長内那由多

ベター・コール・ソウル シーズン5の長内那由多のレビュー・感想・評価

5.0
第3話まで。毎週シーズンベストを更新する勢い。ギリガンらしいアヴァンタイトル。ハンクとゴメスも登場する。ソウルに改名してもまだまだ綱渡りなジミー。良心の呵責に苦しむマイク。そしてジミーに引きずられ、一緒に“悪事”を働くキム。“アルバカーキにいるな”という充実回。

E5→ジミーがソウルを名乗った前シーズンまでで物語のほとんどは終わっていて、今シーズンの主役はキム。毎話ジワジワと転落していき、そして『ブレイキング・バッド』に登場しない事を知っている僕らは彼女が大きな代償を支払うのでは、と悲劇の予兆に震える。

E8、アルバカーキではドラマは砂漠で起きる。ウォルターが“家族のために”という理由で物語を始めたように、ジミーが自らの動機と向き合った瞬間、ついに『ベター・コール・ソウル』は『ブレイキング・バッド』へと結び付く。最終章の始まりとなる傑作回!

E9。引き算に引き算を重ね、間と省略でドラマを紡いできたヴィンス・ギリガン組が現時点での最高峰に到達した(しかもまだ終わりじゃない)。特に今回は沈黙の場面が最高。神経衰弱ぎりぎりの終幕には汗びっしょり。さぁ、10回完封試合まであと1話!

完走。S5は全10話緩みのない傑作シーズン。円熟の演出、脚本、演技はPeakTVにおける最高峰。ドラマは選択と運命の物語へとシフトし、コーマック・マッカーシーを彷彿とさせる現代アメリカ神話になりつつある。次回最終シーズンで『ブレイキング・バッド』を完全に超えるだろう。
長内那由多

長内那由多