短槍使いの女用心棒・バルサは、2年ぶりに訪れた新ヨゴ皇国で、突然暴走した牛車から、川に振り落とされた皇子を助ける。 バルサが助けた少年は、新ヨゴ皇国の第二皇子・チャグムだった。皇子を助けたお礼に宮へ招かれ、歓待を受けたバルサは、ニノ妃から重大な秘密を聞かされる。チャグムは何か得体の知れないモノにとり憑かれ、これを疎ましく思う父帝が、彼を亡き者にしようとしているというのだ。ニノ妃は、バルサの腕を見込んで、チャグムの用心棒を引き受けてくれと頼む。 帝を敵に回すという、命の保証がない仕事をなぜか引き受けたバルサは、宮に火を放つよう指示して、燃え盛る炎を背に、チャグムをつれて宮を脱出するのだった。
燃え盛る炎を背に、チャグムをつれて宮を脱出するバルサ。二人は一旦頼まれ屋のトーヤとサヤの家に身を隠す。 一方、炎上する二の宮を見つめる一人の人物がいた。若き天才星読博士のシュガである。 チャグムの教育係でもあったシュガは、この国最高の賢者である<聖導師>の元を訪れ、チャグム暗殺計画をやめて欲しいと頼む。しかし、聖導師は逆にヨゴの政治の裏側を語って聞かせ、自分の後を継ぐべく聖導師としての道を歩むように諭すのであった。 もしチャグム皇子に取り憑いたものが本当に水妖ならば、それを倒すことが出来るのは帝だけである、と言う聖導師。それはチャグムを生きたまま宮へ連れ帰り、父である帝の手で討たせることを意味していた。< 聖導師が差し向けた、帝の影に仕える<狩人>たちが、バルサたちに迫り来る。
バルサたちの前に立ちはだかる狩人たち。彼らの絶妙なコンビネーションに対し、バルサはチャグムの安全を最優先する。 チャグムは一人、森の奥へと逃げ、バルサは狩人たちと戦う。 しかし、暗殺術に長けた彼らの攻撃に苦戦を強いられ、更に、修理することができなかった槍先が戦闘中に外れてしまう。モンの刃が、バルサの腹に襲い掛かる。 しかし、バルサは自らが傷つきながらもモンに渾身の一撃を浴びせ、その場を逃れる。
バルサがタンダに救われ、山小屋に向かっていた頃、トロガイはナユグの住人との接触を図っていた。 そして、ことの始まりが「卵」であることを知る。トロガイは、彼女の命を狙って現れた狩人たちを軽くあしらい、彼女の得た情報についての文を聖導師に送る。 宮では狩人のチャグム拉致失敗の報がもたらされていた。それを聞いた帝と聖導師は、次の策を練り始める。
トロガイは、山小屋にいる一同にチャグムに宿るものが「精霊の卵」であることを教える。精霊の卵は100年に一度現れる水の精霊の卵だった。チャグムはナユグの精霊から「精霊の守り人」として選ばれた者だったのだ。 バルサはトロガイに、「一生この子の面倒を見るつもりか?」と、きかれる。バルサが背負わねばならないのは、チャグム一人の命ではなく、チャグムの守護に失敗したときに起こるであろう干ばつも含めた新ヨゴとヤクーの人々の命であった。しかし、バルサの決意は変わることはなかった。 一方、都ではチャグムは死んだものとして、民へと発表され、葬儀が着々と進められていた。
翌朝、出発を前に髪を下ろし、平民の姿になるチャグム。 無事逃げる為と理解しながらも、外見が皇子ではなくなってしまった事、母妃と遠く離れてしまった事を改めて実感し、悔し涙をこぼす。 都では、討伐隊が青い手が解放した人々に手こずっていた。 狩人達はそれが陽動である事を見抜き、バルサは故郷カンバルを目指して青霧山脈を越えるはずだと判断する。 青霧山脈へ向かう二人の狩人、モンとゼン。そして山中、青弓川の渓流沿いで逃げるバルサとチャグムを見つける。
バルサはチャグムと共に扇ノ下に新居を構える事にする。 死んだ事になっているとは言え噂の的になっている二人が都で暮らすことを心配するタンダ。 しかしバルサはそんなタンダを他所に、街の人相手に自分の噂話までしてみせる。 誰もバルサ本人がこんなところにいるとは思わない。噂ばかりが大きくなり、 バルサの正体が見抜かれる様子はなかった。 そんな中、チャグムは、街では何をするにもお金が必要になることに驚いていた。 自分が暮らす分のお金までバルサやタンダに頼るのでは、二人にとって迷惑なのではと チャグムは心配し始めていた。
ボロボロの槍を直してもらおうと、バルサはチャグムを連れて馴染みの鍛冶屋に向かう。 そこの鍛冶は名匠と評判で、宮にも刀を納めていた。 死んだはずのバルサが現われ、驚く鍛冶。すぐに新しい槍を打って欲しいというバルサに対して鍛冶は、 帝に弓を引いたという街の噂が本当ならば、バルサには協力出来ないという。 バルサはそれでも真実を語ろうとしない。事情が分からない限り、槍を打つかどうかの判断が出来ないという鍛冶は、 他の客が来るからと二人を隣の部屋に追いやる。 その時、客が入ってくる。やって来たのは狩人のモンとジンだった。
シュガは、チャグムを救えなかったという深い無力感と自責の念に駆られていた。そしてその思いは、消えていない空の<乾の相>――干ばつの予兆――に気付かない星読み達への苛ちとして表れる。チャグムを可愛がり、その死を悼んでいたはずの兄、サグム皇太子も、この所は人が変わったように自信に満ち溢れ、チャグムの遺品を焼いて水妖の呪いを祓う仕事なども進んで引き受けるようになっている。 そんな中、皇太子の教育係ガカイが、チャグムの遺品を捜そうと、シュガの私室に無断で立ち入る。それを見てガカイと言い争いになるシュガ。揉みあいになった勢いでガカイを強く打ってしまい、謹慎処分を言い渡される。
物覚えのいいチャグムは、順調に仕事を覚え、里での生活に慣れて行く。そんな賢すぎるチャグムを見て、 バルサはこのままでは息が詰まってしまうと心配する。 そんな中、狩人たちとの一件以来、身を隠していた根っからの街っ子のトーヤが、街に戻ってくると知ったバルサは、 チャグムを街の生活により馴染ませようと、ちょっとした荒療治を思いつき、頼まれ屋の仕事を手伝うようにと、 トーヤに頼む。 トーヤと街に出るチャグム。買い物での料金交渉など扇ノ下の社会を体感していくなか、賭博をしている現場に出くわす。
ひとりで落ち込んでいるトーヤ。その理由は、サヤが嫁にいってしまうかららしい。 サヤがお見合いを受けると言ったため、兄替わりだったトーヤは賛成したものの、やはり独りになると、その喪失感はお金では埋められないものだった。 しかし、そのおめでたいはずの見合いの席上、花酒を飲んだサヤが急に倒れた。 しかも、どうやら“魂抜け”になってしまい、そのまま戻らない。 バルサからサヤが倒れたことを聞かされ、急ぎお見合いの場に駆けつけるトーヤ。 そこであらためて、このお見合いが誰の了承も得てない物だったと判明する。 サヤはお見合いが嫌でこんなことになってしまっているのだ。 サヤの魂を戻すために、タンダは師匠のトロガイから止められていた術“魂呼ばい”をして、ナユグの世界へと入っていく。
聖祖トルガル帝が新ヨゴ皇国を建てたのを記念するお祭り“夏至祭”が近づいてきた。 農民たちも祭りへ向けての準備で盛り上がっている。そんな中、チャグムは近所の友人たちに、 祭りの日に行われる格闘技の“ルチャ”の大会へ向けての稽古へと誘われる。 会場に来たチャグムたちの前に現れた、隣国ロタ人の子ヤーサムの挑発に乗ったガキ大将は勝負するが、 その強さに全く歯が立たず負けてしまう。 調子に乗ったヤーサムのヨゴへの侮辱、さらには帝の悪口に腹をたてたチャグムは、 翌日の祭りでの勝負を約束する。 家に帰りバルサに勝負のことを話すチャグム。バルサは勝つ方法はあると言うが、祭りの大会で勝負すると聞き、 その勝負はあきらめるようにと諭す。大勢の人が集まり、誰が見てるかわからない場で目立つことはできないのだ。 チャグムが思い悩む中、夏至祭りが始まった…。
バルサの存在が、過去に因縁のある武人カルボに見つかった。 手紙を受けたバルサは、彼に会いに行き、自分と会ったことは忘れてくれるようにと頼む。 しかし、カルボは過去にバルサから受けた屈辱を晴らすために今日まで生きてきたという。 そしてチャグムのことで揺さぶりをかけ、さらには翌日から、街道の関門で最初に来た旅人を一人ずつ毎日斬っていくと言い放ち、その場を去っていくのだった…。 翌朝気になったバルサは、関門にくるが、カルボの姿は見当たらない。そこへ、旅人が通りかかる。 バルサは彼らがカルボの標的になると、その旅人から目を離そうとしない。そんな中、姿を現さないカルボは 遠くから執拗に旅人を付け狙ってくるのだった。精神的に追い詰められていくバルサ。しかし、カルボの思惑とは別に、 バルサの中で眠っていた野生が目覚め始めてきた…。
世に伝わる『建国正史』。 大聖導師ナナイが残した碑文を読み解くうちに、シュガはこの建国正史が捏造された物語だったことに気付き、 水の精霊こそが水の恵みをもたらすという事実にもっと早く気付いていればチャグムを守れたと、後悔するのだった。 同じ頃、サグとナユグが折り合う地“結び目”にて、トロガイもまた、水の民との話により、建国正史の嘘に気付いていた。 ナユグのものたちに襲われながらも、バルサたちのところに戻りその事実を皆に伝える。 安心するチャグムに、それ以上の真実を言えないトロガイであった…。
トロガイは、バルサとタンダに “卵食い”ラルンガの存在を話す。 チャグムにとって最大の敵が何者なのか?卵が孵る“宴の地”とは? とにかくじっとしていても始まらないと、少しでも手掛かりを見つけるために、バルサたちはヤクーの伝承が残っているトウミ村に行くことを決める。 一方シュガは碑文をさらに読み解き、チャグム生存の手がかりを見つける。 しかし、まずは聖導師の断り無く入った碑文の間を出なくてはならない。 シュガに味方する無人たちの協力で、外に出る事が出来たシュガはついにその手がかりを見つけ、チャグムの生存を確信する。
シュガは、青霧山脈に来ていた。バルサとチャグムが落ちていった谷は前日の雨で、あの時立ち込めていた毒霧が晴れていた。 シュガが谷底へ降りようとしたそのとき、聖導師の指示により後を追ってきた狩人たちが現れる。誰もがチャグムの生存を願っているのだ。 その確認に崖を降りていくモン。谷底に存在していたのは、馬の死骸と二人の衣装のみだった。 聖導師にチャグムの生存を確信したことと、碑文を読み解いた結論を報告するシュガは、さらに帝の許しを得て、チャグム捜索の全権を任される。 狩人を借り受け、捜索に乗り出すシュガ。武術のみならず、むしろ諜報を得意とする狩人たちの手が、ヤクーの村へと 出発するバルサたちの準備を頼まれたトーヤのもとにしのびよる…。
狩人たちとの隠れ家から、一旦宮へ帰ろうと扇の下を歩いていたシュガは、偶然我が目を疑う人物を見かける。チャグム皇子だ! あまりにも突然の再会。一人で買い物をする行為、庶民的な容姿、そして言葉遣いに戸惑いながらも、シュガはすぐにでも宮に戻るよう、 水の精霊の誤解がとけたことを説明する。しかしどうしていいか愕然と立ち尽くすチャグム。 一方トーヤは、バルサにたのまれたものを届けに、水車小屋に到着する。 トーヤを尾行していたゼンとユンは、その小屋をつきとめ近隣住人の聞き込みを開始する…。
トーヤのおかげで難を逃れたバルサは、チャグム、タンダ、トロガイと合流し、直接トウミ村を目指す。 しかしチャグムは、シュガから聞かされた兄サグムの事が気になり、バルサたちと行動を共にすることに納得がいかない。 再びバルサたちを見失ったシュガと狩人たちは、トーヤが水車小屋に届けた荷物からその行き先を推測する。 そんな中、直接対峙したシュガは、バルサが自分と同じく新たな知識を得ようとしているのではと考えていた。 ヤクーとの関わりを確信した狩人たちは、選択肢をしぼってバルサたちを追い始める。 そのひとつにあるトウミ村へは、モンとジンが向かっていた…。
トウミ村の少女ニムカから、“卵食い”ラルンガのことを聞いてしまったチャグム。 そのことを教えてくれなかったバルサに対する不信感と、自分が精霊の守り人であり、ラルンガの 餌食になってしまう運命にあることへの恐怖から、チャグムは宮に戻る決意をする。 一方、トロガイたちは、ニムカの祖母から伝えられた話から、ラルンガのことや精霊の卵がどうやって孵るのか という謎の答えが、誰もが知っている田植え歌の中にあることに気付くのだった。 しかし同じ頃、チャグムを奪回するべく、シュガと狩人達はトウミ村へと迫っていた。
バルサがチャグムを追いかけている頃、トウミ村に入ってきたシュガと狩人達。 彼らの前に現れたトロガイは、ニュンガ・ロ・チャガとしての宿命を負ったチャグムのこと、 "卵食い"ラルンガのことをすべて説明する。 皇子を守れるのはヤクーか?ヨゴか? プライドを傷つけられた狩人達が力ずくでその場を制圧しようとするが、ヨゴの大軍勢をもってしても、 皇子を守ることに疑問を持ったシュガは、トロガイへの信用から、初代聖導師の碑文の存在を明かす。
厳しい冬を越すための狩穴生活で、チャグムは、肉体的にたくましくなっていくが、精神的には、 まだ精霊の守り人としての運命を受け入れられないでいた。 そんなある日、バルサは自分にとってかけがえの無い存在、ジグロのことをチャグムに話す。 幼きバルサ六歳の頃。 それは、隣国カンバルの王室付きの医者であったバルサの父、カルナ・ヨンサが宮中の陰謀に巻き込まれ、 親友のジグロ・ムサに、最愛の娘バルサを託した、壮絶なる悲劇の話であった…。
バルサの話はなおも続く…。 ジグロと親友“王の槍”たちとの戦い。二人の逃避行。そして、バルサがジクロから学んだもの。 すべての話が終わったとき、チャグムはバルサとジグロに、自分とバルサを重ね合わせていた。 そしてチャグムは、自らの運命に立ち向かう決意をし、バルサに武術を教えてもらうことを請うのだった。 やがてトロガイは別の場所で春の準備をするために狩穴を出て行き、 残ったバルサ、チャグム、タンダの三人は、それぞれの想いを胸に、狩穴生活を続けていく…。
ついに春がやってきた…。 シュガは、すべての碑文を読み解くことは出来なかったが、ラルンガの弱点を見つけ出したことの成果を持って、 狩人とともにヨゴの軍勢を率いて出立する。 一方戻ってきたトロガイは、冬の狩穴暮らしで、すっかり男らしくなったチャグムに、新しい服と短剣を渡す。 それはチャグムが一人前になった証しとして、バルサが頼んだものだった。 バルサたち一行は、チャグムの導くままに宴の地・青池へと向かう。 そこでシュガ率いるヨゴ軍と合流したのも束の間、チャグムはシグ・サルアの咲き乱れる青池の中心へと、 卵に導かれるように歩みだす。
卵に導かれるままに青池を離れ、森へと去っていったチャグム。 シュガは混乱する軍勢を立て直し、トロガイと共にお互いが持っている知識を共有することで、 再び現れるであろうチャグムとラルンガに対応するための準備をする。 チャグムを追って森に入ったバルサとタンダは、同じ行動をとった狩人たちと合流するが、双方チャグムを 完全に見失ってしまう。宴の地が青池ならばチャグムは明け方には戻って来るはずだが、バルサは卵の 行動に何らかの理由があると考え、再び襲ってくるであろうラルンガからチャグムを守るために、 さらに森を探すことを決める。 一方、シュガのもとに、残りの碑文を読み続けていたガカイからの伝令が届く。 その残りの石版には、重大な情報が記されていた。
タンダの捨て身の行動によって、ナユグのものと接触できるようになったバルサと狩人たち。 宴の地に現れたチャグムを食らおうと次々と出現するラルンガたちに対し、狩人は大松明を駆使して撃退しながら、 身を挺してバルサをチャグムの所へと行かせる。ついにチャグムの体の中の卵が孵る準備を始め、動き出した。 これを感じたチャグムは、サグとナユグの折り合いをつけられないままに、国のため、民のために 自己を犠牲にすることを選ぶ…
運命の戦いは終わった。 光扇京へ戻る一行。 チャグムは、帝や二ノ妃の待つ宮中に迎えられ、帝直々に悪しき魔物から国を救った英雄として生きることを命じられる。 そして、バルサのことは忘れるようにと…。 十分な歓待と報酬を受け取ったバルサたちは、チャグムとは話をすることもなく、宮を去ろうとするのだった。
アニメから原作に入ったけど、こっちは獣の奏者と比べて蛇足感が少なかった記憶がある
ただ、寒い地域のカンバル人の用心棒は原作通りもっとゴツい顔してて欲しかったし
こんな服着ねえだろみたいな感じに思って…
古いアニメだとは思えないほど作画が素晴らしい。
世界観も大好き。
ナユグの壮大な感じがジブリっぽさがあったね。
ストーリーもチャグムの成長が感動するし、母性が芽生えてきて色々と葛藤しながらチャ…
YouTubeにて視聴。物語に漂う緊張感、そして世界観の緻密さはさすがというべき。(原作未読のため世界設定と人名を覚えるのに苦労してしまった)序盤の緊張感のわりに、確かに中盤の一話完結パートが中弛み…
>>続きを読む戦闘はさすがと言っていい作画。
槍の達人の戦いが現実にあればあんな感じなのかも。
原作ではショボい役のガカイ様が後半で生まれ変わったかの如く活躍するのが小気味良かった。
当時は絶対このスタッフで続編…
(C)上橋菜穂子/偕成社/「精霊の守り人」製作委員会