アラシサン弐さんの映画レビュー・感想・評価 - 17ページ目

わたしは光をにぎっている(2019年製作の映画)

4.0

社会の流れから取り残されかけてる人達の健気さがあまりにも輝いてる。

この作品のなにが健気かって、ジェントリフィケーションに真っ向から抗う訳でも、居場所がなくなることに対して絶望してしまう訳でもなく、
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かそけきサンカヨウ(2021年製作の映画)

3.5

静か。

原作は未読で前情報も特に無く鑑賞したのだけど、親の再婚に翻弄される娘の心情を描いた話かと思って観てると、途中から同級生の恋愛模様になって、かといって三角関係のような展開になるかと思いきやそう
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アデル、ブルーは熱い色(2013年製作の映画)

3.9

同性愛を扱った作品であるけど、描かれていることは出会いから交際、倦怠期、破局、そしてその後の人生という、どこのカップルにもある恋愛のイニシエーションであって、実はド直球の恋愛映画なのではと思う。

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シリアスマン(2009年製作の映画)

3.5

ユダヤコミュニティの文化についてよく知らないまま観たので、この作品の真の面白さみたいなところには到達できなかった感じがある。

散らかり過ぎな感じもあるけど、大小色んな不条理がアラカルトで巡ってきてテ
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SOMEWHERE(2010年製作の映画)

3.8

エル・ファニングのこの「妖精味」は何なのだろう。
行動自体はそこらにいる11歳の少女相応であるのに、何というか良い意味で人間っぽくない。
ウィースポーツ懐かしい。

成功者であるにも関わらずなんとなく
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VIDEOPHOBIA(2019年製作の映画)

3.8

デジタル性被害がテーマではあるけど、どこか浮世離れした世界観で、良い意味で現実味が無い。

モノクロで映された大阪のアンダーグラウンドも、日本だというのに架空の街の景色でも眺めているかのように違った顔
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夜を走る(2021年製作の映画)

4.3

こっっわ。
何を書いてもネタバレになりそうだけど、
「持たざること」へのストレスに少しでも身に覚えがある人は確実に閲覧注意なのは間違いない。

社会から虐げられてる人の堕とし方が変化球で、展開も監督半
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由宇子の天秤(2020年製作の映画)

4.7

この映画は、「正義」というものが今この世で最もややこしくて純粋な悪意を持った存在であることを再認識させてくるし、それが正論だけで放たれたとき、いかに人を凶暴にさせたり間違いを犯させたりするかを教えてく>>続きを読む

殺人の追憶(2003年製作の映画)

4.0

ポン・ジュノ監督が描く暴力には爽快さは皆無で、むしろ暴力が持つ何もかもを台無しにしてしまう爆発力を緊張感の中で惜しげもなく行使してくるので、喪失感すら感じる。

「暴力を徐々に失っていく」方と、
「暴
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Love Letter(1995年製作の映画)

3.9

言ってしまえば中山美穂が一人で文通してるだけの話ではあるけれど、片方の抱えてる喪失が、もう片方へ喪失の原因となった男へのラブレターによって伝達される様は、なんとも形容しがたいむず痒さを感じる。

一方
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地獄の黙示録 ファイナル・カット(2019年製作の映画)

3.5

大量の人と軍事力を投入して途中から目的が分からなくなってしまったベトナム戦争と、
大量の人と制作費を投入して途中から何を作ってるのか分からなくなってしまったこの映画が重なることの皮肉さよ。

戦場その
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スケアクロウ(1973年製作の映画)

4.0

男二人が他愛無い話を駄弁りながら旅する姿からどうしようもない哀愁を感じる。

意気揚々と夢を語ってるけど微妙にズレてる姿から、いかに世間から隔絶された価値観で生きてる人なのかが分かる。
結末も中々に残
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狼たちの午後(1975年製作の映画)

3.8

追い詰められた社会的弱者が、犯罪に走って時の人になる流れは今も昔も変わらないんだな。
群衆を煽るシーンのエネルギーは後のジョーカーに通ずると思った。

この時代にゲイのベトナム戦争帰還兵だなんてもろに
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シン・ウルトラマン(2022年製作の映画)

4.8

庵野の贈り物。

冒頭30秒程で、物心ついた時から現在まで自分が培ってきた特撮への浪漫が物凄い熱量で頭から爪先まで巡り、終わる頃にはヲタク人生そのものを肯定して貰えたような、そんな感動を覚えた作品。
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秋刀魚の味(1962年製作の映画)

4.0

自分の価値基準や倫理観が散らかってきたときに小津映画を観ると、元の立ち位置に返ってこれる感覚がある。

娘を嫁がせようかとモジモジする父の姿をゆるりと2時間近く見守る、だけなのに実家のような安心感があ
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肉弾(1968年製作の映画)

4.0

良い意味で戦争を「おちょくってる」反戦映画だと思った。

不謹慎のボーダーを踏み越えてブラックユーモアを履き違えたような感じではなくて、ちゃんと戦争というモチーフに根ざしたシュールがあって、悲哀とユル
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神々の深き欲望(1968年製作の映画)

3.9

ミッドサマーより先に観るべきだったな。。
原始的な風景の中に社会の縮図と人間の深淵を感じる。

まず、映像の「地獄感」が凄まじい。
至るところで動物がウヨウヨ蠢いて、もれなくギラついた人間達が汗と土と
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ヴァージン・スーサイズ(1999年製作の映画)

3.9

理解されないことを嘆くのが青春映画の定石だと思うのだけど、この作品は意図的に大人側を突き放してくるような感覚を覚えた。
「理解する気がないでしょ?」みたいな感じに。

個人的に新鮮だったのは、十代の葛
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グリーンマイル(1999年製作の映画)

4.3

“苦労するトムハンクス”の作品は高確率でヒューマニズムに満ち溢れていて、鑑賞時の体調によってはまんまと泣かされてしまう。

ド直球のおとぎ話だけど、死生観について考えさせられる要素が内包されていて、単
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オール・アバウト・マイ・マザー(1999年製作の映画)

3.8

この映画初見で100%楽しめる人は相当なセンスだと思う。
息子を亡くした母親の喪失と再生の話かと思いきや、監督特有のクセが凄い登場人物達がそう簡単に事を進ませてくれなかった。

彼女達は、病気、薬物中
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彼女が消えた浜辺(2009年製作の映画)

4.3

切羽詰まってる人間に嘘や責任転嫁は危険。

凧を上げる女性と徐々に大きくなる波の音が不穏極まりない。

彼女がどこに消えたかよりも、彼女が消えたことが原因で徐々に崩壊していく人間関係に焦点が当てられて
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ゼア・ウィル・ビー・ブラッド(2007年製作の映画)

3.8

人のミルクシェーキを啜って生きてきた男は、家族の繋がりだけは啜れなかったか。

彼の過去の生い立ちが途中まで明確にされないまま進むから、行動原理が読めず、どんな人物なのか記号化されないのだけど、彼が孤
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スラムドッグ$ミリオネア(2008年製作の映画)

3.9

スラム特有の「生の臭い」を纏った空気感に、監督の強烈でいちいちアイコニックな画作りと音楽が合わさって、スタイリッシュにならない訳がなかった。
この人トイレに飛び込ませるの好きだな。

主人公が真面目に
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パリ13区(2021年製作の映画)

4.2

ヌーヴェルヴァーグ感が全開だけど、決して作家性で殴ってくる訳でなくて、ロマンチックなラブコメの要素もあって突き放されなかった。

セックスまでのアクセスが簡単になった現代において、それでも上手いことい
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アネット(2021年製作の映画)

3.7

一見でどんな映画なのか判別できないポスターと、冒頭のクレイジーな演出で、どうやら他の音楽映画と勝手が違うと一瞬で刷り込まれる。

ミュージカル映画の、人が急に歌ったり踊ったりする浮世離れした要素にある
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家族を想うとき(2019年製作の映画)

4.2

現実の社会問題下で生きる「持たざるもの」への虐げ方に一切の容赦を感じない。
是枝監督が師匠と仰ぐ理由が何となく分かる。

運良く人並みの生活が送れている人達には全く刺さらないのだろうけど、一度でも登場
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ギミー・デンジャー(2016年製作の映画)

4.0

彼らが今日「パンクの始祖」なんて呼ばれていることは、何も音楽性の面からだけではないことを掘り下げてくれる。

アートや音楽ビジネスだったり、トレーラーハウスをディスってきた同級生へ中指を立てる思想と姿
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サマーフィーリング(2016年製作の映画)

3.7

喪失と再生を描く物語は多々あるけど、無理に涙を誘ったりエモくさせることはしてこない作品。

誰かが亡くなった後、確かに残された人達は悲しみを抱えて生きていく訳だけど、その悲しみは常に付き纏って鬱屈した
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さよなら、私のロンリー(2020年製作の映画)

4.0

シュールで掴みどころが無い空気なのに家族観でグリグリと抉ってくる。
素直に感動していいのかこれ。笑

血の繋がらない娘と仲良くする両親を見て、家族への憧れを持った主人公が純粋な愛に目覚めていく、みたい
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誰もがそれを知っている(2018年製作の映画)

4.2

相変わらず事件の真相そのものよりも、事件によって生じた人間関係の歪みに切れ味がある。

表層上ではうまくやってる関係の中を浮き彫りにするのに、閉鎖的なコミュニティでの噂や暗黙の周知なんかが如何に威力を
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たかが世界の終わり(2016年製作の映画)

3.5

もうすぐ死ぬよって伝えたいだけなのに、家族がギスギスし過ぎてなかなか切り出せない男をワンシチュエーションで延々と見せられる。

ドラン監督は母親の存在を「ダサさの象徴」みたいに悪意全開で描くのに、核心
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17歳の瞳に映る世界(2020年製作の映画)

4.5

「少女が従姉妹と中絶手術を受けに行く」だけの映像なのに引き込み方が尋常ではない。

バイト先から金を盗んで親に内緒で中絶が出来る洲に向かう、ってプロットから色んな事件を巻き起こせそうなのに、あくまでも
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カモン カモン(2021年製作の映画)

4.0

別世代の二人が一緒に生活をしていく中で共に成長していく、だけならよくある話だけど、マイクミルズ監督が描くと包容力が段違いだ。

そんな大好きなミルズ監督の作品に俺達のホアキンフェニックスが投入されると
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存在のない子供たち(2018年製作の映画)

4.2

比べるような事ではないけど、虐げられてる立場を描いた作品の中では、他とは内包している惨さが段違いだった。

演技というか、もうそこに「生きている」かのようなリアリティがあって、どの場面も現実の残酷さを
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I Am Easy To Find(原題)(2019年製作の映画)

4.2

人間の誕生から終わりまでを、同じ女性がCGも特殊メイクも無しで演じる姿はどこか奇妙でいるけど、そこからは誰しもが体験しうる、普遍的で不思議なノスタルジーを感じる。

両親も恋人も親友も息子も姿は変わっ
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インヒアレント・ヴァイス(2014年製作の映画)

3.5

ずっと不穏。
トレインスポッティングとは別ベクトルの退廃的お洒落センスを楽しむ類の作品だった。

ただでさえカオスな70年のアメリカの中で、犯罪や腐敗やドラッグや変態が入り乱れ、常時キマってるヒッピー
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