ソラアユム

ハピネス -守りたいもの-のソラアユムのレビュー・感想・評価

ハピネス -守りたいもの-(2021年製作のドラマ)
3.6
題名:ハピネス
鑑賞日時:2024年5月21日
鑑賞方法:NETFLIX
評価:3.6(MAX5.0)

『重要なのはどこに住むかではない。誰と住むか…』


□鑑賞期間:2024/4/24~5/21
2024年14本目

□謎の奇病が大流行したことで、隔離された高級マンション内で巻き起こる騒動を描いた亜流ゾンビ物

ゾンビに噛まれたら(治療薬でもない限り)即人生終了といったゾンビ物のお約束を破壊した設定が新鮮で、数多のジャンル作品が輩出される最中、新しいゾンビドラマを製作してやろうといった気概は感じられるし、Kゾンビの造形は世界的に見ても突出して、出来が良いなと改めて感じる。

とはいえ、この設定、ゾンビ物のスリラー要素という観点から見るとやはり既存のジャンル作品と比較して、パワーダウンはしている。噛まれていても、ある程度理性は保てるし、人によってはOKというのがご都合主義的でスリリングにも欠ける。

作品内でもマンションの住人たちの間で散々議論の限りを尽くされる。感染者を人として扱うのか、それとも厳重に隔離管理するのかといった議論なのだけれど、そもそもそこがお門違いなのではと思ってしまう。

たとえ親しい人と過ごすことで感染者が発症するまでの時間を稼げるとしても(これも作中で明確なエビデンスはない)、非感染者と感染者が同じ空間で日常生活を送れるわけがない、ということはアフターコロナの世界で生きる我々が容易に突っ込みを入れたくなるところだろう。感染者も理性をある程度保てるとはいえ、大切な人をかみ殺すリスクがあるわけなのだから、解決策が見つかるまで、自ら隔離を希望する、というのが自然な流れなのではないだろうか。

こういった細かい突っ込み所はまだ可愛げがあるレベル。今作最大の突っ込みどころは全ての騒動の元凶である肺炎特効薬“ネクスト”の存在だ。肺炎に対しての効果は認められなかったものの、副次的効果として、滋養強壮、集中力アップが期待できるということでセレブの中でも大流行している違法ドラッグとのこと。このドラッグに含まれるウイルスが奇人病を発症させるのだとか。そもそも錠剤型の内服薬にウイルスが入っているというのが意味不明では笑 百歩譲ってそのウイルスの検証を製薬会社が全く行っていないなんてあり得ないよね。

弛緩したストーリー展開も大変苦痛だった。基本的には警察官の主人公と特殊警察部隊に所属するヒロインがマンションで起きたしょうもないトラブルを解決するだけで、1時間強のエピソード×12話構成を耐え得るだけの中身はない。絵面も変わり映えせず、基本的には隔離されたマンション内を巡回するに留まる。定期的に開催される住民集会で建設的な議論は行われないし、興味深い内容もない。

契約結婚がどうのと言う自己中心的なヒロインも生理的に受け付けないし、感染対策本部の中佐は特に理由もなく強硬手段をとったりと、脚本も難アリである。ほかにも言いたいことは色々とあるが、ここまでにしておこう。完走できた自分を誉めてやりたい。

この手の韓国ドラマで明確な失敗作を見れたのはある意味貴重かも。


以上