nagashingさんの映画レビュー・感想・評価 - 8ページ目

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大いなる幻影(1937年製作の映画)

3.5

愛、ヒューマニズム、ノブレス・オブリージュ。儚く、そして消えゆく幻影への讃歌。一同が視線を送る対象をカメラがとらえるまでの時間差、その「間」がたまらなく甘美。躍動するモノクロームの女装兵士の向こうには>>続きを読む

ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー(2018年製作の映画)

3.0

惑星ひとつにつき参照ジャンルひとつみたいなごった煮が成立するのも、粛々とロードマップをこなす予定調和にしかならないのも、サーガの世界観と年表に包摂されているがゆえ。『ゴッド・ファーザー Part2』的>>続きを読む

さらば、愛の言葉よ(2014年製作の映画)

3.0

斜視には過負荷すぎて目が死んだ。3D映像の詐術をラディカルに推し進めることで立体視そのものを破綻させ、その成立要件を露見させる。悪ふざけというか嫌がらせみたいな3D映画。たんなる視界の拡張か、もしかし>>続きを読む

ストリート・オブ・ファイヤー(1984年製作の映画)

2.5

ダサすぎワロタ。どこまでガチなのかわからんステレオタイプの徹底が突き抜けすぎててヤバい。ロックンロールの寓話を自称するだけのことはある。時空間の匿名性、濡れた路面に幾何学模様を描くネオンの反射、擬似ポ>>続きを読む

赤い暴行(1980年製作の映画)

3.0

トリッキーな編集に面食らうも「ロックンロール・ロマンポルノ」とかいう形容ほどに異形の映画ではなかった。グルーピーに囲まれたライブに始まり、おのおのがセフレに対する煩悶を抱えたままのスタジオセッションで>>続きを読む

処刑の丘(1976年製作の映画)

3.5

わりと愚直にミクロの状況を積み上げていったところから、絶望的な不能感によって逆説的に神性を獲得していく飛躍がすごい。第二次世界大戦中のソ連にゴルゴタの丘を再現する離れ業。というか力技。外連味たっぷりの>>続きを読む

怒りのキューバ(1964年製作の映画)

3.0

常軌を逸してる。スペイン語のオリジナル音声はそのままにロシア語を重ねて吹き込んで日本語字幕も表示する情報量に頭がフットーしそう。キューバの一人称によるナレーションも主語がデカすぎてヤバい。広角で強調さ>>続きを読む

魂のゆくえ(2017年製作の映画)

3.5

シンメトリーとアシンメトリーを効果的に織り交ぜた画面構成に、宗教に対するゆらぎが仮託されている感。その中で地面の傾斜や目覚まし時計の振動が不穏要素として異彩を放ち、酒と溶け合う極彩色や垂れ下がるアマン>>続きを読む

風立ちぬ(2013年製作の映画)

4.0

庵野秀明をして「パンツ脱いでない」と評された『紅の豚』に対し、フルボッキチンコ無修正といった趣で、たしかにその天衝く剛直の禍々しい美しさに圧倒されはするのだが、これに「アニメは子どものためのもの」とか>>続きを読む

四月物語(1998年製作の映画)

3.0

もろもろのあまりの節操のなさに閉口しそうになるが、こうも断固たる美学で画面を支配し、自身の世界観を視覚化されると一周まわって感心してしまう。移住までしてもなお裏切られることがない「幻想としての武蔵野」>>続きを読む

ある闘いの記述(1960年製作の映画)

3.5

イスラエルに潜在/顕在する「徴」をそこここに見いだす、知的でアイロニカルな語り口にまたしても慄く。車のリアガラスのヒビ割れすらシンボリック。固定ショットの厳密なフレーミングに謹厳さが宿っている気がしな>>続きを読む

シベリアからの手紙(1958年製作の映画)

4.0

近代と前近代の風景を交錯させ、工事や重機のスペクタクルと原住民や動物のスローライフを往復し、地下の凍土から宇宙へと飛躍する記録に、アニメや過去のニュース、擬似CMなどさまざまなフッテージを縦横無尽につ>>続きを読む

貴族の巣(1970年製作の映画)

3.5

いかにも文芸映画らしい気だるく甘美な湿っぽさ。光、音、美術、衣装、自然、動物、幼女などを総動員して牧歌的で懐古的なイメージを強固に構築。撮影が『鏡』のゲオルギー・レルベルグということもあるせいか、旧貴>>続きを読む

私はモスクワを歩く(1964年製作の映画)

5.0

最高すぎる青春映画。冒頭のガラスの反射と男女の切り返しからビンビン感じられる傑作の気配が、文字どおり上向きな清々しいラストカットにいたるまでついに裏切られなかった。開放的かつ立体的な空間の広がりに、若>>続きを読む

君たちのことは忘れない(1978年製作の映画)

3.5

母性のディストピアすぎる。第二次世界大戦中のソ連が舞台なのに、完全に現代日本のヒキニートの話なのがヤバい。幼なじみ(元カノ)の結婚を無精髭ボーボーで傍観する陰キャ、みたいなシチュエーション、近年のポッ>>続きを読む

人生は素晴らしい(1980年製作の映画)

2.0

主人公の善性を端的に表現すると同時に、戦闘機のコクピットからタクシーの運転席への過程が省略される「勝手にしやがれ」が気持ちいい。空から陸へ、そしてふたたび陸から空へという回帰的な構成は悪くないが、レジ>>続きを読む

ローラ(1981年製作の映画)

3.5

全編赤みがかっているのはフィルムの退色のせいらしいが、高級娼館の妖しいピンクの人工光が街全土を侵している表現をねらった色彩設計としか思えなかった。夢見心地な印象をあたえるフォーカス・アウト/インのシー>>続きを読む

マルタ(1974年製作の映画)

3.5

不自然に芝居がかった静止をくりかえす役者たちを、ミヒャエル・バルハウスの奔放かつトリッキーなカメラが捉える。この静と動の双方向的な過剰さが煽りたてる爆笑&ドン引き必至のイカれた新婚生活にニッコリ。神経>>続きを読む

海街diary(2015年製作の映画)

3.0

ゆるやかに流動し、四姉妹を包括したり三対一に分断したりする不安定なカメラが、最終的に前者へと落着する=ちゃんと姉妹になる映画としてまずまずの再構成。小津や成瀬に接続する誘導線の配置も巧みだし、四季の風>>続きを読む

牡牛座 レーニンの肖像(2001年製作の映画)

4.0

セラの『ルイ14世』みたいに寝たきりなのかと思ったらわりと元気にドタバタしてて笑った。あちらがいわゆる「王の二つの身体」のグロテスクをあつかっていたのに対して、こちらは身体的欠陥がそのまま権力の不全に>>続きを読む

チェチェンへ アレクサンドラの旅(2007年製作の映画)

3.5

美しい黄金色の風景を成す砂塵の荒涼、最前線の駐屯地を鈍重に徘徊する老婆の身体性、情緒のうちに表面化される民族・あるいは世代的な軋轢……などの異物感をつうじて、戦争への違和を表明することには成功している>>続きを読む

月夜釜合戦(2018年製作の映画)

3.0

画面の質感やら色調やら瞬間的な神代辰巳っぽさやら嫌いになれないけど、諧謔と韜晦がつたなすぎて鼻息の荒さをまったく隠しきれていない政治性がキツい。ネタっぽく引用してるマルクスもわりとガチなんだろうなあ、>>続きを読む

手をつなぐ子ら(1964年製作の映画)

4.0

稲垣浩版の健全さも捨てがたいがこちらも好き。子どもが被写体であるがゆえのローポジション。周囲が更地なので映えまくる。進学での別れがあり、集合住宅や謎の骨組みが乱立し、自然の池でなく人口の貯水池で取っ組>>続きを読む

エストラパード街(1952年製作の映画)

4.0

フレーム内フレームとして機能する窓から、ドラマを駆動しまくるドア、そして階段へと一直線上に配置されたアパルトマンの構造がナイス。パンテオンからパンして学校の広場を子どもが駆け抜けていく眺望のショットも>>続きを読む

ルイジアナ物語(1948年製作の映画)

4.0

揺れる水面と木漏れ日のとんでもない美しさ、映画の詐術が極まった感のあるスリリングなヒトとワニとアライグマの攻防、それらすべておかまいなしに運転する掘削機のダイナミズム! ルイジアナの自然や生態系と調和>>続きを読む

ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん(2015年製作の映画)

3.0

輪郭線を排し、ベタ塗りで、高度な撮影処理もなし。シンプルでフラットな画面。構図や配色のセンスがきわだつ。このテクスチャだからこそ表現可能な、船の揺れや流氷などの自然の猛威の迫力と生々しさは確かにあり。>>続きを読む

THE GUILTY/ギルティ(2018年製作の映画)

2.5

音だけをたよりに主人公=観客の想像力によって見えない状況を組み立てる、という構造がミスリーディングの仕掛けとして利用される。それが中盤の転調へとつながるのだが、であるならば、その後に再構成・再認識され>>続きを読む

グリーンブック(2018年製作の映画)

2.5

兄貴に電話でもするのかと思いきや、白人さまコミュニティにあたたかく迎え入れられてズリ落ちた。ふたりがそれぞれ旅で得たものの価値が釣り合わないよーな。イタリア系アメリカ人はなぜ「パスタが好き」と思われて>>続きを読む

ダニエル・シュミットのKAZUO OHNO(1995年製作の映画)

3.0

最高にロマンティックな晴海埠頭の夜景をバックに、水をちゃっぷんちゃっぷん官能的に揺らしながら踊る女装したジジイによって、いっさいの審美性を超越した地平へと運ばれていく。グロいのかエモいのかよくわからな>>続きを読む

書かれた顔(1995年製作の映画)

4.0

次々に画面に現れては芸を披露するThe LegendたちがThe Legendすぎて圧巻。怪獣大合戦的な様相を呈している。そのパフォーマンスはもちろん、インタビュー中の坂東玉三郎の手つきや杉村春子の扇>>続きを読む

王国(あるいはその家について)(2018年製作の映画)

3.5

本読み→リハーサル→本番の三段跳躍が、絵が書き上がっていくのを眺めているような具象化の快楽。濃密なコミュニケーション空間を持続させるための暴力性が、通信がコード化された「椅子とシーツの王国」と、厳密な>>続きを読む

ゴッズ・オウン・カントリー(2017年製作の映画)

3.5

荒涼かつ雄大な景観や揺らぐ焚き火による官能の解放、精液をくるんだコンドームとチーズを濾す布巾の相似、全身麻痺だが高圧的という捻れた父権との和解。同性愛を丁寧に扱う手つきが、今日日困難な正統的な成長譚を>>続きを読む

サスペリア(2018年製作の映画)

3.5

けっこう好き。百合百合しいアトモスフィアからのアルティメットスージー爆誕がサードインパクトで優しい忘却(?)。タラのどこまで本気かわからないぶっとんだ歴史へのアプローチにくらべると生マジメすぎるという>>続きを読む

ダーティハリー(1971年製作の映画)

4.0

イーストウッドの強烈なキャラ造形がかすむほど「街」の描写が豊か。飛ぶ、覗く、走ることによって、あらゆる角度から都市景観を切りとり、建物や生活空間に分け入る。市警察が活動する土地に根ざした映画。正義や公>>続きを読む

ダークシティ(1998年製作の映画)

2.5

アレやコレなど参照作品の名前がすぐに思い浮かぶぶん、もうすこしテーマやビジュアルに独自の味つけがほしかったところ。CGの質もいま観るとちょっとあやしいレベルで、ほぼ全編夜なのを利用してなんとかごまかし>>続きを読む

サスペリア(1977年製作の映画)

4.0

かなりテキトーな筋立てとガバガバな設定によるナンセンス感、ジェシカ・ハーパーのロリータフェイスや一部美術に見られる少女趣味、空間を分かつカラフルな色彩の迷宮的イメージなどがあいまって、ホラーというかキ>>続きを読む