髙橋佑弥さんの映画レビュー・感想・評価 - 7ページ目

髙橋佑弥

髙橋佑弥

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リッスン・アップ・フィリップ(原題)(2014年製作の映画)

5.0

ピンチョン『重力の虹』の果敢な”非公式映画化”で産声をあげた映画作家ロス・ペリーの第三作…にして、フィリップ・ロスの最良の(またも”非公式”だが)映画化。若き新進短編作家と、憧れの老巨匠、元教え子の若>>続きを読む

彼女のいた日々(2017年製作の映画)

4.0

『Queen of Earth』に続いて年代ベスト級の傑作。だが方向性は真逆。パラノイアや虚をつく展開は抑えられ、極めて素朴にコミュニケーションの断絶が描かれる。誰もが最も大事にすべき相手との関係を疎>>続きを読む

The color wheel(原題)(2011年製作の映画)

4.0

夢見がちな姉と陰気な弟、車での小旅行。参加した学生時代の友人のパーティで笑い者にされるのが辛い。始終姉弟は口論しているが、結局分かり合ってるのも姉弟だけ。最後の一夜にぼろぼろ泣く。気の抜けたユーモアと>>続きを読む

町でいちばんの美女/ありきたりな狂気の物語(1981年製作の映画)

5.0

兎にも角にもギャザラの凄まじさに尽きるが、それと張るくらい素晴らしい"場所"の映画。室内も、街も、浜辺もすべて良い。物書き搾取の箱部屋…ですら良い。窓から見える数多の鴎…泣く。この映画を的確に語る言葉>>続きを読む

Dillinger è morto(原題)(1969年製作の映画)

4.0

上映時邦題『デリンジャーは死んだ』
殆ど喋らぬ男、帰宅後の眠れぬ長い夜(+α)。料理し、テレビ見、本をめくり、銃を洗い、解体し、組み立て直し、色を塗り、妻を愛撫し、寝息に聞き入り、女中に手を出し、スイ
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ブラッド・ワーク(2002年製作の映画)

4.0

再見。徹底的に省略される移動…例外はたった二度。車と船で一度ずつ、傍らには二回とも"バディ"。夜の船着場の絶品撮影。人物造形全員奇人、唐突ドーナツ、唐突ロマンスetc…奇天烈展開の素晴らしさ。"パラノ>>続きを読む

Around the World When You Were My Age(英題)(2018年製作の映画)

3.0

IFF2019上映時邦題『30歳のとき、世界を廻った』。日本を飛び出して世界を廻り、いまはポルトガルに住む男=父について、監督=娘が撮る。父の過去の旅写真、父の過去の日記、父の朗読、娘の撮影による現在>>続きを読む

SELF AND OTHERS(2000年製作の映画)

5.0

死者が残した記録=記憶が語る...「どのようにこの声は聞こえていますか」。「何度も見ることでじわじわと味わいが出てくる写真」を何度も見せること。映写された"情報"でしかないはずの画面が、次第に実感を伴>>続きを読む

落穂拾い(2000年製作の映画)

4.0

『グラヌーズ 拾うことの精神史』とでも別題を付けたくなる傑作。文化史研究×フィールドワーク×パーソナルな語り。"拾うこと"の探求に始まった撮影が、次第に被写体個人への興味に移っていく…という院卒の路上>>続きを読む

天使の復讐(1981年製作の映画)

4.5

念願叶って、やっと見た。
一日に二度強姦された聾唖女性の復讐は、次第に45口径無差別男性銃殺深夜徘徊へと変貌する。二度の予期せぬ唐突な凶行で物語は幕を開け、唐突な振向き発泡、唐突な標的選定etc…"唐
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秘密指令(恐怖時代)/秘密指令 The Black Book(1949年製作の映画)

4.0

仏革命×ノワール…という異色混合作だが、本質は"潜入捜査"モノ。独裁者ロベスピエールお手製の処刑予定者閻魔帳を捜索する話。街の捜査から、森の逃走劇まで…撮監はジョン・オルトンで、ひたすらに"夜の映画">>続きを読む

善良なる悪人(1916年製作の映画)

4.5

ドワン初期長編。たった50分の中で、義賊青年の恋、そして二代に渡る因縁の宿敵への復讐が描かれる傑作。俯瞰構図ロングショットの多用と、殺害場面の見事さに打ちのめされること請け合い。本当に素晴らしい。>>続きを読む

ブロークン・フラワーズ(2005年製作の映画)

3.0

自らを無力化する"探偵映画"。尺の大半を費やして描かれる捜査の成果物="手がかり"が、躊躇なく無に還るのが清々しい。

2020/08/01

コッポラの胡蝶の夢(2007年製作の映画)

4.5

話運びの出鱈目さが素晴らしい。特定の原作があるのだから、その筋書きから逸脱はしていないのだろうが、映画だけを見ていると幾つもの毛色の違う短編を無理矢理に連結させたかのように話が進む…当然ですよという顔>>続きを読む

ミカエル(1924年製作の映画)

4.0

怒涛の切り返し映画。
執拗な速度/回数の高速切り返しで示される、超絶美青年ミカエルによる"ゴゴゴゴ…"と擬音が鳴りそうなほどの女性凝視にビビる一方で、病床に伏した老画家が、自らを孤独の果てに追いやった
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高い標的(1951年製作の映画)

4.0

上映時間78分…全編寝台列車を舞台に、バッジ無き刑事("非"優秀?)が大統領暗殺計画犯を探す。果てしなく縦に伸びる"移動密室"としての列車…列車内の機構を幾重にも活用したステルス捜査/アクション。特に>>続きを読む

サイン(2002年製作の映画)

3.5

再見。
一面の畑と"サイン"…というそもそもの主題/舞台設定や、人物の動線、頻出するパン演出に顕著なように、全編基本的に水平方向へ展開していく映画──家は地下含め三階建てなのに──でありながら、その実
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奇跡にあずかった男(1987年製作の映画)

2.5

身体障害偽装×宗教揶揄…な不謹慎旅コメディ。特集で見た中では、"奇天烈キャラ"への依存度が一番大きい。出来は比較的ユルめ。尺は短いが、全編全員喧しいので割と見応えだけはある…でも正直話は大して面白くな>>続きを読む

ワイルド・アット・ハート(1990年製作の映画)

4.5

再見。紛うことなき"lovers on the run"の傑作。リンチの実力/評価ともに絶頂期のピーク作といっていい。思いつきや出鱈目を躊躇なく取り入れるフィーリング主義が、ギフォード原作への脚色で却>>続きを読む

JUNUN(2015年製作の映画)

4.0

「この映画はシャイ・ベン・ツールとジョニー・グリーンウッドによるコラボレーション作品「ジュヌン」の録音風景を映像化したものです」の字幕で始まる、PTAによる2015年製作/54分の音楽ドキュメンタリー>>続きを読む

もののけ姫(1997年製作の映画)

2.5

劇場にて…恥ずかしながら初見。
物語は割とストレートに『…ナウシカ』再生産。そして出来は大きく劣る。一見"壮大"だが、すべてが閉じていて窮屈。息ぐるしい。

2020/07/13

風の谷のナウシカ(1984年製作の映画)

5.0

劇場でかかっているというので、十年以上ぶりくらいに再見。あまりに感動して、帰宅後に借りてきたDVDでコメンタリー付きでもう一度改めて見た。超傑作。宮崎駿はコレと『風立ちぬ』が断トツ二強。

2020/
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風立ちぬ(2013年製作の映画)

5.0

再見。宮崎駿は、コレと『風の谷のナウシカ』の二本に尽きる...文句なしに傑作。

2020/07/24

エレファント・マン(1980年製作の映画)

2.0

4K再映にて久々に。
元々リンチ(基本的には大好き)の中ではノレない一本だったが、印象変わらず…むしろ再見で確信強まる結果に。画面暗い(眼精疲労)し、長すぎる…。一番の見どころはやはり、煙モクモク産業
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野良犬(1973年製作の映画)

4.5

元祖黒澤版より約20分短いリメイク。暗くて早くて、初っ端からとにかく異様…ひたすらに贅肉ナシな再創造…犯人造形を複数人に変更し、全編を執拗な"追跡劇"のみで成り立たせてしまう。群衆街中での二回の銃撃の>>続きを読む

リバー・オブ・グラス(1994年製作の映画)

5.0

すごすぎる。偽りなき"lovers on the run"の系譜の最前線。ライヒャルト(『old joy』)とロウリー(『a ghost story』)はオールダムを介して繋がりがあるわけだが、そもそ>>続きを読む

かも(1965年製作の映画)

3.5

『ダニ』(併映だった)と同じく梅宮辰夫が満身創痍で地べた這いずるラストでも成沢昌茂脚本の本作は遙かに鮮烈…緑魔子が寮を飛び出し彷徨いの果ての噴水、そしてその後の地獄…

2020/02/25

ダニ(1965年製作の映画)

2.5

杉浦直樹の寝室浮気言い訳長台詞こそ最高なれどズームイン&アウトが煩い。

2020/02/25

山の焚火(1985年製作の映画)

4.0

最重要主要人物たる息子が聾設定であるが故の"音"映画。豊かな環境音のみならず、聴覚情報把握差演出がすごい。厳しい傾斜地形で撮られたと俄かに信じられぬ素晴らしい滑らかな移動撮影、特徴的空間設計を存分に活>>続きを読む

ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ(2018年製作の映画)

1.5

駄目だと思う。近年の『インヒアレント・ヴァイス』『アンダー・ザ・シルバーレイク』などに連なる"未練感傷ノワール"の系譜だが、随一の空疎さ。オブセッション凝縮長回し夢場面…意図された弛緩にしても言い訳に>>続きを読む

ミッドサマー(2019年製作の映画)

1.0

上映時間147分、生理的嫌悪感を催させるほど下手糞なクロスフェード演出を絶え間なく見せられ続ける拷問。耳の悪さしか汲み取れぬ音使い、ノイズでしかない撮影の挙動不審(時に「巧みなカメラワーク」と呼ばれた>>続きを読む

メッセンジャー・ボーイ(1986年製作の映画)

3.0

青春モノとしては超面白かったが、出来自体は期待ほどではなく。主人公の上司が穴あけパンチを手に「これは人も殺せる…力いっぱい殴られてみろ…ババシュカ!(実演擬音)」がピーク。鍵盤蓋を父親が閉めた際、風に>>続きを読む

タッカー(1988年製作の映画)

3.5

あまりに"ジョブズ"な誇大妄想的天才の映画。待ち望む観衆の足踏みのなか、御披露目直前火事場問題修正…はソーキン『ジョブズ』もモロ想起したり。様々な広告描写…"実物"以上に"イメージ"を売る仕事であると>>続きを読む

勇者の赤いバッヂ(1950年製作の映画)

4.5

ひたすらに…進軍は右/退却は左へ。無名兵士たちの面構えを捉えたショットの数々は『光あれ』を想起。フレーム内の複数人物が、各々正面を向いたまま、順繰りに自分の発言をボソボソと吐き出すという、誰もが相手で>>続きを読む

眠るパリ(1923年製作の映画)

3.5

ある怪光線で時間が止まった街を、影響を逃れた6人が彷徨う…時間SF映画の最古作(?)。困惑→満喫→退屈→内乱…異常環境に対する人間の反応変遷描写の的確さは現代作品と比べても遜色なし。男5:女1の比率が>>続きを読む