山岡

24 -TWENTY FOUR- シーズン1の山岡のネタバレレビュー・内容・結末

24 -TWENTY FOUR- シーズン1(2001年製作のドラマ)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

息もつかせぬ24時間ノンストップサスペンス。

日本でも大ヒットしたあまりにも有名な作品。それ故、天邪鬼な自分はこれまで敬遠していたのだが、ちょうど見るものがなくなった今のタイミングで視聴してみることにした。見始めると、案の定止まらなくなってしまった。さすがに24時間連続視聴とはいかなかったが、2,3日であっという間に完走することができた。

このドラマでは、主人公ジャック・バウワーの前に次から次へと新たな事件が発生する。大統領候補の暗殺計画をやっとの思いで阻止したと思いきや、新たな暗殺計画が始動し、バウワーの娘は何回も誘拐される。さらに、裏切り者が次から次へと登場し、ついでに中年夫婦の危機や職場恋愛のいざこざなと人間関係のトラブルも後を立たない…そのため、視聴者がドラマに飽きる暇が無い。画面から目を離す余地が全く用意されていないのだ。

また、次から次へとイベントを用意するだけでなく、要所要所にサスペンス濃度の高いシーンが配置されており、高いテンションのまま見続けることが可能となっている。個人的には、バウワー母子の監視役の男が小屋の中で携帯電話を探すシーン、そしてパーマー議員の側近の女が敵の男に発信機を仕掛けるシーン、この二つのシーンがサスペンス的なハイライトだったと思う。

とにかく、ドラマを構成する全てのリソースが「面白さ」のために捧げられており、芸術性や社会的なメッセージは皆無と言っていい。後継作品であるドラマシリーズ『ホームランド』は本作同様に政府機関で働く主人公が次から次へと災難に巻き込まれる娯楽大作だが、イラク戦争の帰還兵の問題、対テロ戦争など現実の問題をエッセンスとしたテーマが盛り込まれており、かなりシリアスなドラマとなっていた。一方、『24』は大統領候補の暗殺と妻子の誘拐という非常にシリアスな事件が起きているにも関わらず、現実問題への批評的視点が完全に欠落している。また、登場人物たちは時に物語的な整合性から逸脱した間抜けな行動をとり、どこか能天気な雰囲気を漂わせている。本作より少し前の時代に作られた、『ダイハード』『スピード』のようなサスペンス・アクション大作の系譜に連なる作品といえる。本作のシーズン1の初回放送は911テロ事件直後の2001年の11月。おそらく911テロ事件以前に制作されたからこそ、非常にシリアスな題材を扱っておきながら娯楽に特化した作品が出来上がったのだと思う。

最終話、バウワーが敵陣に突入し皆殺しにするというバカみたいな展開で大団円を迎えるかと思いきや、最後の最後にテリーの死を描くことで能天気だった作品に一気に暗い影を落とす…シーズン2以降、作品のトーンがどう変わっていくのか、非常に楽しみである。

あと、唯一惜しいのが作中の時間進行と作品自体の時間進行が完全に一致しているという特徴がうまく活かされていなかった点。これについてもシーズン2以降の変化に期待していきたい。
山岡

山岡