幽斎

デューン 砂の惑星PART2の幽斎のレビュー・感想・評価

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)
5.0
是非、劇場でご覧頂きたくレビューの掲載を繰り上げました。間に合ったかな?。

恒例のシリーズ時系列簡略版、多過ぎて全部は書けない
1984年 3.0 DUNE デューン/砂の惑星 ブツ切り過ぎてダメ、レビュー済
1988年 4.0 DUNE デューン/砂の惑星 未公開シーンを追加、189分
2013年 4.2 Jodorowsky's Dune 難攻不落と言う未完の傑作、レビュー済
2021年 5.0 Dune: Part One デューン/砂の惑星、前作、レビュー済
2024年 5.0 Dune: Part Two 続編、本作
2025年? Dune: The Sisterhood スピンオフ、前日譜、撮影中断
2027年  Dune: Part Three 当然です

MOVIX京都Dolby Cinemaで2回鑑賞。迷いなく最前列のリクライニングシートを選択したが、期待通り音響の迫力は過去最高のエクスペリエンス!。だが、本来は6階建てビルの高さの映像「IMAXレーザー/GTテクノロジー」池袋グランドシネマサンシャイン、109シネマズ大阪エキスポシティの2館しか無い。京都も二条と四條畷にIMAXは有るが、アスペクト比1.43:1を上映すると画面の上下が切れてしまう、罪な映画(笑)。

1965年「デューン/砂の惑星」Dune
1969年「デューン/砂漠の救世主」Dune Messiah
1976年「デューン/砂丘の子供たち」Children of Dune
1981年「デューン/砂漠の神皇帝」God Emperor of Dune
1984年「デューン/砂漠の異端者」Heretics of Dune
1985年「デューン/砂丘の大聖堂」Chapterhouse : Dune

Frank Herbert原作「DUNE」日本ではハヤカワ文庫新訳版「上、中、下」発刊。旧訳より格段に読み易く、貴種流離譚と高度テクノロジーが融合。イタリアの名プロデューサーDino De Laurentiisが「DUNE デューン/砂の惑星」完成。しかし、4時間以上の大作で製作したユニバーサルが「馬鹿じゃないのか、2時間以内に収めろ!」David Lynch監督の主導権を剥奪、ブツ切りのオンパレードで酷評。当初はRidley Scott監督だったが意見が対立して離脱。代わりに出来たのが「エイリアン」だから映画って面白い。

再起動はWarner Bros.の制作会社レジェンダリー・ピクチャーズ。中国大連万達が買収。台湾の俳優を使い主君を裏切るキャラクターを演じさせ、台湾情勢を盛り込む嫌味炸裂。ワーナーは難攻不落な原作を「ブレードランナー 2049」Denis Villeneuve監督に全権委任。今回は中国大連万達を撤退させ、原作者の息子Bryan Herbertのアドバイスを守り、説明は全て削ぎ落とした。Lynch版モノローグは没入感を阻害する事を見抜いてた。

皇帝は満を持してChristopher Walkenなら納得。Lynch版でStingの演じたフェイド・ラウサ、Jodorowsky版はMick Jagger、本作は「エルヴィス」Austin Butlerが熱演。女性ファンにはTimothée Chalametで十分だろうが、男性目線で言えばZendaya、アメリカでは圧倒的なカリスマだったが、日本人にウケるか、やや不安。ワーナーも私と同意見らしく人気絶頂Florence PughとAnya Taylor-Joyと言う良い補強。熟女ファンには私も大好きRebecca Ferguson、更にLéa SeydouxとCharlotte Ramplingも(笑)。

北米の歴史学を京都の大学で学んだ友人が、オープニングを見て大いに頷いた。ソレはDUNEの書体。面白い並びだが、アレには意味が有るそうでアメリカ大陸に居た、ファースト・ネーションズ。北アメリカのインディアンを祖とするカナダに渡った先住民。彼らが使う文字が、タイトルにソックリ。原作の先住民フレメンの物語は後に「アバター」も真似した。カナダの先住民の書体はカナダ人監督からの「メッセージ」。

私は室町時代から続く武家の出自、ポール・アトレイデス公爵の気持ちは良く分かる(笑)。皇帝の親衛隊サーダカー、フェイド・ラウサの動きは、日本の侍と同じ。原作も銃でなく刀で戦う姿は「スターウォーズ」も真似したが、格闘戦の基本は日本の柔術、ソレは「マトリックス」も真似した。原作は西暦1万190年から始まる桁違いの未来。A.Iは惑星の環境を変えるべく反旗を翻し、人類は存亡の危機に立たされる。コレは「ターミネーター」ソックリ真似した。砂は景色ではなく、壮大な物語の意外な最終章に貴方も驚愕するだろう。前作はCOVIDで配信を先行すると発表した時「映画を殺す気か!」天下のワーナーに監督が啖呵を切った、是非今回も劇場で貴方もエクスペリエンスして欲しい。

観た人の数だけ「DUNE」が有る、貴方のDUNEを見つける旅を、映画館で待ってる。

【ネタバレ】物語の核心に触れる考察へ移ります。自己責任でご覧下さい【閲覧注意!】

「貴種流離譚」若き英雄が他郷を彷徨い試練を克服、尊い存在と成る説話の類型。日本も「スサノオ神話」「源氏物語」負けて無い(笑)。原作は英国的貴種流離譚。だが、監督は前作でソレを明確に否定。ハルコンネンはナチス・ドイツ、フレメンはイスラム、アトレイデス家はイギリス王室、つまり没落貴族。其々の宗派を棲み分けた。「彼こそが救世主だ!」マトリックスもスターウォーズも真似したが、壮大な叙事詩ではポールも歴史のコマに過ぎず、本作で語り手も変化した事に気付いただろうか?。

真の敵はハルコンネンでは無く、皇帝を操る「ベネゲセリット」明かされる。原作では7種のスペックが有る、最も進化した人間。本作ではヴォイス程度だが、生身の人間が持つスペックと言えばマトリックスもスターウォーズも真似したが、原作の「レト2世の暴君の時代」「大離散」サイコキネシスも持つ。近付けるのは帝国のサウダウカー、アラキスのフレメンだけ。彼女達は常に勝ち馬に乗る、勝ち馬を創る事に存在価値が有る。

トイレ禁止の長丁場にも関わらず、前作は原作の1巻目の途中まで(笑)。本作は1巻目の後半と2巻目「砂漠の救世主」描くが、時間軸が異なるので、本作でドウ繋げるのか見物だったが、原作で人気の高い「アリア」の設定を大幅に改変、胎児の段階からテレパシーが使えるとか、本作にも積極的に介入してくる。演じたAnya Taylor-Joyはチョットだけよ状態、次回「Dune: Part Three」アトレイデス家の真実も明かされるだろう。

原作者はHomophobia、ハルコンネンの家系はGay。Charlotte Rampling演じるマザー・ガイウス・ヘレン・モヒアムは、ハルコネン男爵の母親で彼らの祖母。ベネゲセリットを強姦した罪に問われ、母親から不治の血液の病を与えられた。人間なら腎不全で痩せ細るのに寧ろ重度の肥満に。彼の身体には透析装置が欠かせない。男爵は原作ではポールの妹アリアに殺される、まだ4歳で(笑)。強いて難点を言えば、絵面が前作と変わり映えしない。監督はモダン・アートな世界観、Lynch版サイケデリックとは対極のアート・コンシャス。皇帝の世界観はローマ帝国なので、もっと欺騙なヴィジュアルでも良かったと思う。

監督は疲れたと休息したいらしいが、本音は「007」の監督をヤリたいらしい。ベネゲセリットを原作とは異なる秘密諜報員に仕立て、Javier Bardem「007 スカイフォール」、Léa Seydoux「007 スペクター」「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」、Dave Bautista「007 スペクター」、Christopher Walken「007 美しき獲物たち」偶然かな?。本作は公開僅か10日で前作の最終成績を超える超特大ヒット。次回は原作で最も面白いと評判の第3巻「砂丘の子供たち」。史上最大の寸止めでお預けのファンも黙って無いゾ。

【ネタバレ】原作を読んでない方は絶対に見ちゃダメだ、絶対だゾ!(笑)【閲覧注意!】

誤解を恐れず言えば原作は或る意味「宗教本」。原作に沿った流れの仮説で、実はポールとチャニの子供が本当の救世主、ポールは救世主を誕生させる「種」。聖母はチャニ、政治的思惑で結婚するイルラーン皇女の子供では無い。時代劇の様に正室と側室が家系的に分岐、次回作で明かされるが、チャニはポールの子供を既に妊娠してる。ソレはさり気無く本作にも伏線が有りました。そして、チャニは最終的に死ぬ運命に有る。

ポールはクウィサッツ・ハデラック「救世主のフリ」をする。惑星間の大戦に突入するが、救世主と言う一種の宗教で団結力の有るポールの軍勢が優勢。「砂の惑星」プロットは、人は神を信仰するが、本作では人が神に成り変わろうとする。ソレは自然の摂理から逸脱した禁忌。私はEXクリスチャンですが、神を目指す行為は必ず罰せられる宿命に在る。

「砂の惑星」元ネタは旧約聖書の創世記に登場する「バベルの塔」。なぜ「砂」かと言えば、キリスト教の新約聖書マタイ福音書に記されてる「House built on Sand」キリストの一節。意味は「砂上の楼閣」砂の上に家を建てた愚か者、誰の事かお分かりですね?。

聖書にはキリストの言葉が書かれてるが、キリスト自身が執筆したモノでは無い。ポールがキリストとすれば、彼を神と信仰するスティルガー達が、彼の聖書を創る役割。救世主を一番信じてないのがチャニ。その対立がポールと真の救世主の自分の子供に発展。ポールは悪魔として自分の子供に成敗され、スターウォーズも真似したが、ギリシャ神話のオイディプス王の様に親殺しの宿命を背負う。今宵は此処までに致しとう御座りまする。
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