山岡

スタートレック:ディープ・スペース・ナイン シーズン1の山岡のネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

昨年の夏頃からTOS→TAS→劇場版Ⅰ〜Ⅵ→TNG→劇場版Ⅶの順番で見ていき、遂にDS9に到達。

宇宙船エンタープライズから辺境の宇宙ステーションに舞台を変えたスピンオフ作品だが、TOS、TNGと人物配置やストーリーの型などの面で共通点が多く、スタートレックらしさをしっかり保っている。

しかし、これまでのシリーズでは、初めから味方の登場人物が皆、艦長への圧倒的な忠誠心を持っていたのに対し、連邦とベイジョーの寄せ集めスタッフにより構成されたDS9ではシスコ司令官はカークやピカードのような圧倒的な信頼の基盤のもとに存在しているとは言い難い。ベイジョー人のキラは副長的な立場でありながら、シスコと何度も衝突し、EP17「反逆のテレパス・エネルギー」では(全て本人の意思によるものでは無いとはいえ)反乱まで起こす始末。スタートレック的な理想主義に基づく物語でありながらも、DS9では未だその理想の世界は実現できておらず、より現実世界に近い世界観のシリーズといえると思う。TOS、TNGとは異なるヒリヒリとした感覚が独特の面白さを生んでいる。

また、TOSでは凶悪な存在にしか見えなかったクリンゴン人をTNGで丁寧に掘り下げることで彼等の魅力を浮かび上がらせたのと同様に、TNGではサブキャラに過ぎなかったベイジョー人やフェレンギ人たちのバックグラウンドを丁寧に掘り下げているのも本作の大きな魅力。中でもTNGでのフェレンギ人の扱いは酷く、ヒューマノイドでありながら醜くてあさましい豚のような描き方をされていたが、悪人ではあるが賢くて情に厚いクワークを主要キャラクターに据えることで、視聴者のフェレンギ人への印象をガラリと変化させている。まさかフェレンギ人を好きになる日が来るなんて、TNGを見ている時は思いもしなかった。

シーズン1では、後期TNGのような、名作エピソードが量産されているわけではないが、素晴らしいエピソードが幾つか。

EP7「共生結合体 “トリル族”」
TNG S4-23「愛の化身オダン」でトリル人の生態を使って素晴らしいラブストーリーに仕立てていたが、このエピソードでは、その設定を上手く使って法廷ものをつくり上げている。お馴染みの法廷ものだが、トリル族の特殊性を上手く使い、映画『真実の行方』のように二人の人格をもつ者の罪をいかに裁くのかというテーマを追及するなかなか興味深い回。

EP18 謎のカーデシア星人
間違いなくシーズン1のベストエピソード。ナチによるユダヤ人虐殺を思わせる痛ましい事件をベースにしながら、カーデシア人の正体を巡る謎により視聴者の感情と好奇心を揺さぶり続け、最後にはスタートレックらしい前向きなエンディング…かと思いきや見る者全てを絶望に叩き落とす衝撃的なエンディング。ここまで後味の悪い話はTOS、TNGには無かったと思う。DS9が陰鬱なシリーズだと呼ばれるのも無理はないと思わされたエピソード。

EP19 預言者の導き
宗教の原理主義と科学の対立を描いたエピソードで、宗教組織内の権力闘争のため爆破テロまで発生する恐ろしい展開が見られるが、対立ではなく相互理解が大切だととくシスコの素晴らしい演説が聞ける、シーズンフィナーレに相応しいエピソード。

スタートレックらしい部分とらしからぬ部分が共存した素晴らしいシーズン1だった。シーズン2以降、キャラクターが深掘りされていくことでもっと面白くなっていくのだろう。シーズン2以降にも大いに期待したい。

ちなみにTOSもTNGも HDだったので、本作のSD画質に最初は違和感を覚えたが、見進めるうちに徐々に慣れていき、途中からほとんど気にならなくなった。
山岡

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