nagashingさんの映画レビュー・感想・評価 - 11ページ目

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映画(780)
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競馬場(1985年製作の映画)

3.0

馬の出産、交尾、手術のシーンの即物的な破壊力にノックアウト。生後1ヶ月の仔馬の目の前でママ馬へのタネづけを粛々とこなし、牡馬の凶悪チンコに事務的なおそうじ手コキ。心底しびれる。イースターのお説教で快楽>>続きを読む

ストア(1983年製作の映画)

3.0

いろんな意味で隔世の感。もしかしたら、ボードリヤールの文化記号論的な文脈での皮肉が込められているのかもしれないが、華やかりしころの百貨店の光景にノスタルジックな感動を覚えてしまう。ただモノを買うという>>続きを読む

M(1951年製作の映画)

4.0

ラングと四つに組んでの大健闘。この話に「ハーメルンの笛吹き男」を採り入れる発想は天才的。殺人犯の存在感や光陰のコントラストが生む強烈さはかなり減退しているが、その淡白な小粒感がいろいろとナイーブさを露>>続きを読む

モデル(1980年製作の映画)

3.0

エージェンシーの社長に「モデルは浅薄でバカだと思われているがそれはまちがいだ」と語らせておきながら、その説得力に欠ける様態ばかりを収めている。面接する者、メイクする者、撮影する者たちの存在によって、や>>続きを読む

軍事演習(1979年製作の映画)

3.0

金と手間と反ソの威信がかかった盛大なサバゲー。めっちゃ楽しそうだが、部隊の展開や戦闘の状況がぜんぜん説明されないのでなにをやってるのかまったくわからない。というか、本人たちもいまいちよくわかってなさそ>>続きを読む

エクソシスト/ディレクターズ・カット版(2000年製作の映画)

3.5

アツい。"The power of Christ compels you!" のリピート。これはマネしたくなる。オッサンふたりが仰々しい呪文でハモってるの笑わせにかかってるとしか思えないし、聖水をふり>>続きを読む

チャイナタウン(1974年製作の映画)

4.0

シャロン・テートがあんなことにならなければ、こうも寄る辺ない映画にはならなかったはず。そういう意味では、『インヒアレント・ヴァイス』以上にチャールズ・マンソンの暗い影に覆われた映画。40年代と60年代>>続きを読む

サマーフィーリング(2016年製作の映画)

3.5

三都市の異質な風景の描き分けが鮮やか。そこで人と人とがゆるやかに、しかし確かにつながっているという実感を得られる。感情のおだやかな変化を、こういう風景の中の人々の営為に託してみせるのはやはり抜群にうま>>続きを読む

Lights(原題)(1966年製作の映画)

3.0

『ウォールデン』の元ネタらしい。というか丸パクリで笑う。配色と編集はメカスよりずっと周到。なぜこの撮り方を「日記」に採り入れようと思ったのかが謎。深夜に照明を落として観るとなかなか楽しめる。クレジット>>続きを読む

ウォールデン(1969年製作の映画)

4.0

ほぼ全編早まわしによってブレまくるカメラと超絶カッティング。地下鉄の轟音に、めまぐるしい倍速と等速のジェットコースター的緩急。「陶酔的」なんてなまやさしいチャチなもんじゃあ断じてねえ。最高にサイケデリ>>続きを読む

リトアニアへの旅の追憶(1972年製作の映画)

4.0

人間のおぼろげな記憶をそのまま再現したかのような映画。あるいは長く引き伸ばされた走馬灯。不確かでふぞろいなイメージのつぎはぎ。発表から半世紀近くたっていることがより郷愁をかきたてる。過去をたどる道程そ>>続きを読む

阿波の踊子/剣雲鳴門しぶき(1941年製作の映画)

2.5

妹キャラのデコちゃんが激萌え。長谷川一夫の満を辞しての登場にはアガりまくるが、クサすぎる大根芝居(私見)が役柄のナイーブさを露骨に強調して下降線の一途。話の展開も異常にわかりにくく、なぜこの脚本でイケ>>続きを読む

ブラ! ブラ! ブラ! 胸いっぱいの愛を/ブラ物語(2018年製作の映画)

3.5

キャストもロケーションも反則。ミキ・マノイロヴィッチとドニ・ラヴァンが同居する画面のクロスオーバー感もヤバいし、出番の少なさと役の重要性の落差を容易に埋めるチュルパンの元ヒロイン的説得力もズルい。朗ら>>続きを読む

リズと青い鳥(2018年製作の映画)

5.0

永遠に見ていられそう。というか一瞬たりとも目が離せない。赤、青、黄などの色彩が暗示的に配置され、局部へのフェティッシュが炸裂した細やかなしぐさに、官能的な音のつらなりが精緻に繊細に同調。比喩でなく森羅>>続きを読む

2001年宇宙の旅(1968年製作の映画)

4.5

スター・ゲートに突入した瞬間、最前列真正面に陣取ったことにガッツポーズ。ボーマンといっしょに進化して生まれ変われそうな没入感と陶酔感。撮影技術が古び、テーマや未来観が時代錯誤なものとなっても、なお色あ>>続きを読む

ヒズ・マスターズ・ヴォイス(2018年製作の映画)

2.0

レム『天の声』が原案ということで期待してたんだが、これは……。OPとEDはおもしろい。アスキーアートなんて久しぶりに見た。多様な映像素材をつなげた構成は現代的だ。客観性が担保されているエスタブリッシン>>続きを読む

さらば冬のかもめ(1973年製作の映画)

3.5

男臭くて大好き。ホモソーシャルの楽しさも、ジャック・ニコルソンが底に秘めた怒りも、現実のシビアさに屈して絶対に覆らないニューシネマの翳り。ホテルでのダラダラ宅飲み感とか、真冬の公園での詩情とか、寄り添>>続きを読む

逃げる天使(1994年製作の映画)

4.5

頑固オヤジとチャラい若造の海兵ふたりがいわくありげな美人女囚を護送。なにも起こらないはずがない。のっけからこれ見よがしに星条旗を入れ込みまくり、ロードサイドの風景をバックにゴキゲンなカントリー・ナンバ>>続きを読む

アマンダと僕(2018年製作の映画)

3.5

劇中の悲劇が現実に起こりうる「街」の景色をありのままに切りとる誠実さと清々しさ。散歩や自転車、そして遠景にいる相手と(おもに窓越しに)やりとりするシーンの多さに、ランドスケープを構成する一要素として人>>続きを読む

ザ・リバー(2018年製作の映画)

3.5

全貌をなかなか露わにせず、強権的な父さえも抗うことができない急流の「川」。その魔物感を説得力をもって表現しつつ、家父長制と消費社会の静かな権力闘争をシンボリックに描く。自然の魔性を利用して後者を駆逐し>>続きを読む

それぞれの道のり(2018年製作の映画)

2.5

自国の歴史に対する三者三様のアプローチの差異が際立つオムニバス。ディアスは宗教と迷信、メンドーサはジャーナリズム、タヒミックは家族と伝統文化。モノクロームの色の階調があまりにも豊かなディアスの中編が圧>>続きを読む

冬時間のパリ(2018年製作の映画)

3.5

愛と不貞、文学と大衆小説、紙の本と電子書籍、出版文化とネットメディア、文芸批評とターゲティング広告、政治への希望と冷笑、秩序(漸進主義)と混沌(急進主義)、ミヒャエル・ハネケとスター・ウォーズ、古典演>>続きを読む

グランドショウ1946年(1946年製作の映画)

2.0

戦後半年たらずとは思えぬ鮮やかすぎる変わり身の早さ。敗戦直後に再現できるはずもない西洋の垢抜けた雰囲気を必死で模倣しようとしていることが逆に田舎くさい。メインキャスト陣が踊れないせいで、ドラマパートと>>続きを読む

真紅の文字(1926年製作の映画)

3.5

文芸映画の例にもれず、原作の冗長的な奥深さを排し、表層的なメロドラマとして語るに注力。それがみごと功を奏している。表情の芝居が凄みのある心理的葛藤劇をガリガリと駆動。とりわけ、不義密通の相手の名前を明>>続きを読む

ぶどう月(1918年製作の映画)

3.5

タイトルバックが子どもの天使感もあいまってとんでもなく美しい。連続活劇において1話17分だったり72分だったりした大胆すぎる構成センスは健在。一番ヤバそうな悪役があっけなく退場し、あきらかに長すぎる挿>>続きを読む

のらくら兵(1928年製作の映画)

3.5

1928年製作とは思えないカメラの躍動感、アングルとポジションの多彩さ、構図の奥行き。『ゲームの規則』など以降の作品の片鱗をのぞかせつつも、サイレント映画らしい動的な楽しさとプリミティブな美しさに満ち>>続きを読む

顔たち、ところどころ(2017年製作の映画)

3.5

軽やかでしなやかでゆるやか。土地の記憶とそこに生きる個人の物語を可視化し、共有させていく素敵なドキュメント。人々の生き生きとした表情は、かつて映画巡業が地方にもたらしたであろう活況を思い起こさせもする>>続きを読む

アンダー・ザ・シルバーレイク(2018年製作の映画)

2.5

挫折したワナビーが現実の不条理に独自の文脈で意味づけして癒しを得ようとする誇大妄想的冒険譚。自分でデザインしたRPGを記憶を消してプレイしているようなマッチポンプ感にゲンナリ。「人捜し」が意識の深淵や>>続きを読む

クワイエット・プレイス(2018年製作の映画)

3.0

両親が医師とエンジニアで、長女が聴覚障害だから全員手話マスターしている家族、本当に「適者生存」って感じ。たしかにツッコミどころ&ご都合主義が散見されるが、「音出しNG」というあまりにも映画館向きの設定>>続きを読む

悪魔のいけにえ(1974年製作の映画)

3.5

撮影と編集が完璧。ローポジの構図がキマりまくり、寄りのショットと引きのショットが生む絶妙な緩急に翻弄される。異形のレザーフェイスと即物的なバイオレンス描写が田舎の風景の中にフツーになじんでいるのがかな>>続きを読む

真昼の決闘(1952年製作の映画)

4.0

とんでもない悪漢と恐れられる男がやってくるまでの80分間をリアルタイム進行で描く。いざ蓋を開けてみたらそこまで強くなかった肩すかし感はいなめないが、映画の肝はこいつが到着するまでの人間模様にあり。「ミ>>続きを読む

チャイナ・ゲイト(1957年製作の映画)

3.0

人種差別を扱っておきながら、東洋系の役にアンジー・ディキンソンやリー・ヴァン・クリーフを配してしまうことにモヤモヤ。見張りを引きつけている隙に行軍、という繰り返しもちょっと単調。ナット・キング・コール>>続きを読む

若おかみは小学生!(2018年製作の映画)

3.0

シンプルなキャラデザゆえの表情の豊かさ。児童向けの絵だからこそ、死やトラウマが顕現する恐ろしさも引き立つ。食べものもすごくおいしそう。油や湯気の描写、塗りわけの細かさなどの作画的な表現力はジブリにおよ>>続きを読む

運命は踊る(2017年製作の映画)

2.5

劇中の流れとほとんど無関係に提示されるフォックストロットなるダンスによって全体の構造が支えられているのもつらいし、こいつのゴリ押しによって露骨にテーマを強調されるのもつらい。音のびっくり演出で鑑賞者に>>続きを読む

たまこラブストーリー(2014年製作の映画)

4.0

TVシリーズ未見。過去の記録と記憶が掘り起こされることによって、ずっと大切だったもの、大好きだったものを再発見する。その過程を、糸電話、バトン、りんごなどのさまざまな小道具を巧みに積み重ねながら描き出>>続きを読む

ペンギン・ハイウェイ(2018年製作の映画)

2.0

固有名がほとんど出てこないのに視覚的な抽象度は低い。抽象度を上げて(人名以外の)固有名は強調した湯浅政明とは対照的なアプローチ。「土地の魔力抜きでどこまでやれるのか」という原作者の意欲に寄りそった結果>>続きを読む