Masato

ベター・コール・ソウル シーズン4のMasatoのレビュー・感想・評価

4.4

衝撃のラストからのシーズン4、ジミーとキムはチャックとの争いが終わり、ジミーは弁護士休職中。マイクは孫のための金稼ぎが一通り終わり、それぞれが大きな目的を失ってフワフワと浮いているシーズン。
ブレイキングバッドでも、シーズン4はジェシーの病み期描写多めで全体のストーリーラインがフワフワとしていた印象で、所謂過渡期のようなシーズンなのかな?と思ったり。

いや、中年危機や倦怠期といった表現が的確かもしれない。特段困るようなことはない。さして順調だが、どこかにしこりのようなものがある。なにかおかしいような。物語としては一番に時間経過してると思うが、話としては地味で停滞している。

キャラの感情がイマイチ掴みづらい箇所が多かった。急に機嫌が良くなるジミーや、思わぬところで泣くキム。その他、行動原理が不明なシーンが多くて戸惑ったが、終盤にそれが描かれた理由がなんとなくわかるようになっている。

それにしても、今シーズンは本当に理解するのが難しかった。それくらいにジミーというジミーを描いている。ものすごく複雑な悲劇。どうしようもならない過去の罪や己の性をもって、この先を生きることへのジミーのアンサーは、とことん相手から奪い取るということだった。誠実さを語りかけるのではなく。彼にあった良心というものがどんどん無くなっていって、でまかせの心へとすり替わっていっている。そんなジミーを見ていると、徐々に道を踏み外していったウォルターを彷彿とさせて哀しい。

おそらく、キムは私たち視聴者の象徴であると思う。ジミーとチャックの兄弟関係の虚しい顛末に思いを馳せれば感情が一気に膨らんでくる。きっとジミーもそうだろうと踏んでる。でもジミーはそうならない。まるで吹っ切れたかのようになる。ジミーは月並みの私たちと決定的に違うということをキムが教えてくれているような気がする。故に、ラストのソウル・グッドマンに成る瞬間のキムの表情は、段々と私たちの心から離れていっている(ジミーという存在が消えかかっている)ということを物語っているように思えた。

信用されなくなった、そうとしか思われないと思い込んでしまった人間の行く末って、冷笑主義や虚無主義なのかな。人に対して、何もかもが情熱をかけるに値するほど価値がなくて、だから酷にも人の感情をモノとして利用してしまう。それがジミー。難しいなあこの心情描写。自分の人生経験浅すぎて。

マイクは暇なのが嫌なのか、とにかくガスの職場と仕事に口を出しまくる。それが中途半端な知識じゃなくて、もはやプロ並みのスキルで凄い。絶対に警官どころじゃない過去を持っている気がする。そのマイクですら、ガスに蹂躙されていくのが…そしてブレイキングバッドでの顛末を見ているといたたまれない。
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