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どうする家康のtubameのレビュー・感想・評価

どうする家康(2023年製作のドラマ)
3.1
これほど自分の中で評価に迷う大河も珍しい。
世評ほど悪いわけではなく、固定イメージがついている人物を新しい解釈で描いた意欲性、魅力的な俳優陣、年数の経過を視覚的に分かりやすく表現した(所謂老けメイク)など良いポイントも色々あったのだが、如何せん出来にかなり波があったかなーと。
素晴らしいと絶賛した回の翌週にすごくイマイチな回が来るようなことが結構あって、1年通して不安定さが拭えなかった印象(後半は波が小さくなって比較的安定していったが)。
迷ったけど最終回が正直不満の多い内容だったので低めのスコアにした(最後は1年観てくれた視聴者を信じてあっさりしたラストが良かったんじゃないかなと思う)。


若き日の家康を中心に描く物語。本作の家康は平和な世を願いその礎を作った人間で、その考えのベースは妻・瀬名の存在というのが本作最大の特徴。これまで多数の作品で不仲として描写されてきた二人を仲睦まじい夫婦と設定したのは新鮮で良かったが、瀬名が起こした行動はかなり現実離れしていて入り込めず。あそこまで創作味が強いと個人的には好みじゃなかったかな...。良くも悪くも歴史ファンタジーの雰囲気で最大の賛否両論ポイントだろう。
ある意味実在した人物の名前を使っての創作を自分がどの程度まで許容出来るか?ということを考えさせられる興味深い出来事だった。


瀬名(と信康)との関係性に重きを置いた結果、瀬名の子でない秀忠らとの関係描写は希薄で終盤の跡目の話や大坂の陣での千姫を巡る展開等は取って付けたような印象なのが残念だった(最終的に子供15人以上居る人なのに家康がモテない設定で瀬名以外には好かれてないみたいなのもさすがに無理があるような)。
これは完全な自分の好みだけど、あの頃が一番幸せだった...みたいのじゃなく、瀬名と信康の思い出に支えられながらその後の人生も前向きに生きて幸せな時も過ごしたよと、堂々と死後の世界で二人に言う流れを観たかった。


石川数正や酒井忠次など瀬名同様従来はあまりスポットが当たらなかった人物が多く取り上げられたのが印象的で、徳川家臣団と家康の関わりは生き生きと描かれていたと思う。特に松山ケンイチの胡乱な本田正信はお気に入り。いつも有能な家康の右腕・正信しか観ていなかったので食わせ者っぷりが新鮮だった。山田孝之の独特な服部半蔵も好き。
お市と淀の二役を演じた北川景子は彼女のキャリアの中でベストアクトでは?という存在感だったし、松潤の家康も実年齢に近くなった辺りから馴染んでいったし俳優陣は総じてハマっていた気がする。
終盤いくらでも重大事件がある中で本多忠勝と榊原康政の晩年に尺を割くなど、何を言われても製作陣が描きたいものを最後まで貫いた姿勢は評価したい(ウリにしていた合戦CGに関しては途中で挫けた感があるけど)。


色々書いたけど、何だかんだ一年間楽しませてもらったことは間違いなく、感謝している。
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