stさんの映画レビュー・感想・評価 - 4ページ目

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愛のコリーダ 修復版(1976年製作の映画)

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阿部定事件の結末を知っているだけに、反復を繰り返す性描写の中に変な期待感が醸成されていく。その思いとは裏腹に、次第に藤竜也と松田暎子に対する親近感をも抱くようになる。ギャスパーノエの『LOVE』とはテ>>続きを読む

リンダ リンダ リンダ(2005年製作の映画)

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山下敦弘監督の「間」、好きだなあ。あとぺ・ドゥナのハマり役。逆にストーリーそのものはいかにもゼロ年代青春/学園/部活モノ(『ハ●ヒ』『けい●ん』…)という感じではあった。香椎由宇の大人びてる印象、『ラ>>続きを読む

ボーダー 二つの世界(2018年製作の映画)

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いかにもなビジュアルインパクト(野性的な美しさ)と、いかにもな社会派的メッセージ性(マジョリティとマイノリティ)。自然の中における共生という北欧っぽさもありつつ、マイノリティが社会の中でいかにして生き>>続きを読む

ぼくのエリ 200歳の少女(2008年製作の映画)

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ヴァンパイア物とボーイミーツガール物を掛け合わせているのだけど、部屋(=<内>)にこもりがちな虐められっ子が、家を飛び出すことで文字通り<外>へと旅立つ成長譚にもなっている。白(「雪」やカーレ・へーデ>>続きを読む

mellow(2020年製作の映画)

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今泉力哉がモテキ撮ったらこんな感じになるのかな。独特の空気感というか、すごく生活感のある世界を撮っているはずなのに「ラーメン屋」「花屋」「美容院」みたいな本来ありふれたものがある種記号化されて意味を持>>続きを読む

春江水暖~しゅんこうすいだん(2019年製作の映画)

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悠久不変の富春江と、有限なる生を必死に営む人々。冒頭のパーティーのシーンなど、本当にその場に立ち会っているかのような臨場感。長回しで泳ぐシーンも勇気を感じたし、ビーガンの凱里ブルースっぽさもある。グー>>続きを読む

ベルリン・天使の詩(1987年製作の映画)

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モノクロとカラーを行き来するパートカラーの金字塔?なのかな。天使の方に乗っかって街を見下ろすブルーノガンツの姿が、旧劇エヴァで石像の上で海を眺める渚カヲルに重なる。。

許された子どもたち(2019年製作の映画)

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世のイジメの構造的な再帰性(復讐動機、毒親による心情支配、扇動的ポピュリズム、etc…)を軽やかに描く。実に軽やかに。序盤の撮影編集スタイル面白いなあ。最近はGoPro使った面白い映像表現がどんどん出>>続きを読む

VIDEOPHOBIA(2019年製作の映画)

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表層を上塗りしていく社会そのものを映したような批判性が、反復されるレンズと視線と記憶と記録のモチーフ群によってじわりと顕れる。窓から覗く「外側」の景色(大阪環状線の車両窓、違法民泊宿の窓、観覧車の窓、>>続きを読む

ノマドランド(2020年製作の映画)

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舞台になっている世界はベトナム戦争によるPTSDを訴えるおじさんやヒッピースタイルのバックパッカー兄ちゃん等のいる、60〜70年代を思わせるアメリカ西部。そうした懐古的な世界が水平に広がりながらも、リ>>続きを読む

嘆きのピエタ(2012年製作の映画)

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この映画においては「知らない」ことが1つのキーとなる。血も涙も”知らず”、母親を”知らず”、「贖罪」が果たされることを”知らない”。そうした無自覚と無警戒さがこの作品にゆらぎを与える。根本の主題は(「>>続きを読む

his(2020年製作の映画)

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全体的にドラマ臭い演出が終始ちょっと鼻息荒い感じがしてなんだかなあという印象、、、わざとらしい裁判劇とかカフカの『審判』を執拗に入れてきたりとかラストの持っていき方とか。逆に、6歳児がポストに向かって>>続きを読む

WAVES/ウェイブス(2019年製作の映画)

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アラバマ・シェイクスの『Sound & Color』がエンディングに用いられているように、「音」と「色」による表現がめちゃくちゃ光る。フランクオーシャンやケンドリックラマーなどの選曲センスもさることな>>続きを読む

国葬(2019年製作の映画)

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あれだけの人数が集まっているのに誰一人規律を乱さない(し、殆どが真顔で直立してる)のがすごい。当然私たちはフルシチョフによるスターリン批判という史実を知っているのだけれど、それを踏まえて本作を観てみる>>続きを読む

ボーイ・ミーツ・ガール(1983年製作の映画)

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ドニ・ラヴァンの純粋さとミレーユ・ペリエの儚げな目が醸し出す(今で言う病み属性的な)独特なオーラ。清濁併呑のセーヌ川(本作では元彼の画材や詩、その原因たる友人を飲み込み、『ポンヌフの恋人』では愛し合う>>続きを読む

LOVE【3D】(2015年製作の映画)

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赤いダンスフロア、赤いベッド、赤いバスルーム。情熱的なまでの狂愛と狂宴。物語の多くの部分がベッドの上で語られる。シンメトリーな洞窟のような空間(自室の廊下、部屋の入り口、階段、細い通路、トンネル、アー>>続きを読む

街の上で(2019年製作の映画)

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今泉作品的な「人」の情動のみならず、下北沢という「街」の場所性へも言及する。"トリウッド"や"本多劇場"・"THREE"といった固有名詞から、カフェから眺める建設現場・古書店内に横から鋭く差し込む光・>>続きを読む

サッドティー(2013年製作の映画)

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お得意の群像劇モノで、シュールさの立つ作風とトリプルファイヤーのインディーロックがいい感じに合わさる。要所で注がれる「冷たいお茶」(=サッドティー?)・ワイン・牛乳、そしてコーヒーと、飲み物が物語を繋>>続きを読む

愛がなんだ(2018年製作の映画)

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「街の上で」先行上映オールナイトにて。今泉力哉作品を色々経験したのちに、公開当初ぶりに鑑賞したけど色んな部分で違った見え方がした気がする。
「愛とは何か」という主題に見せかけて、「(愛でもなく恋でもな
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花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)

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こういういかにもな商業恋愛映画を久々に観た気がする。大学生から社会人という転換期の中で移ろう価値観と恋愛観。そこにはゼロ年代の携帯小説的な悲劇の共有によるロマンチシズムではなく、ハッシュタグ的な嗜好性>>続きを読む

その男、凶暴につき(1989年製作の映画)

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蓮實重彦の「映画は所詮荒唐無稽」の言葉のように方々が荒唐無稽に散りゆくラスト。この頃の警察権力のジメッとした生温かい感じ。日本映画の刑事はやっぱりこういうのが良い。

ソナチネ(1993年製作の映画)

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相米慎二オマージュかと思うようなクレーン車の吊り上げや機関銃。沖縄シーンの夢心地感(フリスピー、紙相撲、花火、ロシアンルーレット…)。白いシャツと黒く焼けた肌。耳に残る久石譲のミニマルな劇伴。気狂いピ>>続きを読む

パワーズ・オブ・テン(1968年製作の映画)

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実写版別冊ニュートン感。イームズって工業デザインのイメージ強かったけど映像作家でもあったのか… 最後ふわっと量子論につながっていくあたり60年代っぽいなと思った。

子宝騒動(1935年製作の映画)

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30年代の清貧さと、その貧しさを補う余りのスラップスティックコメディ。最後のシーン、画が寺山っぽくて好き。

魔術師(1958年製作の映画)

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「科学/非科学」や「医学/奇術」といった対立を通じて論われるは真実と魔術の存在について。
「人は死の闇に向かって一歩ずつ向かうだけ。やがて訪れる死だけが真実だ」
黒沢清『CURE』に出てくるメスマーは
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シン・エヴァンゲリオン劇場版(2020年製作の映画)

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とんでもない大作。ついに庵野秀明の私小説が完結した感。「エヴァンゲリオン」(≠「ヱヴァンゲリヲン」)という積み上げられた歴史が深掘られる。それは旧作の引用という形でもあり、かつて師事した宮崎駿や富野由>>続きを読む

犬神家の一族(1976年製作の映画)

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脚本がよくできていて何度もリメイクされてるのがうなずける。丁寧な撮影編集が印象に残った(冒頭の紙の書類の撮り方、小津っぽい正面カットと遠景、テンポ感ある切り返しのカット、等々)。
有名な湖のシーンは意
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パプリカ(2006年製作の映画)

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インセプションの4年前に作られた夢共有モノ。極彩色な世界観に平沢進サウンドがすごくマッチしていた。筒井康隆の想像力すごい。

HOUSE ハウス(1977年製作の映画)

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おそらく当時としてはかなりアバンギャルドな脚本と編集。ファンタジックなホラー展開の持つ楳図かずお感。池上季実子って昔こんな綺麗だったんだ…

パンとバスと2度目のハツコイ(2017年製作の映画)

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群像劇要素が取っ払われた今泉作品。どことなくふわふわとした進行の中にしっかりとしたイズムが乗っかる(美術を諦めた自分(を否定しない自分)、孤独が好きな自分、好きであり続けることに不安な自分、など)。静>>続きを読む

鏡の中にある如く(1961年製作の映画)

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殻に閉じ籠る人たち(街へ出ない、船の内部に残る、家族より作家としての名声を優先する、など)と広く澄み渡る海との対比。

家の中から海を眺むショットが繰り返され、「狭い部屋」から「広い世界」へと意識が向
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CURE キュア(1997年製作の映画)

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終始低音が鳴り続けていて、黒沢清という術師によって催眠術にかけられている感じ。役所広司が刑事やると何故かいつも最後解決感ある風に終わるな…とか思ってた矢先のラストの終わり方からのエンディングがかっこい>>続きを読む

すばらしき世界(2021年製作の映画)

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「『すばらしき』世界」とは、決して"万人にとっての理想郷"を指しているわけではないことは言うまでもなく、タイトルからしてアイロニカルさを物語っている。無論、「この世はなんと『すばらしき』世界だ」という>>続きを読む

香港画(2020年製作の映画)

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今もなお続く世界の一部分を映し出す。シンプルに映像としての強度がとてつもない、、平和ボケしてる全ての人に観てもらいたい作品。こんな時もあったねと言える日がいつ来るのだろうか。

家族ゲーム(1983年製作の映画)

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これでもかと工場の遠景が差し込まれ、高度経済成長と家族解体・団地化の流れをイメージさせられる。乾いた隣人関係の象徴として出てくる戸川純の存在感。サブとして思春期あるあるの詰め込み。
それぞれが自分の部
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セーラー服と機関銃(1981年製作の映画)

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薬師丸ひろ子の2回のブリッジが印象的すぎる。倒立=倒錯(平凡な学生⇆ヤクザ組長)ということか?
制服少女が倒立ならぬ直立して行く「直立譚」。終盤はまさかのサイコ展開… 人間しゃぶしゃぶのインパクトすご
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