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デューン 砂の惑星PART2のドントのレビュー・感想・評価

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)
3.9
 2024年。大変おもしろかった。と同時にこわい映画ですね、これは。前作で砂の民と行動を共にすることとしたアトレイデス家の生き残り・ポールが生き方戦い方を学びながら成長していき、母親の覚醒もあってどんどんやべぇ方向に伸びていき、大半のキャラが預言者ポールにガンギマっていく第2作目。原作未読。
 本作、端的に言うと、「神話なのかニセの神話なのかわからねぇ物語」なのだと思う。高貴な血筋で予知の力の者が追われ生き残り……という話だったパート1は神話らしさがあった。が、こちらでは預言者と聖母、政治を巡る物語が権謀術数、手練手管にまみれていく。皇帝、男爵、教母連合の思惑が絡み合う。神話とか聖なる物語と呼ぶには人の手垢に汚れすぎている。
「いやぁ僕はそういう器じゃないし……」と弱気だったポールも、お先に「伝説」にキマっていた母親や覚醒青汁のせいもあり清濁を呑み込んでいく。「救世主じゃない、って言ってる……おくゆかしいぜ~! やっぱ本物だ~!」なんていう本作で数少ない面白シーンもどんどんマジのトーンに変わっていく。
 転がっていくにつれ、この物語がどこへ向かうのか全くわからなくなってくる。ダーティすぎて「こうして星々は平和になり、みんな幸せに暮らしましたとさ」というお定まりの所には落ち着かないような不安、気配が匂い立ってくる。スパイス採集機襲撃や砂虫大暴れなどのアクションも、終盤の「やるの……?」な展開から遡れば決して痛快な場面ではないように思えてくる。っていうか核とかぶっこんでるし……
 かくして我々は不確かで五里霧中、みんなして膝を折りアリガタヤしている外側で、「あかんのとちゃうか?」との気持ちを抱えたまま、預言者伝説のなりゆきを心配な目つきで眺めることになる。そうまさにゼンテイヤのあの目つき、眉間の皺と同じものを浮かべながら。いやはや金のかかったSFアクション超大作でこんな気持ちにさせられるとは思わなかった。間違いなく賛否分かれるでしょうが、私は好きです。
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