空

殺し屋たちの店の空のレビュー・感想・評価

殺し屋たちの店(2024年製作のドラマ)
4.9
全く期待してなかったのに★4.9!!
6kg増量してほぼヘアメイクなしで撮影に臨んだという、今までとは違うハードボイルドなイ・ドンウクの全身から漏れ出す哀愁と色気が凄まじい。
本人がインタビューで「今までに経験したことのないキャラクター」と語っていた通り、良い歳の重ね方をしたイ・ドンウクの新境地。全くノーマークの俳優だったのに初めて心持っていかれた。


描いているのは自殺した叔父さん(イ・ドンウク)の葬儀の日、このたった1日。
韓国らしい濃密な人間ドラマを掘り下げながら、バラバラの時系列と複数のキャラクターが最終話に向けて少しずつパズルのピースが完成するように繋がっていく。
この緻密に練られた構成、伏線回収が実に巧みで鮮やか。
映像化するにあたってオリジナルの構成なのか、原作小説のままなのかすごく気になる。

頻繁に回想シーンが入るので、10年間の2人の共同生活や、寡黙で一見冷たく見えた叔父さんが実は温かく優しい人物で、ジアンを深く愛していたことが伝わる。
ジアンも危機に直面する度に叔父さんの言葉を思い出し、乗り越えていく2人の絆。

45分×8話という短さでありながら、個性的なキャラクター1人1人にちゃんと体温を感じたし、あり得ない設定なはずなのに主人公2人の選択にはリアルな説得力があって、叔父さんの過去と愛に泣かされる。

一番好きなシーンは、「死ぬことは怖いことじゃない」と言うミネの言葉でミネはジンマンが好きだとジアンが悟るところ。ジンマンかジアンにも教えたこの言葉はジンマンの生き様そのもので、その境地に至ったジンマンを思うと泣けるし、これをミネが受け継いでいることや、ジンマンという人間をジアンが理解してることが伝わる。

「両親の復讐のためにオレを殺したら、お前もオレと同じだ。一度血の味を覚えたら、永遠に無間地獄を彷徨うことになる」
と、復讐のための殺人を無条件に肯定しないところや、日本人がヒール役じゃなくてむしろ2人の味方だったこと、こういった視点も他の韓ドラと違った。

韓国らしいど派手でスピーディー、斬新なカット割りとダイナミックなカメラワーク。
『マトリックス』で有名になったバレットタイムを多用した銃撃戦など撮り方が『ペーパーハウスコリア』S2と似てると思ってたら、7話でジンマンとブラザーが初めて出会うシーンが教授とトーキョーが初めて出会うシーンのオマージュで痺れた。

★−0.1は最終話で最も見せてほしいシーンが描かれていなかったこと。
続編が仮にあるとしても究極のネタバレはしてしまっているため面白さは半減すると考えたら続編なしの12話にして、全てを描き切ってほしかった。
急に空気感変わったからS2匂わせて終わらせろとの圧でもあったの?実際続編はないと思う。

クールで超人に見えていたジンマンが、実は内面に葛藤を抱えていたり、6話以降どんどん人間味が増していくイ・ドンウクは本当に格好よかった(この見せ方にした構成も素晴らしい)
ペイルと対峙したとき少し怖気付いているようにも見えて、無敵のヒーローではないリアルな人間ぽさが魅力的。
原作小説ではジンマンは小太りの禿げた叔父さんらしいけど(笑)
チョン・ジンマンにイ・ドンウクをキャスティングしてくれたイ・グォン監督ありがとうございます✨またこういうノワールで傷だらけで人間味のある役が見たい!!

ソ・ヒョヌは近年『別れる決心』での中国人チンピラ役、『スピリットウォーカー』での麻薬組織の側近役など悪役がいい味出してる😎

지옥 가는 날 언제지?
오늘이 아니야!!
空