やた

マリー・ミーのやたのネタバレレビュー・内容・結末

マリー・ミー(2022年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

「女性の方が社会的地位が高い男女恋愛もの」を観る第四作。

▼メインキャラクター
女性:35歳を超えた超人気アーティストで離婚歴は3回。
男性:娘を一人で育てるバツイチ数学教師。

超人気アーティストカップルがステージ上で結婚!という始まりがすごく今っぽい。ここでキャットが私生活をエンタメにするタイプのセレブだということがわかる。だけど「2000万人に見守られる結婚式より海辺で二人でしたかった」とこぼすところがあったり、実は繊細な面があるのかも…と思わせる。
一方、チャーリーは男一人で難しい年頃の娘を育てていること、でも仕事ぶりは真面目で生徒に嫌われたりはしてないことがテンポ良く紹介される。
「人間は面白いだけじゃない」と説明するのに犬を例に出すところとか、大事なこと言ってるけどそりゃ子どもに伝わるわけない若干の空気読めなさも伝わってくる。
でも「愛とは犠牲を払って日々を過ごすこと」という言葉が後に効いてくるんだろうなぁと予想できる。

キーツの詩、「ローマの休日」でもキーツだシェリーだのやり取りがあったけど、身分差ロマコメ超名作へのリスペクトなのかな。キャットが派手なことだけを好むセレブじゃなく、教養があることもちょっとしたやり取りで見える。

ライブ中に観客がインスタでゴシップを知るのも今っぽい!ライブ中撮影NGの日本なら成立しづらいアイデアだなぁ。セレブがステージに上がる直前にスマホを見るのも今っぽい。
そして「スターなんだから浮気のひとつやふたつ」という時代じゃないということもわかる。

チャーリーが結婚相手に指名された時の周りの「ウィンドブレイカーの男?」というセリフが良い。ウィンドブレイカーを着ていることだけでキャットに指名された驚きを表すことができて笑ってしまう。
そして皆がインスタで配信してる画面が複数並ぶ演出が面白い!

突然セレブにプロポーズされて、一番混乱してるはずなのにちゃんとケンカの仲裁をしたり「あの男のことが大切だったんだね」と寄り添うチャーリー、ここですごく彼の魅力が伝わってくる。そしてまだガラケーを使ってるのも隙なくキャラが立ってる!

一方、バスティアンに怒るよりも一人で静かに泣き、マネージャーに「失望させた、私が悪い」というところでキャットの繊細な面が見える。
記者会見のシーンでは「結婚はかつて仕事の取引だった、そこに愛はなかった」と歴史の観点から語るチャーリーと、結婚に関わる男女の不平等について語るキャット。
立場はまったく違うけど、この二人が惹かれ合うのは納得できるな〜とこの段階で思わせる構成になっている。

繊細で傷ついているはずなのに、常に変化するために挑戦を続けるキャット。「間違っても正解するまであきらめない、数学と同じ」というセリフが憎い!
キャットが歌っているところに心を打たれる描写が「ボディガード」と似てて、多分意識してそう。
やっぱり互いの仕事をリスペクトし合う関係は見ていて気持ち良い!

スクールダンスでの歌唱シーンが特に素晴らしくて、キャットは失敗を繰り返しても愛を信じる強さを持っているんだなあと伝わってきた。
そして絶対あると思ったダンスシーン!ここから本格的な恋に発展するトリガーとしての身体的接触!
欧米はダンス文化があるからこのトリガーを作りやすいよなぁ。

「私は好き」、曲のことを言ってるのかチャーリーのことを言ってるのかわからないセリフがオシャレ!
朝チュン彼パジャマはやっぱり「ノッティングヒルの恋人」オマージュかな。りんご間接キスもすごくかわいい。
序盤でパーカーがパパラッチを追い払ったのもスパイクのパンイチオマージュだろうな。

「やったことないことにお互い挑戦しよう」の流れもかわい過ぎるし、目隠しプレゼントも素敵。住んでる世界が違っても、相手が一番喜ぶことを自分の持てる力を使ってしてあげたい、と思う気持ちはちゃんと相手に伝わる。

▼クライマックス
バスティアンと「マリー・ミー」を歌ったことで彼と復縁するかもしれない、そうだとしたら耐えられない、と身を引いたチャーリー。本当に愛しているのは彼だと気づいたキャットは、番組収録を抜け出して何も持たずにチャーリーにとって大事なイベントであるマスロンへ向かう。

何もかも周りのスタッフに頼っていた彼女が自分の力だけでチャーリーのもとへたどり着きたいと思う気持ちも素敵だし、結局他の人の力は借りるけど、それはキャットとチャーリーがそれぞれ築いてきた周囲との信頼ゆえという描き方がとても気持ち良い。
そしてちゃんとお金の力もある。きれいごとだけじゃなくてお金は重要。

▼エンディング
マスロンの小さな舞台に立つチャーリーに向かって、出会った時と逆でキャットが「MARRY ME」と書かれたプラカードを掲げてもう一度プロポーズ。それぞれの世界を巻き込みつつ、新しい生活が始まる。

最後、いろんなカップルが出てくる演出も素敵だった!誰もが知るセレブと冴えない数学教師でも、他のカップルと同じように出会いは偶然であり奇跡で、愛し合うことができる。

いや〜ロマコメって最高!と思わせてくれるハッピーな作品だった!
やた

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