空

ヴィンチェンツォの空のレビュー・感想・評価

ヴィンチェンツォ(2021年製作のドラマ)
3.8
tvN×スタジオドラゴン制作ドラマ。

ノワール、コメディ、サスペンス、アクション、ロマンス、ヒューマン…様々な要素が散りばめられた一つのエンターテイメント作品という感じ。
スタジオドラゴンは近年海外進出に積極的で市場拡大の勢いは凄まじいけど、その意図を感じた。

こういった大衆向けの分かりやすく豪快なストーリー・演出もいいんだけど、
「ミセン」や「マイ・ディア・ミスター」のような、派手さはないけど登場人物の心理描写やリアルな日常を繊細に丁寧に描く、そんな作品も今までと変わらずスタジオドラゴンさんには作り続けて欲しいなぁ、というのが第一の感想。

意図的に挿入されたコメディパートが韓国ノワール好きには冷めさせる。
そういう人は9話から一気にコメディパートが減るので見やすくなると思う(反対にノワール苦手な人は後半になるにつれてヘビーになります)
特に18話、19話、ラスト20話の前半60分は殆どないので途中挫折しかけたけどここまで見てきて良かったと思った。

9話ラストでワゴン車の遺体と窓越しのヴィンチェンツォ、哀しみを助長するかのような降りしきる雪のカットが美しくて、重厚な音楽も相まってここで没入感が増した。
このカットに前半のワゴン車の回想シーンを被せたことでヴィンチェンツォの悲しみがより深く伝わって、演出も秀逸。

主演のソン・ジュンギとオク・テギョンは普段ノワールを見ない層にもライトに見てもらうためのキャスティング。
オールバッグにイタリア高級ブランドのブラックスーツを着こなし、汗ひとつかかず悪党を倒す、レディーファーストで紳士的、イタリア語を話し趣味はオペラ鑑賞。
誰が演じてもカッコいいキャラクター設定にしつつ、あの色白で甘い顔と細身の体格でノワール感を軽く、でも声は低いので残忍なシーンはハマる。
ラスボスは幼稚過ぎて、この主人公と釣り合うくらい魅力的なキャラクター設定だったらもっと良かった。

「インファナル・アフェア」を彷彿とさせる描写もあったりして、重めのシーンの映像と演出が素晴らし過ぎた。
何度か出てきた90度反転したカットが特に格好良かった。
スタジオドラゴン作品は映像がほんとに綺麗。
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