どういう視点で鑑賞するかによって没入感と評価が変わるという不思議なドラマ。
タイトルとあらすじから期待するルッキズムを風刺した社会的メッセージ作品、という視点で観たら全くの期待外れ。
3話あたりからこれは女たちのノワールエンタメか？と思い始めて、そう割り切ってからは普通に面白く完走できた。
でもやっぱり『イカゲーム』はじめ、社会問題を取り込んで極上のエンタメにしてくれるのが得意な韓国にしては、今作はそこまで昇華できてなかったかな。
『イカゲーム』が幅広い層に評価されたのは、エンタメ的な面白さに加え、各キャラクターがお金に執着する理由とか、極限まで追い詰められる様を、人間の本質や韓国が抱える社会問題に結び付けてしっかりと描いていたからだと思う。
このドラマもそれを期待したんだけど・・・
例えば殺人、整形、自首っていうドラマ上キーポイントとなる主人公の行動で、そこに至るまでの内面描写が一切なかった。整形なんて特にこのドラマのテーマのはずが、理由が逃亡‥？！
ただひたすらに極端な行動の連続で、インパクトやハラハラ感から逆算したようなストーリー展開。そこに至るまでの理由や動機、葛藤など内面描写は無視して駆け抜けた7話だった。
視点を変えた群像劇の構成は好きだけど他にも山ほどあるし、映像・演出も特に印象的なところはなかったんだけど、群を抜いて素晴らしかったのがラブホテルや部屋の内装などの美術と、役者さんの演技。
ワンシーンだけ出演のクラブの男性従業員や警察官など、チョイ役の役者さんまでもが皆んな個性がキラリと光ってた✨
ラスト二人の女優さんのノワールはさすが。日本じゃ絶対見れない。
最後のモミを演じた女優さんはミスコリアだと知ってびっくり。あそこまでの役を引き受けてくれる日本の正統派女優はいないだろうな。
アン・ジェホンに至ってはこのドラマで新境地開拓したよね。
３０代の彼が、だらしない体型で薄毛のカツラ、声も歩き方も喋り方もキョドった視線も何もかも、恋人も友達もいないアダルトアニメ好きの冴えない中年になりきっていて、
『狩の時間』でイ・ジェフン、チェ・ウシク、パク・ジョンミンと共に演じた楽園へ向かうギラギラした青年とはまるで別人。
最初全く気づかなくて、それでも数少ない笑顔がなんか素敵だなと思って調べて初めてわかった。
あと日本語上手い！韓国ドラマ・映画で出てくる日本語の中でダントツ上手かった。
最近Netflixにくる韓国ドラマは面白いんだけど記憶に残らないって作品が多い。
ストーリーに深みがない反面、役者さんの演技は皆素晴らしいので±ゼロで3.0辺りが続出。
そういえば先日観た『ただ悪より救いたまえ』も殺し屋イ・ジョンジェがファン・ジョンミンを執拗に追いかけ回して、アクションと演技は凄いんだけど、これまた情緒がなく空っぽ。
こういうの最近の流行りなの？🤔
