アー君

シド・アンド・ナンシーのアー君のレビュー・感想・評価

シド・アンド・ナンシー(1986年製作の映画)
4.5
雑誌のインタビューでラフィンノーズのチャーミーがピストルズについてシドとスティーヴは本気だったけど、ジョン(ジョニー)とマルコムは違っていたという趣旨のようなことを語っていたけど、(だいぶ昔の曖昧な記憶なので事実と異なる場合もございます。)前者は一本気なところは認めるが、肌で感じるか頭で感じるかの違いぐらいであり、脱退したヴォーカルのジョン・ライドンがP.I.L.へ行く流れは現在のオルタネィティヴ・シーンの行く末を冷静にみていたし、山師まがいのマルコム・マクラーレンのキッチュなマネージメントと裏方がシャシャリ出る影響を受けた人物は多くいると思う。(クリエイション・レコーズのアラン・マッギーとか。でもクレイジーキャッツの青島幸男が元祖か笑)

この危ういメンバー同士のバランス感覚がThe ClashやDamnedにはない魅力があって、今でも好きなバンドかもしれない。

最初で最後のアルバム「Never Mind the Bollocks(勝手にしやがれ‼︎)」にしても、激しいけど聴いていて耳障りではない。これはプロデューサーのクリス・トーマスの技術によるものだけど、中音域が強いのが原因であるが、クリス自身の聴力障害が功を成した結果ともいえる。もちろんデイブ・グッドマン・プロデュースによるブート盤「SPUNK」の前任者グレン・マトロックのベース音も嫌いではないけど。

[一部にセンシティブな表現がございます]

枕はこれぐらいにして本題に入るけど、この映画はジュリアン・テンプルの「ザ・グレイト・ロックンロール・スウィンドル」と同時期に並行してよく観ていたことを思い出すな。

ただ初見がレンタルで借りたのか、深夜番組の録画が先だったのは定かではないけど、民法テレビなのにCMナシで本編を鑑賞できるのは、気の利いたことをする記憶だけは残っていた。

バンド活動中に起きたエピソードとして、放送事故のビル・グランディ事件、テムズ川でのゲリラライブや保守派暴漢による傷害事件などの実話は要所を押さえて入れているので、脚色も少なからずあるだろうが、監督であるアレックス・コックス自身もピストルズに思い入れがあるのは分かる。

事件の真相は映画による解釈では痴話喧嘩らしいが、前兆として部屋が火事になっても平然としていたので、過剰な麻薬摂取によるオーバードーズからの酩酊状態やナンシーの被虐性を欲する希死念慮もあり、男女の関係において善悪のどちらかを問うのも如何なものかではあるが、真実はお互いの間でしか知り得ない事柄なんだろう。(金銭目的の他殺説もある。)

ナンシー・スパンゲンを演じたクロエ・ウェッブは、批評家協会から演技を認められ主演女優賞を獲ったので、これからの活躍に期待をしていたが、それ以降の配役に恵まれなかったのか、最近は見かけずどうしているのかなと思ったら、数年前にパトリシア・アークエットのテレビドラマ(※)にゲスト出演をしていたのをクレジットで偶然知ったが、20年も経っていたので髪は黒くてだいぶ雰囲気は変わっていた感じだった。

※『ミディアム 霊能者アリソン・デュボア シーズン2』
第3話「もう1人の私 Time Out of Mind」 に出演

ゲイリー・オールードマンを知ったのは早くこの映画からであるが、演技から少年のようにナイーブな面も垣間見ることができる。一時は悪党専門というレッテル貼りに自身の性格とのギャップにウンザリしていたようであるが、ノーランのバットマンシリーズによる善良な刑事役の抜擢は本人としては嬉しかったのではないか。

シド・ヴィシャスから連想するのはポゴダンスの発案者、凶暴で叛逆、ジャンキーなどであるが、パンクのステレオタイプ的なアイコンを周囲から止むに止まれずにロックスターの幻想を背負ってしまった感も否めなかった男の孤独な生涯であった。

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My way

And so I face the final curtain
いま終わりに近づこうとしている

You xxnt, I'm not a queer
クソ野郎が、オレはホモじゃねえ

I'll state my case, of which I'm certain
オレは自信を持って、オレの意見を言うぜ

I've lived a life that's full
充実した人生を送ってきたからな

I've traveled each and every highway
あらゆる道を旅してきたし

And more, much more than this
そしてこれ以上に、より多くのことをさ

I did it my way
オレはテメェのやり方でやるだけ


Sid Visious,
John Simon Ritchie
(1957-1979)

[ブルーレイによる購入・視聴]
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