トノモトショウさんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

プレデター2(1990年製作の映画)

2.0

プレデターのバックグラウンドが徐々に明確になって、SFパニック映画然とした形へと切り替わったことで、前作よりも物語性は増した。だがマッチョなシュワちゃんではなく、無鉄砲なオジサン刑事一人で倒せる程度の>>続きを読む

プレデター(1987年製作の映画)

2.0

中盤あたりまでシュワちゃん映画っぽいゲリラ戦が繰り広げられるが、どこからか現れる異星人とのバトルに切り替わる突拍子もなさ。結局、目的も正体もよくわからない敵と孤軍奮闘の末、いつものタフネスでやっつけち>>続きを読む

カラオケ行こ!(2024年製作の映画)

3.0

本来交わらないヤクザと中学生という関係がカラオケを通じた友情へと繋がる上で、主人公二人がなんとも可愛らしい。ライトな物語ではあるが、身近な楽曲や個性豊かな演者らによって、程良いコメディとなっている。ラ>>続きを読む

オペラハット(1936年製作の映画)

3.0

善良で正直であることが変人と捉えられる背景には、ほとんどの人間が自己の損得だけを見据えていて、そこにやましさを抱えているからなのかもしれない。法廷で暴力を振るっても不問にされるという時代性はあるが、逆>>続きを読む

旅芸人の記録(1975年製作の映画)

3.0

ホームを持たない旅芸人は、戦争・占領・内乱によって祖国の形が不安定なギリシャそのものを象徴する。物語としてみると退屈ではあるが、全編を歌や音楽で彩りながら、そこに日常感を出すことで、よりリアルさをもっ>>続きを読む

かがみの孤城(2022年製作の映画)

3.0

様々な理由で学校に行くことができない少年少女達にとっての逃げ場として孤城がある。それは相談できる相手だったり、フリースクールのような別の環境だったり、そういった救いとなるものの象徴なのだろう。わかりや>>続きを読む

禁じられた歌声(2014年製作の映画)

3.0

戒律は都合良く解釈され、理不尽な法となる。イスラム過激派のニュースは耳にすれど、そこで生活する人々の現状まではなかなか伝わってこないものだが、映画として提示されると改めてショッキングに感じる。

ヴィーガンズ・ハム(2021年製作の映画)

3.0

ヴィーガンは草食だから精肉したら美味いかも、という狂ったアイデアが生んだ奇抜な映画だが、そこにブラックなコメディ感を加えて批評的な解釈をも与えている。カニバリズムの不快感も馬鹿馬鹿しさの前ではシュール>>続きを読む

春夏秋冬そして春(2003年製作の映画)

4.0

湖に浮かぶ庵、四季折々の風景の中で、人間の業や輪廻転生といった仏教思想を、一人の男の生涯を通した物語として描く構成の巧さには感嘆させられる。美しさと侘しさがあって、のどかなのにセンセーショナルでもある>>続きを読む

美しき諍い女(いさかいめ)(1991年製作の映画)

4.0

描画を丁寧に切り取ることで濃密な時間が流れる。ペン先と紙、絵筆とキャンバスの擦れる音だけが空間を支配しているのに、画家とモデルそれぞれがのめり込んでいく。一枚の「完成された絵」のために、主体と客体の関>>続きを読む

ボーイズ・ドント・クライ(1999年製作の映画)

4.0

胸糞にも程があるだろうと言いたくなるが、実際の事件に基づいている限り現実の方が悲惨なのかもしれないと思うと胸が苦しくなる。LGBTに過剰に配慮する現代社会には違和感を持っていたが、このようなヘイトクラ>>続きを読む

サウルの息子(2015年製作の映画)

3.0

極端に限定的な視点は、物事の残酷さを想像力で無惨にも補わされる効果があり、同時に主人公の行動に肉薄させることで常に緊張感がつきまとう。物語には何一つとして希望はないが、ラストの男の笑顔から、彼だけは悲>>続きを読む

アミューズメント・パーク(1973年製作の映画)

3.0

老人がひたすら不憫な目に遭う遊園地、という高齢化社会を批評的なメタファーで描いた佳作。冷遇され、搾取され、時には見世物になったりもして、年を取ることが恐ろしくなってくるくらいにはホラー性がある。

トゥモロー・ワールド(2006年製作の映画)

3.0

平和や幸福の定義としての「子どもたちが笑って過ごせる社会」であるべきというメッセージを受け取った。その前提が崩れたとき、争いは起こるべくして起こり、ディストピアと化すのだ。長回しのショットによって常に>>続きを読む

ジョー・ブラックをよろしく(1998年製作の映画)

3.0

全盛期ブラピの美しさとミステリアスな雰囲気があって、そのどちらをも物語に落とし込むためのドラマがある。はにかむクレア・フォーラニの視線の細やかさが、よりロマンスらしさを演出していて堪らなくなってくる。>>続きを読む

バーン・アフター・リーディング(2008年製作の映画)

3.0

豪華な俳優陣を使って(良い意味で)クソくだらないコントをやらかしてくれた。マルコヴィッチのキレ演技も堪らないし、クルーニーのバカっぽさ、マクドーマンドのヤバい女感、ブラピのチャラさと不運さなど、すべて>>続きを読む

レジェンド・オブ・フォール/果てしなき想い(1994年製作の映画)

3.0

馬と草原がブラピのワイルドさに合致していて、奔放なキャラクターに息を吹き込んでいる。時代に翻弄され、一人の女性に魅了される兄弟の細かな心情がしっかりと描かれており、2時間の映画とは思えない重厚感がある>>続きを読む

愚行録(2017年製作の映画)

3.0

ミステリ的な物語を期待したが、ひたすら死んだ目をした妻夫木聡から想像し得る展開へと帰結していく。衝撃はないものの鈍痛のように胸を抉ってくる胸糞感だけがある。自分勝手な個人主義が当たり前の世の中において>>続きを読む

ビッグ・フィッシュ(2003年製作の映画)

4.0

奇人変人が登場するファンタジーと、そんなのは嘘だとするリアリズムが対比される。父を否定し続けた息子が最期にホラ話を受け継ぐことで、それでもファンタジーを夢見ることの大切さ・面白さを示してくれる。お得意>>続きを読む

ゼア・ウィル・ビー・ブラッド(2007年製作の映画)

2.0

ダニエルの圧倒的な芝居と、それに呼応するかのように底の見えない演技のポール・ダノ。二人のやり取り部分が鮮烈なだけに、全体の物語にまったく魅力が感じられない。丁寧ではあるがあまり中身のない演出ばかりが続>>続きを読む

千年の愉楽(2011年製作の映画)

2.0

中上健次だからこそ出せる重厚感に、あの若松孝二さえ追いつけなかったことがわかる。血の宿命というテーマは劇映画の尺では描き切れず、高良・高岡がいくら艶かしい演技をしても、その深奥にまで到達しないまま、さ>>続きを読む

キスより簡単(1989年製作の映画)

2.0

ウェーブのかかったロングヘアをかき上げる早瀬優香子のバブル感満載の姿が魅力的で、軽薄でテーマ性もない物語はどこかファンタジックな雰囲気があった。吹き出しでダメ出しされる石橋蓮司がかわいい。こんなしょう>>続きを読む

水のないプール(1982年製作の映画)

3.0

内田裕也という俳優の面白さというか、ボソボソと滑舌の悪い台詞回しで、別に特段演技が巧いわけでもないが、変態チックな役柄であるというのにどこか格好良く映ってしまうのは何故だろう。空虚さがレイプによって満>>続きを読む

うみべの女の子(2021年製作の映画)

2.0

浅野いにお的世界観は画面にしっかり反映されているが、役者の演技や風景の描写に何か決定的なものがなく、原作が持つ青臭さまでは表出しなかった。特に終盤は雑な演出が目立ち、余韻を残さないラストには諦めが見え>>続きを読む

THE BATMAN-ザ・バットマンー(2022年製作の映画)

3.0

これまでの『バットマン』の中でも断トツで暗澹さを帯び、そこにニルヴァーナの楽曲がピタリと合う。なぞなぞ好きのヴィランに翻弄されるミステリ感が世界観にあまりハマらず、物語としては退屈になっている。独特な>>続きを読む

ザ・フラッシュ(2023年製作の映画)

2.0

マルチバースの一言で過去作のブルース・ウェインを再登場させるのは強引ではあるが粋でもある。しかし同時にマルチバースの一言によってタイム・パラドックスを上手く処理できず、物語そのものの意味性がなくなって>>続きを読む

ブラックアダム(2022年製作の映画)

3.0

何が正義で何が悪か、あるいは何をもってして彼らをヒーローと呼ぶのか、その多様的な定義を示す上で面白い設定だと思う。ドウェイン・ジョンソンのタフさがブラック・アダムに説得力を持たせ、派手なバトルに心躍ら>>続きを読む

シャザム!~神々の怒り〜(2023年製作の映画)

3.0

コメディ調な前作に比べて、神を敵に回すとシリアスかつシビアな展開となり、結果的にこのシリーズの持ち味が薄まってはいる。兄弟姉妹それぞれのエピソードで、まだまだ続編の可能性がありそうだが、そこまで物語に>>続きを読む

シャザム!(2019年製作の映画)

3.0

「子供なら誰もが憧れるヒーローに、子供自身がなってしまったら」というアイデアがメタ的な面白さを作っている。血の繋がりはなくとも家族愛は生まれる、というテーマ部分の描写が足りないが、それでも力を分け与え>>続きを読む

牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件 デジタル・リマスター版(1991年製作の映画)

3.0

一言で「青春」といっても、友人関係や恋愛、家族の問題、あるいは社会そのものに身を置くことでもたらされる生き辛さといったものが、複合的に絡んで成立するものだ。それらすべてを丁寧に画面に投影することで長尺>>続きを読む

アフリカの女王(1951年製作の映画)

2.0

モサくて粗野なボガートと、レディ然としたヘプバーンによるボート版ロード・ムービーといった感じで、正反対なはずの二人が冒険を通して惹かれ合うのだが、後半は基本的にイチャイチャする様を見せつけられ、物語が>>続きを読む

アステロイド・シティ(2023年製作の映画)

3.0

アンダーソンらしい舞台装置、相変わらず徹底された色彩と構図があり、物語のメタ化が異次元にまで到達している。そのため妙な難解さがあって、ただただ雰囲気だけを味わう作品になっている。写真に撮られるためにポ>>続きを読む

BLUE GIANT(2023年製作の映画)

4.0

ジャズのパワーをここまで表現してくれたことに感謝したい気分にさせてくれるほど、熱く胸躍る作品だ。アニメだからこそ活きる演奏シーンのダイナミックな演出があり、しっかりと音楽を伝えてくれる。物語やキャラク>>続きを読む

SHAME シェイム(2011年製作の映画)

2.0

女を抱いても満たされないし、自傷しても救われるわけではない。それなのに繰り返してしまう依存症がもたらす虚無感を描いているが、あまりに坦々とし過ぎていてテーマも見えにくいし退屈だ。キャリー・マリガンが歌>>続きを読む

ルーム(2015年製作の映画)

3.0

監禁→脱走というショッキングな出来事だけで一本の映画として成立するところ、その後を描くことで事の深刻さがさらに浮き彫りになる。まるで浦島太郎のように変化した状況に適応し切れない母、すべてが新鮮な世界を>>続きを読む

正欲(2023年製作の映画)

1.0

マイノリティってそういうことじゃないだろ、と思わずツッコんでしまいたくなるほど、社会における多様性の解釈が絶妙にズレていることで、テーマが決定的に矛盾している。中盤あたりまでキャラクターの奥行を感じら>>続きを読む