イホウジンさんの映画レビュー・感想・評価 - 10ページ目

イホウジン

イホウジン

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あゝ、荒野 前篇(2017年製作の映画)

4.6

(前編のみの感想)
真正面から人間の「痛み」に向き合った作品。体の痛み、心の痛み、生きる痛み、死の痛み、原作は半世紀近く前らしいが、映画版では2021年(五輪から1年後)という世界を使って、現代日本を
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迫り来る嵐(2017年製作の映画)

3.7

まさに現代版阿Q正伝。
実力主義社会の暗部を描く。
終盤に観客を撹乱させるシーンがあり消化不良だったが、解説を読んでスッキリした。
連続殺人事件の犯人探しというある意味手垢のついたテーマだが、そこに「
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あみこ(2017年製作の映画)

3.8

ひたすらにカオス。
和製「レディ・バード」のような感覚も少しした。
内容は現実的であるにも関わらず主人公は強烈な個性を放ち、観る者の脳裏に否が応でも印象が焼き付けられる。
ラストに主人公の全てが詰まっ
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ヒューマン・フロー 大地漂流(2017年製作の映画)

-

やや長めの記録映画だが、扱う国や難民キャンプが非常に多いためテンポはよく、観やすい。
監督が芸術家ということもあり、難民に関する事実を伝えるジャーナリズム的な映画というよりは、その事実の下に生きる「難
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くるみ割り人形と秘密の王国(2018年製作の映画)

3.3

ディズニーランドに来た気分。
良い意味としては、世界観や演出はディズニーの王道をいっていて、まさに「誰もが主人公」という精神を体現しているように思える。服飾へのこだわりもよい。ストーリーも無難。
ただ
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レディ・バード(2017年製作の映画)

4.0

散文詩のような奇跡的な映画。

本来ならここまで評価されるような構成でも内容でもないはずなのに、観終えた後に妙な余韻が残る。あの独特な空気を演出出来たのは本当にすごい。
起承転結はあまり意識されてない
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タリーと私の秘密の時間(2018年製作の映画)

3.7

観終わった時に「原題のままでよかったじゃん!」と確実に思える映画。
これこそネタバレ厳禁な映画かもしれない。最後の最後まで結末が全く予想できない。

全体的にテンポがよく、それでいて一つ一つのシーンに
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キャロル(2015年製作の映画)

3.7

古くて新しい不倫映画。
ストーリーはとても王道を行ってて予想外の展開みたいなのも殆どないので、安心して観てられる。映像の雰囲気も全体的に古さを感じるが、それでいてレズビアンを扱う映画であるというのが印
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パリの恋人(1957年製作の映画)

2.9

世界観がキレイすぎて、逆に気持ち悪い。

オードリーヘップバーンの魅了は存分に引き出されており、登場人物たちのダンスは見所。ストーリーも至ってシンプルであり楽に観れる映画でありながら、それなりに伏線回
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生きてるだけで、愛。(2018年製作の映画)

4.0

主人公に共感出来るか出来ないかがこの映画の評価を大きく左右してると感じた。
個人的には主人公には共感できる部分もあり、そういう意味ではラストは丁度いい所に収まったかなという印象もある。
これ程までに「
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リップヴァンウィンクルの花嫁(2016年製作の映画)

3.9

いろんな意味で、時間が全てを解決したかなという感覚。

休憩なしの180分という長尺な映画なだけあって、一人の女性の人生の一部分をそっくり切り取ったような映画である。しかも、結果的にあれは黒木華だから
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シェイプ・オブ・ウォーター(2017年製作の映画)

4.2

アカデミー賞を取るべくして取ったなと思える。

まずオープニングから一気に作品の世界に引き込まれる。
全てのシーンが美しい。特に青色の使い方。
「声が出ない女性」と「半魚人」の間の恋愛を中心として、6
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恐怖の報酬 オリジナル完全版(1977年製作の映画)

3.7

最後まで目が離せず、ストーリーにも強いこだわりを感じる。
ワンカットの時間が長くやや回りくどさを感じてしまう所もあるが、特に後半からはそれがより緊張感を高めさせている。
登場人物のキャラクターも絶妙。
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斬、(2018年製作の映画)

4.0

これまで当然のものとされてきた、「刀で人を斬るということ」の根本を問いつつ、乱世の混乱を間接的に描いている。
映画の中には明確な善悪が存在せず観る側としては観にくい構成になっているのかもしれないが、そ
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幸福の黄色いハンカチ(1977年製作の映画)

3.8

東京から北海道に来た若者2人と刑期を終えた元炭鉱夫の(ドタバタ)珍道中、と表現すればいいのだろうか。
良い意味でありがちな内容でとても観やすい。高倉健の男前な魅力も存分に引き出されている。
価値観など
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美人が婚活してみたら(2018年製作の映画)

3.3

題材は嫌いではないのだが、後半からの失速が気になる。

前半は淡々と出来事を追う形で展開され、監督独特のネタも用意されておりとても観やすい。中村倫也と田中圭のダブルキャストは、今となっては奇跡としか言
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勝手にふるえてろ(2017年製作の映画)

3.7

題名も含めて、キラキラ恋愛のアンチとして生きる女性の内面を様々な形で描いている。
物語は完全に主人公のヨシカの目線で進んでいくが、ヨシカが自身のキャラクターを肯定もせず否定もしないということが、この映
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(2018年製作の映画)

3.4

もう少し厚みが欲しかった…
展開自体は筋が通っていて、ラストも悪くはないのだが、充分に言葉として表せない消化不良感が残る。
主人公の心情の表現が単調で、結局広瀬アリスの役の存在意義は?という疑問も残る
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わたしたちの家(2017年製作の映画)

3.5

パラレルワールドを当然のものとして観客に観せる珍しい映画。
2つのストーリーが同時に進む訳だが、時に互いを疑いあい、時に交わりあう様は非常に面白い。
ストーリー自体も悪くはないのだが、終盤まであまりに
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ゾンからのメッセージ(2018年製作の映画)

3.8

雑だけど丁寧。
意味不明なカットがあったり、映画の前提を覆すようなセリフが普通にあるので、決して手放しに評価できる映画ではない。
一方で、「ゾン」の内側で生きる人々の外への憧れや葛藤の描き方は非常によ
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ボヘミアン・ラプソディ(2018年製作の映画)

3.1

ライブ音源を聞きにきたとしか感じられない。つまりは映画としての深みがない。
確かに最後のライブは圧巻。名曲の数々なので映画館で観てほしい映画であるのは確実である。
ただ、私としては別にライブのDVDを
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孤狼の血(2018年製作の映画)

3.9

任侠映画の過去にとらわれない新しい風を吹き込む映画。

暴力団同士の対立という王道なネタを軸に、推理,上層部の汚職,学歴ネタ,強い女性など現代的な様々な要素が含まれている。
そもそも舞台が1988年の
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北京ヴァイオリン(2002年製作の映画)

2.0

映画全体における文脈を感じることができない。正直言って支離滅裂である。
題材は悪くないのだが、途中から「下克上」と「親子の愛」と「恋心」が悪い意味でごちゃ混ぜになってきて、意味不明な展開に進んでいって
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PASSION(2008年製作の映画)

4.1

終盤の2つの長回しがとにかく圧巻。

登場人物の現れ方,深層心理の探られ方が非常に丁寧に作られており、映画の中心となる人物は割と多いにも関わらず、それぞれの感情がはっきりと分かる。
「愛の在り方」をテ
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愛しのアイリーン(2018年製作の映画)

4.2

今年一番の劇薬映画。
まさに狂気の沙汰。
登場人物達は皆常軌を逸していてとても共感できる余地などないはずなのに、何故か引き込まれていってしまう。それだけ、映画の中で出てくる問いが深かったということなの
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レオン(1994年製作の映画)

3.9

話が王道すぎる気がした。少なくとも私はこの映画で泣かなかった。
この映画を高評価たらしめているものは、キャスト陣の好演,怪演のおかげだろう。それぞれのキャラクターに個性があり、それらのぶつかり合いを楽
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⼗年 Ten Years Japan(2018年製作の映画)

3.4

個別の短編に星を付けた平均をこの映画のスコアにします。

「PLAN75」
2.7
扱っているテーマはいいのだが、あまりにも軽すぎる。
気持ちの表現も雑だし、この短編の重要なテーマであるはずの「死」に
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水俣病・その20年(1976年製作の映画)

-

水俣病の症状と患者のみにクローズアップしたドキュメンタリーが多いなかで、これは水俣病の原因と経過について、現実も踏まえながら詳しく述べている。
水俣病がどれだけの不条理の下に発生した病だったのか。チッ
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ヴェノム(2018年製作の映画)

3.8

物足りない。

他のレビュー等にもあるように、ヴェノムは期待以上に愛らしいキャラクターだし、アクション映画としても勧善懲悪の枠に収まっている。中盤のサンフランシスコの地形を存分に活かしたカー(+ドロー
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アンダー・ザ・シルバーレイク(2018年製作の映画)

2.5

A級になろうとしたB級アメリカ映画。
観終わった後に考察記事を読んで腑に落ちたものもあるが、映画の終わり方が消化不良この上ない。
謎解きシーンで日本人にお馴染みのアレが登場したのは微笑ましかったし、主
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若おかみは小学生!(2018年製作の映画)

4.0

子供向け映画だと侮るなかれ。

ストーリーの因果関係がはっきりしていて、そこらの支離滅裂な映画なんかより余程丁寧な仕上がりとなっている。
話の中では一貫して「子供と死」について語られており、大人からす
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21世紀の女の子(2018年製作の映画)

4.0

この短編集は時代とともに価値が増していくのだろうと思う。
テーマが「ジェンダーの揺らぎ」とはいえ、着眼点は監督によって様々で正直言って好き嫌いがあるが、全体として見ればこのテーマに真剣に向き合った監督
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教誨師(2018年製作の映画)

3.3

観て損はないけど、、、という感じ。
大杉漣氏を筆頭とする役者陣の演技力に救われた感は否めない。
死刑囚それぞれの心情に深く入り込む訳でもないし、教誨師のクローズアップの仕方も工夫がない。
途中までは「
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月極オトコトモダチ(2018年製作の映画)

3.7

比較的短い映画ながら、様々な要素があり骨太であった。
「友達」とも「恋人」とも言えないあの絶妙な距離感を表現できたことは評価されるべきであるように感じる。
登場人物の配置も適材適所で、それぞれのキャラ
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海抜(2018年製作の映画)

3.7

伊達に映画祭に出品される学生映画だけある。
内容は全体的に荒削りで所々気になる点はあるものの、テーマに対する答えが映画内で示されたり主人公の思いが丁寧に書かれていたりして、観てる途中は学生映画であると
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ザ・リバー(2018年製作の映画)

3.6

良くも悪くも掴み所がない。
この掴み所のなさが全体として映画を深みのあるものにしている。ロケーションと登場人物の少なさはここ最近の映画の中では随一だが、限られた環境下であれだけのストーリーが展開される
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