山岡

スタートレック:ヴォイジャー シーズン7の山岡のネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

最終シーズン。長かった…8月に見始めて7ヶ月ちょっと…彼らがついに地球に帰還した瞬間は感無量だった…と言いたいところだが、ややカタルシスに欠けるラストだった。

とはいえ、シーズン後半以降の安定した面白さはキープできている。僕が気に入ったエピソードは次の通り。

EP10「対決する時空」
ヴォイジャーが時間の亀裂に巻き込まれ、艦のスペースごとに異なる時間軸に存在することになる。ヴォイジャーの過去と未来が入れ替わり立ち替わり現れ、異なる時間に存在するクルーが協力する様は感動的だった。

EP11 「母となる者の孤独」○
遺伝子操作の手術というSF的なギミックを用いて、親となることへの困難と素晴らしさを描いた素晴らしいエピソード。娘からクリンゴンの要素を除去しようと遺伝子操作をゴリ押しするベラナだが、少しずつ子供時代のショッキングな出来事の回想シーンが展開される。これにより、視聴者が上手く彼女の心情にシンクロできるようになっている。クライマックスでパリスが彼女の気持ちに自然に寄り添ってくれるところで感動させられる。

EP22「帰り行く処」
ニーリックスがヴォイジャーから下船するお別れエピソード。ケス降板あたりからほぼ空気のような存在になっていたニーリックスの前に急に同胞が現れて、彼らと共に暮らすという展開は、ともすれば体のいい厄介払いにも見えかねない…しかし、これまで育んできたナオミとの関係の変化や、タラクシア人のバックグラウンド、さらに性格が異なるトゥボックとの関係を上手く織り交ぜることで、地味ながらも感動的なエピソードに仕上がっている。

以上、それなりにら面白いエピソードもあったシーズンだったが、EP22を除いては最終シーズンらしい緊張感は皆無で、アルファ宇宙域に帰れそうな雰囲気など微塵も現れない…そんな中、良くも悪くも衝撃的だったのが最終話「道は星雲の彼方へ」だ。まず、誰もが見たいと思っていたヴォイジャーの帰還シーンを冒頭でいきなり見せてしまう。この時点で、作り手は普通の最終回を見せる気は毛頭ないことがわかる。そして未来のクルーの同窓会、未来のジェィンウェイのタイムトラベル、ボーグとの対決、ボーグのトランスワープチューブを使った帰還と怒涛の展開が続く…そう。我らがヴォイジャークルーは自力で帰還するのではなく、未来のジェィンウェイに導かれ、さらにボーグの技術を使ってひとっ飛びでアルファ宇宙域に帰ってきたのだ。7シーズンの長旅を共にしてきた視聴者にとって、こんなあっさりとした帰還はなかなか納得し難いものであり、なんと言ってもカタルシスに欠ける…ただ、自分のエゴでクルーをデルタ宇宙域の漂流者にしてしまったジェインウェイが、やはり最後も自分のエゴで自らの命を投げ打って彼らを強引に帰還させケジメをつけるという展開はどうしてもジェィンウェイらしいし、ヴォイジャーの終わり方としてとても筋が通ったもののようにも思える…とにかく両手を挙げて賞賛できる内容ではないが、適当に作られた最終回ではないことは確かだ。

最後に『ヴォイジャー』シリーズ全体を通しての感想。TNGはスタートレックを90年代仕様に見事にアップデートし、続くDS9はスタートレック=1話完結の常識を覆し陰謀渦巻く大河ドラマを見せてくれた。『ヴォイジャー』は舞台をデルタ宇宙域におくことでTNG、DS9にあった複雑さを払拭し、TOSのような1話完結のシンプルなスタートレックを復活させたことは評価していいと思う。ただ、遠く離れたアルファ宇宙域への帰還の旅というユニークな設定は、S6-EP10「遙か彼方からの声」など一部の傑作エピソードを除いては上手く活かすことができていなかったと思う。結局この設定を使ったエピソードがほとんど作られなかったことから、最終話は歪なものになってしまったのだと思う。ただ、ホログラムのドクターや元ボーグのセブン・オブ・ナイン、そしてなんといってもカークを超える身勝手な艦長ジェィンウェイなど魅力的なクルーのアンサンブルはとにかく素晴らしかった。約7ヶ月かけてヴォイジャーの7年の旅を共にできたことを嬉しく思う。
山岡

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