tubame

大奥〜華の乱〜のtubameのレビュー・感想・評価

大奥〜華の乱〜(2005年製作のドラマ)
4.5
フジテレビ版大奥第3弾。絢爛豪華な徳川綱吉時代を舞台に愛憎渦巻く男女のドラマが描かれる。これぞ大奥といった女同士の戦いと男たちの権力争いが渦巻く最も華々しい物語。
引き続き配信で再視聴。以前観たときはあっさりしてる一番最初の作品が好きで、過激な後半のシリーズは好きじゃなかった気がするけどいや~今は感想が完全に逆転したな。
これ、華の乱>第一章>初回シリーズの順に好きだわ。面白かった。
男も女も綺麗事じゃない人間の欲と業が詰まっていて、かつ時代劇エンタメとしても魅力的なのだ。


主人公は綱吉の重臣の娘・安子(内山理名)で、ある事件を経て夫と離縁させられ大奥へやってくる。安子のモデルである女性は実際には側室になっていないらしい。他にも大胆な脚色があって、本作は最も創作要素の強いシリーズと言える。
前作・前々作と違い、安子に味方はおらず序盤の孤軍奮闘はなかなか観てて辛かったので、創作だと思って気持ちを慰めていた。


近年では再評価も進む綱吉だが、本作では政治は任せきりで遊んでばかりの殿様。厳しい子供時代の影響か、人の気持ちが分からず欲しいもの(主に女性)は何をしても手に入れる傲慢さと子供のような幼さを持ったアンバランスな綱吉で、谷原章介の一見優しげだけど真意が見えない感じがハマっている。綱吉が唯一溺愛するのが安子で、「安子愛してる。お前だけが私の世界に居ればいい」みたいな若干ヤンデレっぽい歪みがあってたまらない(勿論ドラマだから面白いのであって現実に居たら関わりたくないし普通に人間性はアウト)。そんな彼も安子を通して徐々に人間らしい情を見せ始めるのだけど、安子にとっては家族の敵であって純粋な愛情で結ばれることはない。複雑な感情が織り成す関係に目を引かれる。
綱吉のベストはやはりラストシーンだろう。「花になりたい」から始まる台詞が切ない。彼の心に空いている穴を感じさせる名場面だ。


柳沢吉保は最初のシリーズで家定を演じた北村一輝だが、さすがの安定感。優しい家定公大好きだったけど、溢れんばかりの野心を抱いた一癖ある吉保の方がはまり役だなあ。これでもかと策略を巡らす悪い顔のまあ生き生きしてること笑
吉保と綱吉の関係もかなり大胆な脚色があり、大奥ながらこの男同士の関係も見所の一つ。あと吉保の愛妾の染子(貫地谷しほり)が健気で可愛くて二人の関係も好きだったな。


今回男性のことばかり書いてるけど、女性陣も勿論良い(良いところ多くて言及しきれないので取り敢えず観てくれ...)。
本作は登場人物がおしなべて存在感があって素晴らしく、激しい嫉妬心を露にするお伝(小池栄子)、上品だけど情念を隠し持つ信子(藤原紀香)、大奥を統べる権力者・桂昌院(江波杏子)等々油断ならない人物揃い。綱吉同様、みんな愚かだったり欠けているところがあって、でもどっかで弱さもあるのが生の人間という感じで好きだ。
そこから至る最後の結論も好きで。善人と悪人がいるのではなく、人は善も悪も併せ持っているのだということ。普遍的だけど、心に響くものがあった。
そして本作の登場人物たちをこうも的確に表現する言葉はないだろうなと。エゴが強い人ばかりなんだけど、どこかで嫌いになれないんだよな。
(ほぼ)架空の存在の安子は沢山の人達の生き様を見守る存在としても機能していたのが巧かった。


あと主題歌が東京事変の「修羅場」なんだけど、切なさと色気があって作品イメージに滅茶苦茶合っててこれも好きだった。シリーズの主題歌で一番好き!
tubame

tubame