アラシサン弐さんの映画レビュー・感想・評価 - 18ページ目

オアシス(2002年製作の映画)

4.5

自分の中のモラルだとか、可哀想と思う気持ちであったりを、一度横に置いてから観ないと振り落とされそうになるくらい揺さぶられる作品。

不謹慎で絶対に許されないことであっても、これは純愛だと思う。

この
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パンチドランク・ラブ(2002年製作の映画)

4.0

本当にアダムサンドラーはなんて面白い顔をしてるんだろう。
この人は無言でワチャワチャ失敗させても笑かしてくれるけど、喚いているときの爆発力も凄い。

こんないるだけで面白い男を、あの手この手を使ってマ
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ゴースト・ドッグ(1999年製作の映画)

3.8

武士道と殺し屋とヒップホップという設定渋滞でカオスな組み合わせ。

これは、古い価値観で現代を生きることも満更ではないというメッセージの他に、アフリカンアメリカンは主人に従事するものっていう絶滅寸前の
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わたしはロランス(2012年製作の映画)

3.9

主人公がゲイである作品だけど、当人の「ゲイであることが周囲に理解されない悲しみや怒り」よりも、その周囲の人間たちの苦悩や当惑にフォーカスしているのが斬新だった。

感情を爆発させたり振り回されたりする
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マグノリア(1999年製作の映画)

3.8

群像劇らしく散らかった要素が繋がっていくカタルシスを味わう作品かと思ってたら、緻密で技巧派な脚本を根こそぎ洗い流す、良い意味で台無しにする画力の展開。
このクライマックスを予想できる人がこの世にいる?
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ロスト・イン・トランスレーション(2003年製作の映画)

4.5

海外の人から見えた変な街トーキョーの姿を楽しむ作品。

その視点はどこか偏っていて表面的ではあるけれど、見慣れている我々からすると、それが返って新鮮で微笑ましさすら感じる。

確かにニューヨークなら自
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ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ(2001年製作の映画)

4.0

まず、曲が絶妙。

なんか、デヴィッドボウイとかの影響でレコード出して数曲ヒットしてその後に一発屋になってしまったグラムロックバンドとかにありそうな、ロックファンの懐に妙に届く音楽と演奏で好きだった。
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ペパーミント・キャンディー(1999年製作の映画)

4.0

鑑賞後の言い様のない虚無感。
最初と最後の表情は真逆のものが感じ取れるのに、男がどんな人生をその後に送るかを知っているからかキツい。

「戻りたい」頃を思い出す為に、どうしてその頃に戻れないかも一緒に
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デッドマン(1995年製作の映画)

3.5

よく噛んで食べるタイプの映画だ。
冒頭の異様にカット数の多い汽車のシーンのマイペースさでそう確信した。

一応、西部劇という枠組みの中で進んでいくけど、原住民と一緒に殺し屋から逃げるっていう変な話に、
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ブギーナイツ(1997年製作の映画)

3.9

PTA監督の作品初鑑賞
男優VS監督の構図になっていくのかと思ってたら、キャラクターそれぞれの個々にストーリーにも焦点が当てられて、色んな角度から楽しめた。

成り上がり男の栄光と挫折と再起モノは、最
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レザボア・ドッグス(1992年製作の映画)

4.3

冒頭、みんなで飯食いながら猥談してるシーンからオープニングに向かう流れに向かう有り余るセンスで一気に引き込まれてしまった。

長編1作目なのに確立され過ぎてる。
暴力とユーモアが同居したパンチのあるカ
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プライベート・ライアン(1998年製作の映画)

4.0

語り継がれ過ぎて何となくまだ観てなかった。
調べたら家族が戦死したとき他の兄弟を生かせて帰還させるって実際に制度があったんだね。

命に重さに変わりは無いから死んだ者の為にも生き残った者は人生を無駄に
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L.A.コンフィデンシャル(1997年製作の映画)

3.8

この年のアカデミー賞は「タイタニック」が無双してたらしいけど、こちらもジャンルは違えどもっと評価されても良い隠れた名作だった。

腕っぷしのいい脳筋と出世虫のエリート、の組み合わせは面白くなるに決まっ
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母という名の女(2017年製作の映画)

4.0

母親という存在が持ってる「厄介さ」の面を、ここまで悪意すら感じるまでの狂気で観せられたのは初めてかもしれない。

この作品には子を持つ親が多く登場するけれど、どの母親も父親も正しい人物がいない。

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わたしは、ダニエル・ブレイク(2016年製作の映画)

4.0

隣人と手を取り合うことは人間として実は当たり前のことなのに、効率化されて淡々と歯車を回させる現代社会では、そうした生き方は黙殺されて虐げられることへのやるせなさを感じる。

人を生かす為の制度がデジタ
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ザ・ライダー(2017年製作の映画)

3.8

競争馬は怪我したら安楽死させられるけど人間はそうはいかない。

大怪我を負ったってそれを抱えて生きていかなきゃいけないし、その後に進む道も自分で選択していくしかない。
ブレディやレインとアポロの対比が
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燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)

4.2

画面から二人に不必要なものが削ぎ落とされて清潔感に満ちてる。ずっと綺麗。

同性愛を描く映画には当人達が色々言ってくる社会と対峙するような作品が多い中で、そもそも社会から隔絶された場所での恋愛が描かれ
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英雄の証明(2021年製作の映画)

4.0

現代社会における「英雄」の定義って何だろうかと考えてしまうな。

ネットでバズった良い話で有名人になった人が何かしらの不祥事で炎上して吊るし上げられる。
こういうある種「使い捨ての英雄」にされる人が現
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TITANE/チタン(2021年製作の映画)

4.7

化け物。

冒頭10分くらいで既に喰らいつくのに必死になるのに、その後もあまりに突拍子もない出来事が次々に起こる上に、一度見たら瞼から離れないような強烈な映像が連打されるから、飽きないどころか脳ミソの
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ナイトメア・アリー(2021年製作の映画)

3.8

デルトロ監督と見世物小屋の相性が良すぎる。
電気出す女性とかホルマリン漬け胎児とか考えてるのめちゃくちゃ楽しんでやってそうだ。

堕ちていく系のノワールとしては割と王道で物珍しさは薄いのだけど、相変わ
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その手に触れるまで(2019年製作の映画)

3.5

イスラム教にとっての「手を触れること」は他文化とは特異な意味を持つからこその邦題。

純粋さ故に「これが絶対に正解」って一つの答えに傾倒した少年が、どうやってそこから逸脱するかの回答を一つ提示するよう
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ある過去の行方(2013年製作の映画)

3.8

この監督がただの離婚劇で終わらせてくれる訳がなかった。

監督の他作品と比べると不穏さで煽ってくるサスペンス要素は薄めに感じたけど、相変わらず人間関係の厄介な部分をこれでもかと投入してきて、何が正義な
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トム・アット・ザ・ファーム(2013年製作の映画)

3.8

冒頭の青ペンで書かれてる文章が、トムの気持ちにもフランシスの気持ちにも解釈できるようになってるのね。

ドン引きするような暴力が巻き起こった後に、抱擁的な男性らしさで優しくする典型的なDV現場の胸糞悪
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キカ(1993年製作の映画)

3.5

こんな馬鹿みたいな話で変態的な世界観なのに中盤くらいから引き込まれてる自分がいて悔しい。

何かぎりぎりアヴァンギャルドって言い包められそうな映像を、力技で「お洒落な悲喜劇」に危うくさせられそうになる
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ダウン・バイ・ロー(1986年製作の映画)

4.0

物騒な設定なのに愛くるしい人間たちがワチャワチャしてて楽しそう。
やっぱり会話劇にロベルト・ベニーニが投入されるだけで小気味良さが段違い。

全2作と比べると一応ストーリーも道筋立っててゆるいながらも
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ベルファスト(2021年製作の映画)

4.3

不穏と平穏が同居してるタイプの好きなやつ。

これある意味コロナ禍の状況と通ずるものがあるというか、滅茶苦茶ヤバい事態が身近で起きて自分たちも巻き込まれてしまう可能性が出てきても、それでも対策しながら
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幸福なラザロ(2018年製作の映画)

3.7

社会派なのにファンタジー要素ありで不思議な雰囲気。

どれだけ純朴で怒りも欲もない聖人みたいな人間だとしても、欲を使うことに無知では現代社会、ましてや不況真っ只中のイタリア経済の中では、生きていくこと
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ニトラム/NITRAM(2021年製作の映画)

4.2

暴力を芽生えさせるまでを描いているのに絶対に暴力を肯定しないという気概を感じる。

挫折や喪失が凶行に向かわせる構図はジョーカーやタクシードライバーと同じだけど、この映画は主人公の心理状態が不明瞭な上
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女は二度決断する(2017年製作の映画)

4.0

なんとなく「悪い奴を懲らしめる」こと=「正義」だと信じ切ってる価値基準にメスを入れられる。
これは17年の作品だけど、正義を不用意に振り回す人が台頭する今でこそ刺さると思う。

1~3章で法廷モノ→ス
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トーク・トゥ・ハー(2002年製作の映画)

3.8

難しいなあ。
「愛情の深さ」はあるところを超えると倫理の壁がぶち破られると思うのだけど、
同じ立場の二人があまりにも対象的な結末を迎える要因は、モラルや変態性ではなくて単純に愛情の深さだったのかな。
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セールスマン(2016年製作の映画)

4.0

「別離」が好きだったので。

この監督の映画で迷いなく正しさの判別をつけるのは難しすぎる。
ほんっとうに人間の嫌な感情への着眼点が鋭い。

「別離」でもそうだったように、観てる側が絶対に正義だと信じ切
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マイ・マザー(2009年製作の映画)

3.9

いがみ合いや憎しみ合いでしか対話が出来なくても、根底に愛情があるから結局は断ち切ることが出来ない親子関係のジレンマを19歳で映画に出来る監督がなによりも大人びてるよ‥。

主人公と対して変わらない年齢
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パーマネント・バケーション(1980年製作の映画)

3.8

内容があるようでないようでやっぱりあるのか‥?笑

ゆるいようで意外と真意を突いてくる。
「漂流してれば孤独を感じなくて済む」って、自己を確立しきれずにフラフラしてる若者達の核心を吐いたような言葉だと
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RAW〜少女のめざめ〜(2016年製作の映画)

4.5

ちょっと涙出そうになるくらい感動した。

人肉への目覚めが少女から大人になることへのメタファーになってるのが秀逸すぎる。

大学生あるあるだと思うけど、大人だか子供だかの境界が曖昧で、周囲に流されてパ
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ピアノ・レッスン(1993年製作の映画)

3.7

浜辺にドレスとピアノ、の綺麗さだけに留まらない、人間の塞ぎ込んでいる内にある綺麗さが開放されていく様子を見せられてるよう。

この監督、説明が限定的で登場人物の心理を初見で全て理解しようとすると集中力
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ブルーベルベット(1986年製作の映画)

3.8

好奇心で入り込んでいった未知の世界で酷い目に合う、って展開だけなら汎用なのにデヴィットリンチはその「未知」が不穏極まりない。

草原で耳拾うって導入から変態性全開だけど、それを容易に乗り越えてくるデニ
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