田島史也

BLUE GIANTの田島史也のレビュー・感想・評価

BLUE GIANT(2023年製作の映画)
3.9
青春と成長と情熱と、ジャズと。

青春の全てをジャズに捧げた宮本大という圧倒的な主人公。3年しかやっていないサックスで、沢辺雪祈や大人たちの度肝を抜く様は、実に爽快。ジャズに情熱を燃やし、ひたむきに努力を続ける姿は、まさに主人公そのもの。

そして沢辺雪祈と玉田俊二の成長。前者は既に持ち合わせた類稀なセンスと教科書的に洗練された演奏からの解放、後者は初心者としてドラムを始め、急速に、しかし着実に成長していく様を描いた。特に玉田の成長を見守り続けたおじさんの言葉が心に刺さった。他2人の技術が突出するバンドで、ただでさえ目立たないドラムの玉田に一筋の光が当たる瞬間。そんな瞬間は、本作だったからこそ訪れた甘美な瞬間である。

本作は最高のナラティブと同時に、至高の音楽体験も実現している。これはきっと映画館で観るべき作品だったのだろう。力強いサックスの音は、セリフとして語られるのみならず、音そのものによって語られる。ジャズの奥深さ、面白さに触れてしまった今、「So Blue」のモデル「Blue Note Tokyo」に行かなくてはなるまいという目標が生まれたほどだ。

一点気になったのは、演奏シーンの動きの違和感だ。きっとCGIを用いたであろうアニメーションは、滑らかな動きを実現してはいたものの、それがかえってアニメ空間の中に不協和音を生み出していたように思う。

本作は「So Blue」でのライブを辛くも成し遂げ、バンドを解散し、宮本大が飛び立っていくシーンで終わりを迎える。しかし、作品の随所に数年後のインタビュー映像が差し込まれ、その後宮本大が有名になったことが示唆される。同時に玉田俊二がドラムを生業とはしていないことも明かされる。では実際に宮本大はどのような未来を描いていったのか、雪祈は復活できたのか。この辺りは本作において語られなかった。機会があるならば、後日譚を是非とも製作していただきたいと思う。その際は必ずや映画館で観ることを心に誓った。


映像0.7,音声1,ストーリー0.9,俳優0.8,その他0.5
田島史也

田島史也