めしいらず

老婦人とハトのめしいらずのレビュー・感想・評価

老婦人とハト(1998年製作の映画)
3.8
セムの絵画や風刺画のようにデフォルメされた画と、バンドネオンが奏でる洒落た音楽とが、如何にもフランス的なエスプリを感じさせる魅惑の世界観。コミカルでシュールな展開から物語は不穏な空気を纏っていく。都合が良いことには必ず裏がある。主人公が飢渇に耐えかねて絞った知恵。優しげなおばあさんを欺いて饗応に与り、しばらくはうまくいっているように思っていた。でもその裏にはある意図が働いていて…。彼の末路など気にも止めず快楽を貪る肥え太った米国人の無関心との対比。苦味の効いた結末の味わいもまた如何にもフランス的である。
シルヴァン・ショメは生涯ベスト級だった「イリュージョニスト」といい「ベルヴィル・ランデブー」といい本作といい、私にとっていつでも極上な作品を見せてくれる希有な作家。本作も再鑑賞必至となりそう。けだし傑作!
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