ENDOさんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

カード・カウンター(2021年製作の映画)

4.2

序幕で緑色の布にクレジットが出る。この既視感、小津みたいだと廣瀬純氏が言ってた。冒頭からホテルのインテリアを緑がかった白い布で覆い、麻紐で固定し始めるタイミングで病んでることが分かる。というかPTSD>>続きを読む

X エックス(2022年製作の映画)

4.0

ミア・ゴスのクラックに始まりクラックに終わる。何の悪びれもなく、ここぞというタイミングで全力を出せる人生に本気で憧れる。シャワー室で泣いてるチャンベルとは対照的に、欲望を解放して輝いてるオルテガ、普通>>続きを読む

死体を売る男(1945年製作の映画)

4.0

御者として生きるカーロフが路上で歌う少女に馬車で近づくと、歌声は途切れ、馬の蹄鉄が舗装された道を鳴らす。音の映画。袋に包まれた死体は匿名となり解剖されて処理される。『バークとヘア連続殺人事件』のその後>>続きを読む

二秒間(1932年製作の映画)

3.8

男視点での典型的な悪女描写はさすがに古い。純粋な男が夜の女に騙されて破滅って、西部劇とは真逆ですね。遊び人の友人が道徳を語るものの耳を貸さないエドG。ビル建設現場で口論したらトラウマ墜落死。ヴィヴィア>>続きを読む

生まれながらの悪女(1950年製作の映画)

4.0

男女5人物語。トレンディードラマの世界。金持ってるだけで、ひたすらボンクラなザカリー・スコット(こんな役ばっか)を手玉に取るフォンテインさん。でも感情には逆らえない爪の甘さがまたいい。悪女っていうより>>続きを読む

魔の家(1932年製作の映画)

3.8

リマスター版で鑑賞。綺麗なフィルムはまさに時代のフィルターをこそぎ落とし、現代の我々と限りなく接近する。つまり、そのボヤけた人物の輪郭がくっきりすることで、牧歌性が迫り出している。土砂降りで足止めくら>>続きを読む

悪魔はいつもそこに(2020年製作の映画)

4.0

舞台であるオハイオ州ノッケンスティフの由来は、夫が浮気していると妻が牧師に相談した際に「knock 'em stiff(こてんぱんにやっつけろ)」と助言したという説と密造酒に使われる俗語説の2種類ある>>続きを読む

男の敵(1935年製作の映画)

4.0

裏切り者には死を。異常な怪力を持つマクラグレンが自分の女のために仲間を売って、罪悪感から霧立ち込めるダブリンを彷徨い、散財(パブで客全員に奢ったり、ロンドンに帰りたい毛皮を着た見ず知らずの美女に旅費を>>続きを読む

スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース(2023年製作の映画)

4.5

映像だけで多幸感で胸いっぱいなのだが、グエンとマイルスどちらも親との関係に苦しみ、解消するという王道の物語でもある。社会的抑圧の先へ突き抜けるために負う傷の数々。さらにマルチバースによる宙吊りサスペン>>続きを読む

縄張(しま)はもらった(1968年製作の映画)

4.2

茹だるような暑い夏の映画。新興開拓地である田んぼに響くは、ひぐらしの声。ネオン街との対比。濡場も汗だく。旭は暗躍部隊を取り仕切る。魅力的なキャラクターたちの群像劇。それぞれ見せ場もたくさん。そして男女>>続きを読む

ヒドゥン(1987年製作の映画)

4.0

最近の悩みはイメージへの不信である。自分と他者の間に予想外の化学反応を期待できない。そんな辛い時は、異星人に乗っ取られるのも悪くない気がする。『ツインピークス』直前のマクラクランは偽FBI。不器用な食>>続きを読む

パリのスキャンダル(1946年製作の映画)

4.2

ナポレオン時代、ジョージ・サンダースの肩幅に驚愕しつつ、その心変わりは観客にまったく伝わらないという点で、いかにもサーク的な裏切りを内在化したキャラクターに嘆息。相棒であるエミールa.k.a.ドラゴン>>続きを読む

紐育の波止場(1928年製作の映画)

4.0

過酷な労働に晒される火夫バンクロフトが紐育の波止場に降り立つ。娑婆に戻った途端に海に入水する女を助け出す。命を取り留めた女、カンプソンを介抱するのはバクラノヴァ、『フリークス』や『笑ふ男』で鮮烈な印象>>続きを読む

暗黒街(1927年製作の映画)

4.0

サイレント期のスタンバーグ。グッド・バッド・マンであるバンクロフトの哄笑が物語を軽やかに見せつつ、嫉妬による花屋での殺人のあとは狂恋により、すべてを破壊しようとするも、自らが助けた2人の行く末を願い送>>続きを読む

マリとユリ(1977年製作の映画)

4.0

やはりヤバいノヴィッキ、嫌酒療法終わりたてで、ヴラディさんを淫売呼ばわり。男と会話し尽くしても、馬耳東風で絶望する。戯れ合いができない男たちは洒落が通じないのだ。

アダプション/ある母と娘の記録(1975年製作の映画)

4.0

実の家族から契約書にサインを求められ、結婚パーティーの当日に不仲になる。ままならない。

ナイン・マンス(1976年製作の映画)

4.2

モノリさんはずっと会話を求めてるのに、取りつく島がないノヴィツキ。どんなにしんどくても試験をこなすための勉強も欠かさないし、全力で息子と遊んでる。主任ノヴィツキは世間体によってもモノリさんを囲い込もう>>続きを読む

拳銃の町(1944年製作の映画)

3.8

後半展開が忙しいのは原作小説の展開を何とか回収するためだったのかもしれない。確かに洗練されてはいないとしても勝気なエラ・レインズが素晴らしいので、それだけでありがとう。馬でいきなりウェインの進路を防い>>続きを読む

カンザス・シティ(1996年製作の映画)

4.5

90年代のアルトマンは世界への諦観に満ちている。少なくとも『ボウイ&キーチ』ですら妻は生き延びた。コメディと思わせといて、ラストの絶望感に戦慄。

1930年代前半のカンザスシティ。登場人物の中で、破
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シェーン(1953年製作の映画)

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【BARのための覚書no.1】
シェーンは神でもなければ客人でもありませんでした。

シェーンは有刺鉄線が登場する直前の開拓農民の話。物音にやたらと敏感なシェーン。PTSD。

南北戦争後のワイオミン
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インディアン・ランナー(1991年製作の映画)

4.0

スプリングスティーン『Highway Patrol』から影響を受けた物語らしいけど、ストーリーを語るというより届かぬ原始性を追い求め続けるベトナム復員兵ヴィゴの幼児的な感情の爆発をぶつ切りにされ、その>>続きを読む

雨にぬれた舗道(1969年製作の映画)

4.3

嗚呼、只々打ち震える。馬鹿みたいにズームイン、ズームアウト!ピントもボケまくりだが、迫真のカメラ。目隠し位置当てゲームの最中、間接照明でできた影と本体を交互に追いかける目まぐるしいショットに感動して目>>続きを読む

荒野のガンマン/致命的な仲間(1961年製作の映画)

4.0

ブライアン・キースが脳内で二谷英明に!しかも主演って珍しい。ペキンパー長編第1作目でこの題材、渋過ぎる。南北戦争時代の古傷によって銃すらまともに撃てないし、南軍の兵士に頭の皮を剥がれている男。オハラの>>続きを読む

旋風の中に馬を進めろ(1965年製作の映画)

4.0

ヴィラン(悪党)とヴィジランテ(自警団)の存在が揺さぶられ続ける。一方的な排斥(吊るし首)の前になす術なし。スタントンもクロスも無言で始末される。若きニコルソンだけが砂煙に紛れ、何とか画面の外に出て行>>続きを読む

ベティ・サイズモア(2000年製作の映画)

4.0

ウェイトレスの仕事、夫の浮気、生活に倦んでいるけど、無意識に表に出さない、抑圧されたドリス・デイ似のゼルウィガーの脳内で再生される「Que Sera, Sera (Whatever Will Be, >>続きを読む

復讐の荒野(1950年製作の映画)

4.0

ウォルター・ヒューストンの底知れぬお人好しぶりと俗物ぶりが拮抗する。その二面性に引き裂かれる娘スタンウィック。じゃじゃ馬として勝ち気に振る舞うも、自分を抑圧してくれるような人間を心底求める。愛に飢えた>>続きを読む

真昼の決闘(1952年製作の映画)

4.0

演劇的西部劇。孤立に陥って初めて社会的暴力が身に降りかかる。正午になるまでに、仲間を求め街を彷徨う保安官クーパー。ほとんどリアルタイムで進行する感覚。不在である大悪人フランク・ミラーを乗せた汽車が街へ>>続きを読む

逃げた女(2019年製作の映画)

4.2

3人の女性(先輩)を訪ねるミニ。夫と結婚以来初めて距離を置いたものの、どうしても旧友以外に新たな繋がりを持てずに終わる。惰性の人生。共感したくないが頷いてしまう。男は常に蚊帳の外。主人公なのに幽けき存>>続きを読む

パリ13区(2021年製作の映画)

4.2

SEXの敷居がものすごく低いけど、きっとそれが自然なのだろう。男女のルームメイトなら寝てしまう。なるべく寝たいけど、ひとつのコミュニケーション。チャンの好きな人に意地悪する幼稚さは憎めない。サンバはメ>>続きを読む

恋する人魚たち(1990年製作の映画)

4.0

達観してるかと思われたシェールがウィノナへの対応に終始懊悩してるのが泣けます。ウィノナはユダヤ人カルチャーの中で育ったけれど生粋のクリスチャンで、思春期特有の性的妄想が爆発寸前。色々と力み過ぎて生きづ>>続きを読む

屋根裏の女たち(1956年製作の映画)

4.5

入り江に面した漁村(通学バスには須崎行[高知県?]の文字)で細々と饂飩屋を営むシングルマザーの望月優子。奥行きを活かした路地のセットが秀逸。多々良純が酌婦でも置くよう助言すると、ストリップ巡業の女(倉>>続きを読む

マグノリアの花たち/スティール・マグノリア(1989年製作の映画)

4.2

誰よりも包容力があるパートンが経営する美容院に集う人々。ピンクまみれ。憎まれ役のマクレーンと寡婦になったばかりのデュカキスが、アメフトの更衣室で選手の下半身から目を背けたり、マーケットに繰り出して豆の>>続きを読む

抜き射ち二挺拳銃(1952年製作の映画)

4.0

突発的暴力!マクナリー演じる保安官a.k.a. Lightningはナレーションまで担当してるのに悪女に夢中になっちゃう俗物。黒いハットと革ジャンのマーフィは神掛かって強い。終幕の窓ガラス割ってからの>>続きを読む

アルマゲドン・タイム ある日々の肖像(2022年製作の映画)

4.0

他愛もない兄弟喧嘩してるレペタ少年。好々爺のホプキンスでなんとか成り立ってる緊張に満ちた夫婦関係。一刻も早く大人になって欲しい両親。倒れる前に公園で「高潔でいられるか?」と問う祖父と、友人のみが裁かれ>>続きを読む

人生の幻影(1984年製作の映画)

4.2

季刊リュミエール 3『特集 ハリウッド50年代』にこの映画の全訳が掲載されています。『いつも明日がある』においてマクマレイの子供たちが「何てハンサムなカップルなのかしら?」と呟く彼らこそが観客であり幼>>続きを読む

グライド・イン・ブルー(1973年製作の映画)

4.2

Chicagoのプロデューサーであるガルシオが作ったニューシネマは、モニュメントバレーの絶景とは裏腹に、挫折を抱えた人間たちが集う傑作!Chicagoのバンドの面々がヒッピーに扮して出てくるよ。堅物で>>続きを読む