なっこ

覆流年(ふくりゅうねん) 復讐の王妃と絶えざる愛のなっこのレビュー・感想・評価

3.2
「ふたりの男とひとりの女論」とでも題して恋愛ドラマ論を書こうかしら

なんて思いながら視聴中。

嫁いだ男の策略により何もかもを失ったヒロインが、記憶を留めたまま時を遡り、運命を塗り替えるために奔走するstoryは、Prime Video で放送中の「私の夫と結婚して」と物語の型が似通っている。

このタイムリープ復讐劇の魅力的な点はいくつか挙げられる。

まず第一に、1回目の人生がたとえ不幸な結末であったとしてもそれがダイジェスト的な役割を果たすため前半でその物語に強く引き付けられること。1回目の人生の結末を知っていることは、大まかなあらすじを頭に入れてから見るネタバレ映画のようなもの。ネタバレ歓迎の今の感覚に合っている。どんなことが起こるのか先に想像がつくから飽きないし、興味がなければ即やめるという解決も早めにできる。そして1回目の人生でヒロインがひどく貶められるほどに見る側はその復讐の炎を一緒に燃やしてしまう、はじめからヒロインに強く肩入れして物語を見ることになる。それが彼女が少しでも幸せになるようなstoryを期待して続きを見ていく力になる。

そして、「運命」というものに対する姿勢が文化的背景によってやや異なることがstoryから透けて見えるのも面白い。ちょうど2つの作品を見始めた時期が重なったこともあり、タイムリープものは運命に対して人がどう向き合うかということもよく分かる物語なのかもしれないと感じながら見ている。

けれど、それよりも私が最初にこの物語の型に魅力を感じたのは、「ふたりの男とひとりの女」という恋愛ドラマのよくあるテーマをヒロインの貞節を守りつつふたりの間で揺れ動く心模様を描ける利点があるという点だ。倫理的に裏切ることのない話の展開に持っていける。ヒロインが魅力的だから複数の男たちに愛される、という展開は古来からよく描かれてきた。でも気が多い女は嫌われる、一途な女が好まれる、ヒロインは同時に複数の男を愛したりしない。そういう聖女ヒロイン縛りをしっかり解決できる、タイムリープして2度目の人生で新しい恋をするならば。あの時あの人を選んでいたならば…なんて後悔のないリアルな人生なんて私は無いと思う。でも同時にふたりは選べないし、どちらか先の未来しか体験できないのが実人生。でも、物語の世界ならその先を経験してタイムリープ、おおその手があったか、という夢の展開。面白くないはずがない。

…と、中盤まではどちらの物語もるんるんで楽しんでいたのだが、やはり簡単には幸せにはしてもらえない展開で選びたい男との未来にもしっかり試練がある。未来がある程度分かっていても人生って難しいのね…というわけで、やはりこの作品の物語は「ふたりの男とひとりの女」その三角関係の運命の糸のもつれ合いが魅力的。一途に思い続けて見守り続けてくれる男も魅力的だが、家族との縁が薄く愛とは何かをつかめずその執着心が恋心だとは理解できない不器用な男にも同情する。このあたりの愛憎劇がやはり見どころかな。

泣くことがあっても切り替えて涙を拭いて試練に果敢に立ち向かっていくヒロインの強さに勇気づけられる。何回目の人生であっても結局は、自分がどうありたいかを常に決断していくことが生きるっていうことなのかもしれない。
なっこ

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