがんであげるアクションそれだけでもうヤバかった。

映画が終わった後に「ねえ、この後あの人やあの人はどうなったの?」と子どもが親に尋ねられるような、親が子どもに教えられるような余白があって、そこの地点まで「戦争を想像し、戦争を語り継いでいくこと」を信じているのが凄すぎる。
魂が美しい映画。