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黄金の日日のtubameのレビュー・感想・評価

黄金の日日(1978年製作のドラマ)
3.5

呂宋島に渡った中世の伝説的商人・助左衛門と、堺の町の人々の日々を描く大河ドラマ。


1978年の作品ということもあり、今のスピーディーな大河に慣れていると展開がかなり遅く感じた。物語の起伏もさほど激しくないため、助左下積み時代(?)の序盤はなかなかハマれず、録画を結構溜めてしまっていた。
しかし時折ずば抜けて面白い回がある。初期ならモニカと五右衛門のエピソードなど。


殊に最終回とその手前の1話は、初回から蒔かれた種が一斉に大輪の花を咲かせるような素晴らしい内容。
この2話を観れただけで1年間頑張って観てきて良かった!と心から思えるくらいだ。
ずっと助左が全く陰のない善人過ぎることに疑問を感じていたが、自由で包容力のある堺の町の精神を擬人化したものと遅まきながら感じ、そこから物語の捉え方が180度変わった。
終盤の展開は史実とは全く違うらしいが、堺の物語としてはもう完璧というほかない(実際の堺はどうか知らないが、この作品で描かれてきた堺はこうでなくちゃ!という感じ)。


美緒への最後の言葉(頻繁に近付いたり離れたりを繰り返しただけに熱すぎる)、絶妙に折り込まれる回想などグッとくる場面は多いが、OPの夕日で伏線を回収したところがもう最高だった。
思えば「黄金の日日」というタイトルのなんとしっくりくることか。今は亡き自由都市・堺を想う切なくも美しい言葉だ。



俳優陣も素晴らしく、特に秀吉と石田三成が突出して良かった。
過去色んな配役を観てきたが、自分の中ではベスト1と言ってもいいぐらい。
前半愛嬌のある秀吉(緒形拳)が、権力欲に溺れて恐ろしい人物になっていく様は、何度も観ている流れなのにぐっと引き付けられるものがあった。
中でも助左を追放するシーンの凄まじさは忘れられない。余命僅かな秀吉に籠った気迫に彼の情念が全て詰まっていると感じられ、圧倒された。
石田三成(近藤正臣)の情が深く実直な人物造形も人間味に溢れ、とても好きだ。
特に初めて助左に出会ったシーンの茶目っ気溢れる生き生きとした表情が印象深い。二人の間に流れる友情も熱いものがあった。



総合スコアだと低めで、所謂神回だと高スコアという感じ。
でもその波があるところがらしいというか、この作品の味だなと感じている。
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