空

怪物の空のレビュー・感想・評価

怪物(2021年製作のドラマ)
4.1
権力者の不法行為の隠蔽と猟奇殺人。

ただそれだけで大して複雑ではないし、韓国ドラマお決まりのオチ。猟奇殺人については背景や掘り下げが甘く、やろうと思ったら2時間ドラマでまとめられそう。

けどこの結末に至るまでのトリックの仕掛け方(やや強引な部分はあったけど)、見せ方、何といっても主演の2人の刑事の関係性が他にはない新鮮さと斬新さがあり、展開の緊迫感が実物。

韓国ドラマでありがちな過剰な効果音や音楽がなく、余分なものを一切排除した演出が、より緊張感を増して吸引力がすごかった(3人で銃を向け合うシーン、車中でジュウォンが真実を知る場面など)

前半部分では演出上、登場人物のちょっとした表情や言動が重要になってくるんだけど、それを見事に演じた役者さんたち。
ただ、主人公イ・ドンシク演じたシン・ハギュン氏のミスリードを誘うための思わせぶりな表情がちょっとやりすぎだと思った(特に不気味に笑う表情)

『秘密の森』に匹敵する〜というようなレビューもあるけど、今作の方が重厚で濃密。
結末が唐突で謎が投げっぱなし、多くの伏線が未回収だった『秘密の森』とは異なって、重厚な人間ドラマを挟みながら一つの結末に向かってゆっくりと物語が着地、(一応は)全ての伏線が回収され、見終わった後ズドンと胸にくる満足感があった。
JTBCのドラマで完走したの初めて。

最終話のタイトル「잡다」は犯人を捕らえるという意味と、手を握るという意味もある。あんなに握手することを嫌悪していたジュウォンがドンシクの手を握りながら泣くとは。一番好きなシーン。

誰もが怪物になり得るという、各回の”怪物”がタイトル『괴물』(怪物)と重なるオープニングの制作陣のセンスの良さ!
同じ制作会社の『模範家族』もおすすめ。
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