なっこ

私の夫と結婚してのなっこのレビュー・感想・評価

私の夫と結婚して(2024年製作のドラマ)
3.3
新年からスタートした国内ドラマはほとんど見ていない

海外ドラマばかり見ている人になるつもりはなくて、面白い海外ドラマから日本のドラマは学ぶべきだと思い、その面白さを見つけるために見ていたはずだった。

でも、こんな風に韓国内で放送されるのとほぼ同時に日本を含めた海外にも配信されるようになってしまうと、もはやこのレベルで戦わないといけないのかと圧倒されてしまって…国内ドラマの良さを見つけることが難しくなった。要するに見る気がしない。比べてしまうと粗ばかりに目がいくから。

タイムリープ復讐ものの利点は「覆流年」で語ったので繰り返さない。このドラマの良さは、さらにコミカルさを加えたことだろう。後半は生きるか死ぬかのサスペンスフルな展開になってしまったが、前半の親友と元夫カップルのじゃれあいはどこかおかしみがあって嫌いにはなれなかった。元夫は典型的なモラハラDV夫だが、どこか間抜けで憎めないし不思議と清潔感がある。この役柄をやりこなす素の彼は多分とても色気のある男前なんだろうなと思わせるだけの人間的な魅力があった。なかなかいないよね、嫌な役柄だけどなんか憎めない、なんて。

原作は未読。
多くの海外の視聴者をも取り込めた理由はこのドラマがきちんとヒロインの内面世界と人間関係の問題点を掘り下げてstoryを練り上げているからだと思う。二度目の人生をスタートさせた時点で彼女はかなり自分自身を深く分析して人生をより良い方向に変える努力を始める。依存的な親友と優しさに欠ける夫から自分の人生を取り返す方法と彼らから上手に逃げる方法を模索していく。彼女のそういう実に堂々とした戦いぶりには惚れ惚れした。

始まりが自らの死、というタイムリープ復讐ものは結局のところ、相手か自分か、どちらかしか生き残れないのだろうか。殺すか殺されるか、そんな運命しかない出会いなら、最初から出会いたくはないな、なんて思ってしまう。「覆流年」でも感じだが、中国でも韓国でも嫁ぐ男の人生に左右されるのが女の運命のような描き方は、まだそういう呪縛から女の一生は自由ではないことの表れであるかのように思われる。結婚すれば人生は夫の運転に任せるしかない、その乗り物から降りることは出来ない、そういうような縛りが見え隠れする。だからこそ正しい男を選ぶべき、という考えがどこまでいまという時代に合っているのだろうか、ラストを見ながら、うーん、これが求めた結末だったろうかと少しモヤっとしてしまった。

復讐ものがスカッとする、という方にはきっと納得のラストなのだろう、とは思う。そもそも復讐ものが苦手なのかもしれない…とさえ思い始めた。このstoryはヒロインの運命だけじゃなく、彼女のMr.ライトの運命も一緒に変えていくところにややこしさがあったのかも。前半はヒロイン、中盤からはヒーローの運命を変えていくstoryに主軸が動いていったように感じた。もしも日本でリメイクするようなことがあれば、その辺りの交通整理が必要そう。ヒーローは影の男に徹してスッキリヒロインだけの復讐劇にした方が後味の良いstoryにまとまりそうな気がするなあ。

個人的には冒頭から亡き父の娘への愛にじんときてしまって、こういう父性の在り方には正直憧れる。ヒロインのパパの贈り物のような男性ばかりがこの世にはびこってくれたなら、復讐なんて必要のない平和な恋人たちの世界が実現できるのになと思う。

“2度目のチャンスを”を、そんな風に力のある側が与える方にまわる、良い循環を作り出す父性を、ヒロインは継いだのだと思えば、この物語の終わりも悪くないのかもしれない。
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