むっしゅたいやきさんの映画レビュー・感想・評価 - 6ページ目

むっしゅたいやき

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白い酋長(1951年製作の映画)

4.0

カビリアの存在感。
フェデリコ・フェリーニ。
フェリーニの初単独クレジット作にして、ローマを訪れた新婚夫婦に起こる価値観の相違と修復を描いたコメディである。

久し振りのフェリーニである。
彼特有の白
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鏡の中の女(1975年製作の映画)

3.8

自己内面への眼差し。
イングマール・ベルイマン。
一人の女性の病状変遷の描写を通し、其の心因─根源的な死の恐怖や孤独、憎悪、責務と抑制、過去のトラウマ─と、どう向き合い、折り合いを付けて行くべきなのか
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用心棒(1961年製作の映画)

4.5

桑畑三十郎。
黒澤明。
ユーモアとペーソスの塩梅が丁度良い、傑作娯楽作品である。

本作に関しては、考察を放棄する。
ただ“漢”の血を滾らせて、三船の殺陣を愉しむのが良かろうかと思う。
仲代達矢がめっ
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ミカエル(1924年製作の映画)

4.0

芸術家故の孤独。
カール・Th・ドライヤー。
登場人物達の吐く紫煙が、強調された室内の巨大であるが真っ暗な虚空へ消える様が物悲しい作品である。

本作のレビューに於いて、カメラワークや視線劇に関しては
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まぼろしの市街戦(1967年製作の映画)

3.3

鑑賞記録。

辛辣な評価となり恐縮であるが、個人的に嗜好に合わなかった作品である。

ブラックユーモアや山椒と云ったスパイスは、平凡な中に在って小粒でぴりりと辛いのが佳いのであって、大掛かりになればな
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夏の夜は三たび微笑む(1955年製作の映画)

3.5

白夜のロマンス。
イングマール・ベルイマン。
ベルイマン一流のロマンス・コメディであり、素直に気を張らず楽しめる作品である。

本作は4組の男女のロマンスを描いた作品である。
プロットは練られており、
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あるじ(1925年製作の映画)

4.0

“汝、妻を敬うべし”。
カール・Th・ドライヤー。
何とも直接的なタイトルである。
原作はスヴェン・リンドムに由る同名戯曲。

本作に就いては、語るべき処は少ない。
筋もテーマも至ってシンプルでストレ
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蛇の卵(1977年製作の映画)

3.5

不気味な、併し確実に見える未来。
イングマール・ベルイマン。
ナチス台頭前夜のインフレが進むワイマール共和国を舞台とし、ユダヤ人への迫害や、後のナチスの優生思想へと繋がる社会全体の傾倒を表した作品であ
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倫敦(ロンドン)から来た男(2007年製作の映画)

4.5

長回しの可能性。
ベーラ・タル。
『メグレ警部』シリーズを著したジョルジュ・シムノンの同名小説を底本とし、クラスナホルカイ・ヤースローとタルが脚本を著した作品である。

本作の概要や粗筋と云ったアウト
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グロムダールの花嫁(1926年製作の映画)

3.5

“形式”の必然性に疑問を呈した寓話。
カール・Th・ドライヤー。
ドライヤーがノルウェーに於いて短時間で撮影したメロドラマである。

本作の筋は簡単で、其れのみを追うならば「小作人の息子と地主の娘のラ
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牧師の未亡人(1920年製作の映画)

3.8

“haunt you(取り憑く)”と云う事。
カール・Th・ドライヤー。
ドライヤーの長編第二作。
彼には珍しく、鑑賞者へユーモアを以て箴言を与えてくれる寓話である。

寓話をだらだらと語るのも不粋か
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裁判長(1918年製作の映画)

4.3

裁判官の良心。
カール・Th・ドライヤー。
ドライヤーの長編第一作にして、静かに染み入る様な余韻を残す名編である。

ドライヤーはその撮影スタイルに捉え処の無い、興味深い監督である。
彼のフィルモグラ
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大いなる沈黙へ ーグランド・シャルトルーズ修道院(2005年製作の映画)

4.5

祈りと沈黙、詠唱。
曇天の空を舞う雪片。
フィリップ・グレーニングによるドキュメンタリーである。
三時間弱の尺となるが、我々は鑑賞を通し、彼等と同じ静謐で実り豊かな時間を共有する。

Je suis
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ダムネーション 天罰(1988年製作の映画)

4.3

野良犬のダンス。
ベーラ・タル。
脚本は小説『サタンタンゴ』を著したクラスナホルカイ・ラースロー。
『サタンタンゴ』撮影の時間と予算に折り合いが付かなかったタルが、先に撮影した作品であり、姑息な臆病者
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アウトサイダー(1981年製作の映画)

3.5

ベートーベンの様な“自分自身”になれなかった男。
ベーラ・タル。
写されない雨と映されない棺が、青年の何処か非現実的で夢想的な、空漠とした世界観を表す作品である。

タルは、その作品に物語性を求めては
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家族(1970年製作の映画)

3.8

覚悟のススメ。
山田洋次。
同監督による民子三部作の第一作。
長崎の寒村から北海道の開拓村へ移住する一家族を描いたロードムービーである。

私が個人的に敬愛し、魅力にマイっている爺様(何れも故人)が、
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桃色の店/街角 桃色の店(1940年製作の映画)

4.0

多幸感溢れるクリスマス・イブ。
歯切れの良い男女の掛け合い、テンポ良い展開、そして甘いストーリーと、スクリューボール・コメディのお手本の様な作品である。
エルンスト・ルビッチ。

個人的な事であるが、
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恐るべき子供たち(1950年製作の映画)

4.3

何処へも通じていないホール。
ジャン=ピエール・メルヴィル。
ジャン・コクトーの代表作を底本とし、コクトー自身がナレーションをも担当する。
思春期の姉弟と、彼等を取り巻く男女の愛憎、欲の行く末を描いた
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殺し屋(1956年製作の映画)

3.5

事件前夜。
アンドレイ・タルコフスキー。
タルコフスキーが全ソ国立映画大学三年生の在学時に作成した作品である。
底本はアーネスト・ヘミングウェイの短編、『The Killers』。
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ローラーとバイオリン(1960年製作の映画)

3.8

巨匠は矢張り、巨匠である。
アンドレイ・タルコフスキー。
タルコフスキーの卒業制作作品。

水と光の揺らめき、鏡面撮影、斜めの構図。
影からの切り替えや二人の顔のクロスカッティング。
普通ならば嫌味に
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アレクサンダー大王(1980年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

所有と権力の亡霊。
テオドロス・アンゲロプロス。
先ず始めにことわっておくが、私は本作を古代のアレクサンドロス大王の年代記か何かであると勘違いしていた。
この為、鑑賞にあたって非常に面食らい、レビュー
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旅芸人の記録(1975年製作の映画)

4.5

20世紀、ギリシャ。
戦前の軍事独裁政権から、戦後の内戦、更には再度の軍事クーデターまで混乱を極めた彼の国。
その動乱の時代を生きた、とある旅芸人一家の女性の目を通して綴った叙事詩・叙情詩である。
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アテネ/アクロポリスへの三度の帰還(1982年製作の映画)

3.8

アンゲロプロスのアテネ案内。
テオドロス・アンデロプロス。
TV向けドキュメンタリー作品であるが、彼の叙情的映像や長回しと、ドキュメンタリーとの親和性には目を見張るものがある。

広場に置かれたピアノ
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蜂の旅人(1986年製作の映画)

3.8

巣箱のひと。
テオドロス・アンゲロプロス。
原題は『Ο Μελισσοκομοσ(養蜂家)』。
アンゲロプロスの作品では、しばしば概念上の“家”がテーマとなる。
本作もその文脈の一端を担う作品であり、
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皆さま、ごきげんよう(2015年製作の映画)

3.5

オタール・イオセリアーニ。
原題は『CHANT D'HIVER(冬の歌)』。
-邦題に就いては、もう諦めている。

例によってエピソードの羅列に由る散文的な作品である。
悪友の老人二人組と、彼等を取り
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汽車はふたたび故郷へ(2010年製作の映画)

3.0

己の進む道。
オタール・イオセリアーニ。
原題は『Chantrapas(ならず者)』。
-邦題には少々怒りすら覚える。

イオセリアーニの半自叙伝的作品である。
個人的に自伝的作品や、故人の伝記的作品
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ここに幸あり(2006年製作の映画)

3.3

悠々自適、ノンシャラン。
オタール・イオセリアーニ。
原題は『Jardins en Automne(秋の庭園)』。
-邦題は、どうにかならないのか。

自らの境遇を嘆かず、その中で如何に楽しめるかを模
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月曜日に乾杯!(2002年製作の映画)

4.0

退屈で変わらぬ日常からの逃避行。
オタール・イオセリアーニ。
原題は『Lundi Matin(月曜の朝)』。
-いちいち邦題が煩い。

本作は正味、女性受けは悪かろうかと思う。
何も言わずに数ヶ月もの
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素敵な歌と舟はゆく(1999年製作の映画)

3.8

至福の映像美。
オタール・イオセリアーニ。
原題は『Adieu, plancher des vaches!(さらば、陸地よ!)』。
この辺りからイオセリアーニ作品の邦題は、訳者の恣意的な意図が透けて見
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鋳鉄(1964年製作の映画)

3.3

オタール・イオセリアーニ。
鉄工所での鋳鉄の様子を写したドキュメンタルである。

本作で見せた、工場の送風ファンの前で汗を乾かす労働者の描写は後の作品でも活かされる事となる。

迫力は物凄いものがある
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ジョージアの古い歌(1969年製作の映画)

3.3

オタール・イオセリアーニ。
ジョージアに伝わる古い歌-、単にそれだけでなく、その歌の発生した地域に於ける古くからの暮らし振り、彼等の暮らす土地の景色と云う背景をも映し出した作品である。

映像作品と云
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水彩画(1958年製作の映画)

3.8

己の生活を、客観視すること。
オタール・イオセリアーニ。
イオセリアーニ最初期の劇映画。

僅か9分28秒の作品であるが、メッセージ性が強く、キレの良い箴言の様なショートフィルムである。
ラストシーン
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