ENDOさんの映画レビュー・感想・評価 - 51ページ目

ブンミおじさんの森(2010年製作の映画)

4.0

映像と音だ。映画の幻想的な喚起を更新するような感覚。
タイのイーサーン、住む死の迫るブンミおじさん、妹、甥だけなく、幽霊の妻とチューバッカ化した息子(猿の精)が駆けつけ、静かに語り合う。その中に、前世
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イン・ディス・ワールド(2002年製作の映画)

3.8

アフガンからロンドンへ。各国にいる密入国請負人にすべての運命が握られているため否が応でも、それに耐えるしかない理不尽さ。そしてこの虚構の物語自体が、主演の少年のイギリス滞在を限定的に認めた事で、彼の人>>続きを読む

(1961年製作の映画)

4.4

愛とは結局勘違いなんじゃないか。その熱にうなされて、視界にかかっていた靄が、或る日突然打ち消される。そんな瞬間を描いた映画だ。

マストロヤンニとモローが2人でいるシーンでは、映像的にどこか居心地が悪
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天使の分け前(2012年製作の映画)

4.0

トレインスポッティングの裏表。
スコットランドの貧しい労働階級者の話。歴史も道徳も教わってこなかった青年が主人公。イギリスの縦割りな社会の問題を浮き彫りにする。
ロビーという主人公は暴力衝動を抑えきれ
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トスカーナの贋作(2010年製作の映画)

3.8

キアロスタミの現実と虚構の境界線が曖昧になっていく様を描く。
1日限りのデートと聞くと、ビフォア三部作を思い出すが決定的に違うのは、ビフォア〜では愛の本質について、直接的に語り合い、それでも矛盾が生じ
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殺人に関する短いフィルム(1987年製作の映画)

3.2

デカローグというロシアのTVドラマを再編集して映画化したものらしい。これはモーセの十戒をモチーフにした話で、『殺人をしてはならない』編だ。

ストーリーはありきたりな復讐譚。
だが、初っ端からどぶに浮
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ユリシーズの瞳(1995年製作の映画)

4.0

国境を越える。
アンゲロプロスはここにきてバルカン半島で繰り返される紛争をペシミスティックに描く。サラエボで始まり、サラエボに終わる。人間はなぜ歴史から学ぶことができないのか。
実在の国境と心の国境は
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こうのとり、たちずさんで(1991年製作の映画)

4.0

監督は語る。

この物語は追放を意味している。難民などの外的なものだけでなく、内面という点で自分自身を異邦人のように感じる。実存主義者と同じように。
心の中にある国境を越える。いくつもの国境を越えて、
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ビッグ・リボウスキ(1998年製作の映画)

4.2

ジェフ・ブリッジスの作品で最も好き。ゆるい。あまりにゆるい。心が広い。

ただし、主人公が混乱するほど、たくさんの人物が出てきて、二転三転。ハワード・ホークスの『三つが数えろ』のようなプロットの複雑さ
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蜂の旅人(1986年製作の映画)

4.0

初老の男が、家族や職を捨て、祖父や父がやっていた養蜂家になる。逃避がそこには含まれる。メランコリー。

そこに自由に生きようとする性的にも奔放な少女があらわれる。しかし彼女も逃避家なのだ。

2人はい
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ムーンライト(2016年製作の映画)

4.5

青色の映画。
月明かりの黒い肌の何と美しいことか。
映画はブルーの車体から始まる。

もっと文学的な静かな作品かと思いきや、感情を刺激しまくりの高純度の恋愛映画だった。そして一人の男の成長の物語。まさ
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霧の中の風景(1988年製作の映画)

4.0

ギリシャ映画。アンゲロプロス。
母子家庭の姉弟が、父に会うために電車に飛び乗って、困難を乗り越えていくロードムービー。2人がとにかく美しい。姉は12歳で、女性として発達する前の一瞬の儚い美しさ。旅を通
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ザ・ロード(2009年製作の映画)

4.0

親父映画。最後の審判が起きてしまった後の世界りヴィゴの親父は息子を神として扱う。

世界は退廃し、食料も育たず、灰色の世界が広がる。暴力が世界に充満し、人を貯蔵して食べるような地獄。その突き放した、乾
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バンコクナイツ(2016年製作の映画)

4.5

映画って本当にいいものですね。日本人がこういう映画を撮れるんだということにまず感動。こういうお水の商売を扱うと、やたら陰気だったり、人生の理由を求め悲観に陥るけど、事実としてつらいことがあっても彼らは>>続きを読む

ドント・ブリーズ(2016年製作の映画)

3.8

いたたまれない。どちらの立場でも痛いぜ。爺さんは事故で病んでしまったのかも。しかし、二階一戸建てで、ここまで緊張感持たせられるんだから、すごい。じいさんが結果的に、アレを飲まされるのは酷い。じいさんに>>続きを読む

地獄の逃避行(1973年製作の映画)

3.8

マーティン・シーンの冷酷な感じが活かされてた。

アメリカの影(1959年製作の映画)

3.5

無軌道な若者たちは、それぞれ傷ついてもそこまで気にならないのは、何だかんだで三兄妹の仲が良いから。

父、帰る(2003年製作の映画)

4.5

これは一種の寓話ではないか。
ほぼ登場人物は父、兄、弟の3人のみ。

冒頭の防波堤。黒々とした海がどこまでも続く水平線。古びれた鉄骨の剥き出しになった木製の塔の垂直線。そして左右対称になった構図も差し
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光あれ(1946年製作の映画)

3.8

PTSDという概念がまだ社会に浸透してない時の映画。第二次世界大戦後の軍の精神病院のドキュメンタリー。この当時としてはかなり斬新。今見ると画一的だけど。それでも、入隊希望者が減るのを恐れ、80年代に入>>続きを読む

キングコング:髑髏島の巨神(2017年製作の映画)

4.5

コングの勇姿に男泣き。こんな頼りになるイケメンは他にいない。男は背中で語る。コングとは言葉は無くとも通ずる人間たち。強いて言えば、敵が没個性で弱いことぐらいか!今回はコングの自己紹介映画なのでまぁいい>>続きを読む

波止場(1954年製作の映画)

3.8

赤狩りにおける自らの立場を『自伝』によって表明してアカデミー栄誉賞で曖昧な表情をして初志貫徹をしたカザンの密告者としての自己肯定感。組合腐敗を暴いた男がリンチに合うというアカデミーへのおもねり。

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イングロリアス・バスターズ(2009年製作の映画)

4.2

2023/11/25
鬱になって久しい。集中力が切れている。作品がまともに鑑賞できない。そんな苦しい中で観た本作で身につまされる。例えば酒場のファスベンダーはイギリスの映画評論家で、感情的になってイン
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くすぐり(2016年製作の映画)

2.5

くすぐりというフェチな趣味。男2人が絡み合ってくすぐり合うのって、何か同性愛を仄めかす。
お金をあげるからと出演すると、ネットに無断で拡散され、親や職場に動画が送られ社会的制裁を喰らう。執拗な嫌がらせ
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アンダーワールド・ストーリー(1950年製作の映画)

4.0

フィルム・グリの一本。社会派ノワールとの前情報。
すっぱ抜いた情報により、検事が殺されたことで司法からも、マスコミ業界からもはぶられてしまう主人公の新聞記者。彼はその新聞で得をしたマフィアのボスに金を
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SCUM/スカム(1979年製作の映画)

3.8

これは青年の心を無惨に切り刻む話だ。メンタル・ケアという概念がなく、傷ついたやり場のなさは、力のあるものには他者への暴力に、力のないものには絶望で自傷行為に走らせる。

看守達は、彼ら自身がその役割に
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シージャック(2012年製作の映画)

4.0

ハリウッド映画ならシージャックされたら、腕利きの交渉人が出てきて即座に海賊を倒して解決だが、これは、4ヶ月にも渡って地道な駆け引きが続くまさに、忍耐力の塊のような映画でした。
戦場ではコックが、会社で
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哭声 コクソン(2016年製作の映画)

4.2

田舎町の風景はどこか懐かしく美しい。主人公は警官なのに、毎回現場に遅刻してくるようなダメなやつ。でも娘思いのいいやつ。娘にSEXの現場見られて、買物に付き合う様とかほっこりする。娘がほんといい笑顔なん>>続きを読む

BIUTIFUL ビューティフル(2010年製作の映画)

4.5

非常に静謐な作品。
この映画はわかっちゃいるけどやめられない貧困の悪循環に陥った男の物語だ。男はすでに進行性の前立腺がんを患っている。彼はブランドの悪辣な模造品を、中国人労働者に斡旋するという(劇中で
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真夜中のゆりかご(2014年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

誰でも、赤ん坊という、弱き者に危害が及ぶというだけで嫌になると思う。

旦那さんは刑事でいかにも正義漢、同僚思いのいい奴でもある。綺麗な奥さんとかわいい子どもに恵まれている(ようにみえる)。
ある犯罪
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偽りなき者(2012年製作の映画)

4.0

不快指数が高すぎてやばい。でも、息子と息子の名付け親(裕福)に支えられて、親友にもわかってもらえてめでたしめでたし。とはならないのが人生だ!そう上手くはいかないよね。
ただし、立場が違ったら自分が加害
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ビフォア・ミッドナイト(2013年製作の映画)

5.0

まさかの展開。ギリシャでのバカンス。今回は2人だけの会話に加え、パートナーを失った老人、若者のカップルたちとの会話を交えてやはり興味深い意見交換をする。まだ、未婚で30手前の自分にはわからない部分もあ>>続きを読む

レクイエム・フォー・ドリーム(2000年製作の映画)

3.0

リズミカルな投薬シーンが繰り返し出てきて、ポップな印象。トランス状態のときの、構図の不安定さが世界観を形成するモラルが存在しない環境で性急な感じでガンガン突き進む話。始まりから、転落してくことがわかる>>続きを読む

父の秘密(2012年製作の映画)

3.6

固定カメラと俯瞰で嫌でも、傍観者としての立場を強いられる。胸糞悪すぎる。リゾート地の透明な空気感と、対比される陰惨ないじめ。
娘の心理はどうなんだろう。故郷の街ヴァヤルタの海に向かって黄昏ている彼女は
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召使(1963年製作の映画)

4.2

ダーク・ボガードが紳士で忠実な召使なのは最初の5分間だけで、いきなり裏の粗野でいやらしい面がどんどん出てくる。インテリアの専横的な選択、主人のフィアンセへのそれとない塩対応に始まり、自分の情婦をメイド>>続きを読む

だれのものでもないチェレ(1976年製作の映画)

4.0

ハンガリー版おしん(おしんは観たことないけど)ときいて子供が難儀な目にあうことはわかっていたけど、ここまで酷いとは。ちょうどアゴタ・クリストフの『悪童日記』読んでいて、共通の世界観を味わうことができた>>続きを読む

ブロードウェイと銃弾(1994年製作の映画)

4.8

完全にやられた。売れない作家が、マフィアの情婦を出演させることでチャンスを掴むサクセス・ストーリーかと思いきや、後半はノワールな展開。情婦の見張り役としてマフィアの掃除屋が、脚本を作る才能に目覚め、誰>>続きを読む