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ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworldのbluebeanのレビュー・感想・評価

3.0
同じ主人公でシリーズを続けたことでのマンネリ化を避けるためなのか、キリトを眠らせたまま話を進めたのがなかなかよかったです。一方、終始シリアスなストーリーの体を保ちながら、メタな視点とか、めちゃくちゃなご都合主義展開があるのが逆に面白くて笑ってしまいました。

まずは嫁vs不倫相手の対面シーンです。どうしても熟年夫婦感が漂ってしっまうキリトとアスナでしたが、序盤ではキリトとアリスがほぼ不倫関係と言えるほどの関係になっています。そこにまさかの妻襲来。さらにそれまでに登場した女性キャラたちもほぼキリトへの愛を告白しているハーレム状態になります。キリトはあくまで意識がないので罪はないし、妻と不倫相手たちがなぜか輪になってキリトについてみんなで語り合うというシュールなシーンは最高でした。こういうシーンを建前上はあくまで爽やかに描くところが本作の秀逸なところです。

バトルに関しては、今回はゲームで死んでも実際に死ぬわけではないところで緊張感が減っているのが残念でした。強すぎる敵との戦いでは、作戦や機転によるロジックで勝つのではなく、愛と友情と根性などのエモーションを爆発させることで奇跡を生むという精神論。昨今ロジック系が溢れているので、逆に新鮮ではありますが、ちょっと奇跡が安売りされている感があったのが惜しいです。

AIがテーマになっていますが、AIに人権を認めることへのためらいのなさ、哲学的な議論がいっさいないことに対して少々気持ち悪さを感じました。人間と間違えるほどよくできた肉体のハードウェアがぽっと出てくるあたりもアニメならではのご都合主義すぎて納得できませんでした。

最も違和感を感じたのは、記憶の消去です。消去されたデータももちろん、もはや本人も一個人としては一度死んでいて、別人が目覚めたと言っても良いと思います。アイデンティティってなんだろうとか、そういうこといっさい抜きにさらっとやっちゃうところがどうもついていけません。

ラストの怒涛のとんでも展開はすごいです。製作陣に何かあったのでしょうか。不倫相手のロボットにしがみつかれながらもそれっぽい理屈でごまかして上手く切り抜けたと思いきや、その後に夜這い。そこから舞台がいっきに宇宙レベルになって作品ジャンルを覆すほどのすごい展開になります。最後のカットはまるでジャンプ漫画の打ち切り回のような投げやり感。総じて、なかなか楽しめました。
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