山岡

スタートレック:ディープ・スペース・ナイン シーズン6の山岡のネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

シーズン6はDS9がカーデシアによって占領されてしまうという衝撃的な展開からスタート。EP1〜EP6までは緩やかに連続するエピソードで、カーデシア占領下のDS9の様子、そしてシスコ達による奪還作戦を一繋ぎの物語として描いている。ここまで長く連続するエピソードはシリーズの中でも初めてで、5話かけてDS9の占領を描いたからこそ、奪還時のカタルシスは非常に大きなものがあった。そして、今シーズンでは主要登場人物のジアル、ジャッジアと2人の人物が死亡する。それぞれのキャラクターの死を単発の悲劇的なイベントとして済ませるのでなく、しっかり物語と結びついている点は非常に好感が持てた。また、やや中弛みの感もあったシーズン4、5と比べ、挑戦的かつ見応えのある傑作エピソードを数多くものにしていたようにも思う。

個人的に気に入ったのは次のエピソード。

まず、EP16「至高の絆」。EP7で結婚したウォーフとジャッジアの深い絆を示すシリアスなラブストーリーで、前半でベタベタと愛し合っている場面や口喧嘩をする場面をみせ、2人の夫婦としての繋がりをしっかりと見せた後に、ジャッジアを瀕死の状態に追い込み、ジャッジアが死亡し彼らの絆が絶たれてしまうかもしれないという危機感を視聴者に持たせる。DS9でフェレンギの遊戯トンゴにハマるベシアを描いたBパートでもジャッジアが話題に上がっており、見る人のエモーションを最高潮に高めたところで、ウォーフがジャッジアの心臓の音を聞いて彼女の元へ戻るシーンへと展開していく。その瞬間、視聴者は心臓の音がジャッジアのものだと分からずとも、ウォーフに完全に感情移入してみることができる…本当に見事な演出だ。このエピソードで、ウォーフとジャッジアはライカーとトロイを超えてシリーズのベストカップルになったと言える。

そして本シーズンのベストエピソードと言えるのがEP19「消された偽造作戦」だ。
シスコが裏工作によりロミュランを戦争に引き込むという衝撃的な内容で、シリアスな印象が強いDS9の中でも一際ドス黒いポリティカル・サスペンスとなっている。シスコの回想という形式を取り、彼のモノローグを多めにすることで、視聴者は悪の道へと突き進むシスコに感情移入をして彼と同じようにいや〜な気分になりながら物語を見進めることを強要される。さらに、偽のホログラム映像を使った作戦の成否を常に話題の中心に置き、観客の注意をその作戦の成否一点に集中させることで、ガラックによる真の目的に気づかせないよう誘導している。まさにオブシディアン・オーダーの工作活動の如き巧妙な脚本。SF的なギミックはないが、シンプルに脚本とドラマの面白さを追求した掛け値なしの傑作エピソードだ。

続くEP20「 心をつなぐホログラム」もコメディ回ながらなかなかの傑作。
ベシアが作ったフランク・シナトラのようなキャラクター高性能ホログラム、ヴィクがオドーとキラの縁結びをするというエピソード。個人的にあまりオドーが好きではないのだが、このエピソードはロマンティック・コメディとして本当に素晴らしい。オドーがホログラム映像の世界で自信をつけていくというエピソードの本筋、クライマックスのオドーが相手をホログラムだと思いながらデートするシーンなどSF作品でしかあり得ない、それでいて非常にロマンティック・コメディ的な愉快な展開を楽しむことができる。そしてラストのオドーと少佐のお洒落な告白からのキス…クラシカルなロマンティック・コメディを見ているような感動的なエンディングだった。

そして衝撃のEP26「決意の代償」。
前述の通り、メインキャラクターのジャッジア・ダックスが死亡する。思えば、ジャッジアはEP7でウォーフと結婚、EP16で瀕死の状態になった後夫婦の絆を再確認するなどジャッジアの死の伏線は多く周到に張り巡らされていた。EP24でウォーフと一緒にキラヨシを預かるエピソードやEP25のラストにオブライエンが乾杯のスピーチで仲間の死を示唆するシーンなど全てが彼女の死に繋がっている。しかもその死を引き起こしたのがEP6で娘ジアルを殺され狂気の状態となったデュカットによるものというのも憎しみの連鎖を見事に表現している。そして親友である彼女の死に責任を感じてこそ、シスコはDS9を去っていく…シリーズを通して見てこそ物語をじっくりと味わえる、ドラマシリーズの醍醐味が詰まったエピソードと言える。

個人的にはTNGシーズン3を思わせる充実したシーズンだった。4月から見始めたDS9も次のシーズン7で遂に完結する…ドミニオン戦争がどのように集結するのか、カーデシア、ベイジョーがどうなるのか、先が気になって仕方がない。
山岡

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