長内那由多

バリー シーズン2の長内那由多のレビュー・感想・評価

バリー シーズン2(2019年製作のドラマ)
5.0
E1~2の監督は前シーズンにも登板したヒロ・ムライ。『アトランタ』S2でも顕著だが、日常に暴力が入り込む瞬間の、空間が捻れるような怖さはこの人ならでは。

バリーは自分語りの課題を出されるが、従軍体験はトラウマであり、演じて見せるものではない。だが養成所の講師は絶対的存在である。芸術表現のために過度な苦痛は必要なのか?そんな最中にも殺しの仕事は絶えず…。

E5、オレはいったい何を見ているんだ????殺しの依頼がほとんど不条理ホラーのレベルで捻れていく超異色回。主演監督兼任ビル・ヘイダーの才能がついに牙を剥く!!!!必見!!!!
フィーリングとしては『アトランタ』のシュールさにも近く、これはゲスト登板したヒロ・ムライの影響も大きいのでは。ショーランナーでもあるヘイダーが初回2話の監督を託している意味は大きい。ムライは『レギオン』S1でもゲスト登板し、後のシリーズを方向付けていた。

完走。
日本では2年遅れのリリースとなったが、アルバカーキサーガ不在の海外ドラマシーンを賑わせるには十分な存在感。あらゆる場面をキメていく主演ビル・ヘイダーはパフォーマンスのみならず、監督としても非凡な才能を証明した。怨嗟渦巻く終幕に次シーズンへの期待が高まる!

サラ・ゴールドバーグ演じるサリーは安易な共感を呼ばないユニークなキャラクター。終幕の信じられない行動に唖然とした。自己愛が強く、演技未経験のバリーに対して優越感を持っている節があり、そんな彼女もまた表現者として目覚めていく。E7のモノローグは最高だった。

前シーズンでも底抜けのバカだったチェチェンマフィアのハンク(アンソニー・キャリガン)は、今シーズンも度を越したバカっぷり。こいつがアホをやる時は大抵、もの凄い殺戮も同時進行していて死ぬほど笑える。

演技論としても正しい『バリー』。日々の鍛練と、自身の経験の蓄積がパフォーマンスを構築する。熱中しても、プロセスを見失ってはいけない。本番で勝手に台本を変えられた経験はないが、功名心に駆られて全く違う芝居をやる役者は、いる。
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