こたつむり

贖罪のこたつむりのレビュー・感想・評価

贖罪(2012年製作のドラマ)
3.0
原作・湊かなえ、脚本・黒沢清。
そりゃあ、墨汁を薄めたようなネトッとした闇に満ちた物語になるのも当然。言葉にするのは難しい感覚なんですが、心の奥に何かが溜まるんです。

黒沢清監督もノリノリだったんでしょうね。
画面の色調から始まって、光の使い方や、リアリティを考慮しない外連味溢れる演出。筆が快調に滑りまくっているのが伝わってきました。

また、物語の構造も良いんです。
“ある事件”を中核に据えたオムニバス形式なので、各話ごとに特色が違うんですね。

第一話の主人公は蒼井優さん。
恐怖に囚われて思考停止した人生は闇でしかなく。幻想という名の光に縋るのも闇を深くするだけなのです。

第二話の主人公は小池栄子さん。
こころの拠り所を失えば、待ち受けているのは闇。ドロリと溶けた沼で“正解”を手に入れることなんて出来るはずがありません。

第三話の主人公は安藤サクラさん。
彼女は最初から檻が用意されていました。それはきっと心地良いものだったのでしょう。何しろ、外敵からは守ってもらえるのですから…でも、そこから出ようとすれば…。

第四話の主人公は池脇千鶴さん。
器の中身が空っぽならば、そこに在るのは闇。社会的な制裁を免れたとしても、きっと何処にもたどり着けないことでしょう。それが本当の地獄かもしれません。

そして、第五話は…。
この物語に共感できるかどうか…それで本作の評価は定まると思います。僕はちょっと無理でした。黒沢監督の筆致はリアリティを重視しないのは承知なんですが…うーん。やっぱり相性が悪いんですかねえ。

まあ、そんなわけで。
小学生の頃に起きた少女殺人事件を軸に“贖罪”を描いた物語。黒沢監督の筆致が大好物な向きならば“イヤな気持ち”を存分に味わえると思います。

なお、どんでん返しはありません。
容疑者の顔もチラリと映りますからね。少なくとも“誰が演じているか”は第一話の時点で明白。その辺りに期待しないほうが吉です。
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