トノモトショウさんの映画レビュー・感想・評価 - 4ページ目

女神の継承(2021年製作の映画)

3.0

物語形式ではなくモキュメンタリーとして作ることで、アンチ・オカルトな現代社会におけるシャーマニズムの信憑性をメタ的にホラーに置き換えてはいるが、それにしては結末から考え得る撮影・編集の矛盾をどう許容す>>続きを読む

暗殺の森(1970年製作の映画)

3.0

挑戦的な撮影と編集で主人公の混乱を見事に画面に映し込み、ファシズムの熱狂と崩壊を重ね合わせている。蠱惑的な女性の登場によって物語が一気に加速していき、フィルム・ノワールな展開に突き進んでいくことの、な>>続きを読む

タイタニック(1997年製作の映画)

3.0

改めて観ると確かによくできた作品だ。身分の違う恋の行く末を、沈没するタイタニック号そのものに同化させていく。それを完全再現された美術と、ディカプリオ&ウィンスレットの完璧すぎる美しさによって彩りながら>>続きを読む

鬼畜大宴会(1997年製作の映画)

4.0

内ゲバがもたらす狂気が暴力を生み、その暴力がさらなる狂気を呼び起こす、その連鎖性がわかりやすく描かれている。文字通り「脳ミソをぶちまける」シーンなど、グロテスクなヴィジュアルの扱い方をちゃんと心得てい>>続きを読む

ハスラー2(1986年製作の映画)

3.0

若く青いトム・クルーズを育てる物語と思いきや、まったく言うことを聞かず過剰な自信に取り憑かれたクソ野郎を持て余し、結果自分がもう一度チャレンジする、というニューマンのためのリベンジ映画だった。そのある>>続きを読む

ハスラー(1961年製作の映画)

3.0

地味な競技であるビリヤードが題材ということもあり、色々な魅せ方でアプローチするものの、あまり盛り上がりを感じないが、実は物語の本質が青年の成長譚であることに気付かされ、ラストであっけなくライバルを倒す>>続きを読む

アドレナリン・ドライブ(1999年製作の映画)

3.0

物語としてはよくできているが、タイトルから想像し得る疾走感やカタルシスといったものは、あまり見受けられない優等生な作品。登場キャラクターも典型的だが、松重豊と角替和枝は名バイプレーヤーとして重宝される>>続きを読む

神経衰弱ぎりぎりの女たち(1987年製作の映画)

3.0

ぎりぎりどころかヤベー女達なのだが、段々と愛しく思えてくるのが不思議。それは前半で散々無茶苦茶やりながら、後半で吹っ切って立ち向かおうとする女性の魅力が画面にしっかりと映し出されるから。情熱的な音楽と>>続きを読む

シェイプ・オブ・ウォーター(2017年製作の映画)

3.0

半魚人との恋というデル・トロ節全開の作品だけに、(良い意味で)アカデミー賞のような権威が似合わない。醜いものを美しく魅せていく演出は随一のもので、水浸しの浴槽シーンの神々しいことよ。登場人物のキャラも>>続きを読む

RUN/ラン(2020年製作の映画)

3.0

障害を持った娘への過剰な愛を描いたサスペンスかと思いきや、段々とサイコスリラーの様相を示す過程が面白い。もう少しじっくりと種明かしをしてもよかったが、ラストは気が利いている。

攻殻機動隊 新劇場版(2015年製作の映画)

3.0

難解なARISEシリーズも物語を追うごとに全体像が明らかになり、9課がチームとして確立されていく展開も含め、ようやく面白くなってきた。ラストで押井版のオープニングや、SAC版に繋がるニクイ演出があり、>>続きを読む

攻殻機動隊ARISE border:4 Ghost Stands Alone(2014年製作の映画)

2.0

結局誰が何のために何をしたのか、という本質の部分が難解過ぎて、物語としてのカタルシスが希薄になっている。エンタメSFの域を飛び越えた衒学性までを本シリーズに求めているわけではなく、ちゃんとアニメらしさ>>続きを読む

攻殻機動隊ARISE border:3 Ghost Tears(2014年製作の映画)

3.0

トグサが物語に大きく関わり、9課のチームワークも発揮され、攻殻らしさが出てきたことで面白さがようやく上がってきた。少佐の恋愛模様や、直情径行な性格は、すっかりキャラ崩壊してしまっていて、なかなか受け入>>続きを読む

攻殻機動隊ARISE border:2 Ghost Whispers(2013年製作の映画)

2.0

9課メンバーをスカウトしていく過程にはワクワクする部分もあるが、やはり筋となる物語が面白くない。少佐VSバトーなど見所のあるシーンはいくつかあるだけに勿体ない。

攻殻機動隊ARISE border:1 Ghost Pain(2013年製作の映画)

2.0

新キャスト・新デザイン、さらにはこれまでのキャラクター性を大きく改変された登場人物に慣れず、どこか裏切られた気分になる。それを補うほどの物語の魅力があればともかく、無駄に複雑な割にはパッとしない。アク>>続きを読む

東京戦争戦後秘話 映画で遺書を残して死んだ男の物語(1970年製作の映画)

2.0

主人公二人だけが認識している「あいつ」と同じ映画を撮るという物語には、幻想にまみれた(とりわけ全共闘後の空々しさを含む)戦後をメタ的に描こうとする意図があるのかもしれないが、学生演劇のような拙い芝居が>>続きを読む

日本春歌考(1967年製作の映画)

3.0

若者の抑圧を「春歌」の一本軸で描き切ろうとする無茶なアイデアは、ノンポリ学生が妄想の中で女を犯す行為によって、どこか政治性を帯びていく。虚無感に満ちたカメラや俳優の演技は、あらゆるものが対立するこの時>>続きを読む

日本の夜と霧(1960年製作の映画)

3.0

1カットの長回しによる舞台芸術的な緊張感は、60年安保闘争後の虚無感を露わにしていき、それがこの時代の総括として機能している。作品内で描かれる分裂が、そのまま10年後の結末を予見しているようで、大島の>>続きを読む

活きる(1994年製作の映画)

3.0

まさに時代に翻弄されるとはこのことで、国共内戦や文化大革命といった歴史背景がもたらす「うねり」に一家族は飲み込まれ、いくつかの悲劇を乗り越えて、それでも生きていく様を庶民の視線で温かく描いている。しか>>続きを読む

幸福(しあわせ)(1964年製作の映画)

3.0

坦々と幸福な一家庭を描く作品なのかと思いきや、二人の女を愛した男の身勝手な幸福をテーマにした胸糞映画であることが徐々にわかってくる。衝撃的な事件が起こるが、幸福の分量はラストまであまり変わらず、そこに>>続きを読む

ヴァチカンのエクソシスト(2023年製作の映画)

3.0

ストーリーはエクソシストものとしては平凡ではあるが、ラッセル・クロウならどんな悪魔でもパワーで捩じ伏せそうな気がするし、実在の人物がモデルであることも加えるならホラーの文脈以上に差し迫った現実味を感じ>>続きを読む

ターミネーター ニュー・フェイト(2019年製作の映画)

2.0

リンダ・ハミルトンの再登場は恐ろしく格好良いが、シュワちゃんのキャラクターが物語の根幹を揺るがすほどの立ち位置であるため、以降の展開にまったく身が入らなかった。マッケンジー・デイヴィスの美しいアクショ>>続きを読む

ターミネーター:新起動/ジェニシス(2015年製作の映画)

2.0

1作目のリメイクかと思いきや、自分の知ってる過去ではないタイム・パラドックスが発生したリブート作品であることがわかる序盤はドキドキした。しかし物語においては禁じ手のような敵役や、並行世界の概念の不備な>>続きを読む

ターミネーター4(2009年製作の映画)

3.0

SF味が強まり過ぎて、本来の『ターミネーター』色が薄くなってはいるが、設定は忠実なままハードな路線への転換が悪いとは思わないし、クリスチャン・ベールとの相性も良い。バイク型・魚型・トランスフォーマー型>>続きを読む

ターミネーター3(2003年製作の映画)

2.0

破茶滅茶なカーチェイスや、女ターミネーターの造形など、面白い部分もあるのだが、やはり蛇足的な物語に思えてしまう。SF設定に矛盾が生じ始めているが、それを押し切るほどの説得力もなく、ラストも納得がいかな>>続きを読む

ターミネーター2(1991年製作の映画)

3.0

前作では脅威でしかなかったターミネーターが今作では味方として登場する。やはりシュワちゃんはヒーローの方がよく似合う。新たな敵役として現れるのが液体金属のサイボーグというアイデアと、それをちゃんとヴィジ>>続きを読む

ターミネーター(1984年製作の映画)

3.0

シュワちゃんの鍛え上げられた肉体と、無表情で銃をぶっ放す非人間感が、ターミネーターというSFキャラクターに説得力を与えている。終盤のデザインも格好良い。アクションはやや粗雑さがあり、あまり迫力がないの>>続きを読む

逆噴射家族(1984年製作の映画)

3.0

テンポ感のある撮影・編集が、狂気を発露していく家庭の様子を軽快に描いている。荒唐無稽な話ではあるのだが、より良い家族の形を追い求める父親像自体はリアルで、それが極端な形で逆噴射する可能性は誰にだってあ>>続きを読む

さよなら、人類(2014年製作の映画)

1.0

やりたいことは分からなくもないが、じゃあ映画としてそれに見合った物語なのかというと、なかなか評価が難しい。詩人が書いた小説や画家が描いたコミックのような、上手いのかもしれないが面白くない、まったく焦点>>続きを読む

ウエスト・サイド・ストーリー(2021年製作の映画)

3.0

楽曲の素晴らしさは言うまでもないとして、原作に基づいたキャストや、そのテーマ性などは61年版より色濃く表れている。ダンスのキレも良く、ミュージカルとしての楽しさは充分にあるが、主役2人があまり魅力的に>>続きを読む

午後の遺言状(1995年製作の映画)

3.0

老いや死を描く上で、杉村春子を主演に据え、正面ショットや独特な台詞回しで、どうしても小津風に偏った演出を感じる。老人達の会話にはコミカルさと共に悲哀も同時に滲み出ていて、これぞ長く生きる者だからこそ表>>続きを読む

ホーム・アローン2(1992年製作の映画)

3.0

シチュエーション勝負の作品の続編でありながら、アイデア溢れる脚本によって、無理なく似たような状況を作り上げた手腕に拍手を送りたい。相変わらず泥棒たちがタフ過ぎるのも面白く、思いもよらない仕掛けの数々に>>続きを読む

ホーム・アローン(1990年製作の映画)

4.0

マコーレーの可愛らしさと、知恵を絞って大人に立ち向かうギミックが素晴らしい。物語構成も巧みで、クリスマスらしいハートフルなものを付加させることも忘れていない。頭を焼かれるジョー・ペシのコメディアンっぷ>>続きを読む

バンデットQ(1981年製作の映画)

1.0

小人と少年による時間旅行はファンタジーらしさもあるが悪趣味でもある。色々と趣向は凝らしているものの、脈略のない物語になかなか入り込めなかった。クセの強い演出ばかりで面白味がなく、衝撃のラストにも意味を>>続きを読む

マジカル・ガール(2014年製作の映画)

3.0

悲劇の始まりとなるのが日本の魔法少女アニメで、ラストでそれが皮肉的に帰結するまで、ひたすら鬱展開を見せていく。物語にパワーがあるのだから、もうちょっとシンプルな作劇で押し切っても良かったと思うが、その>>続きを読む

メイド・イン・USA(1967年製作の映画)

2.0

案の定、観念的な台詞回しで難解さはあるが、ハードボイルドな物語として一本の筋道を示しているし、彼の主張ともリンクした構成がある。色彩やサウンドは挑戦的で、アメリカ映画へのパロディとしての皮肉さはあるも>>続きを読む