長内那由多

チェルノブイリの長内那由多のレビュー・感想・評価

チェルノブイリ(2019年製作のドラマ)
5.0
第1話。おそらく国家的隠蔽(フェイク)に対するカウンターという製作意図があると思うが、このドラマを当事者意識で見る事ができるのはロシアを除けば日本人しかいない。精神論と思考停止によって事態が悪化の一途を辿る様に戦慄。アンダーコントロールなんて出来るワケない!

第2話も緊迫。知性(科学者)への軽視が事態を人類滅亡寸前にまで発展させ、何とかそれを回避すべく熟練作業員の経験に頼って「国のために死んでくれ」と送り出す国家の傲慢。暗闇とガイガーカウンターのノイズ音に神経衰弱ぎりぎり。

第3話。無知であること(知らされないこと)、人間の命や尊厳を軽視する原発政策、そして86年当時と全く変わらないフクシマの現状認識の甘さに怒りがこみ上げる。僕らはもっともっと危険な状態にあるんじゃないの??

第4話。汚染区域内で1匹残らず“粛清”される動物。90秒を超えればほとんど即死する汚染区域を走り、瓦礫を掻き出す人間。胎内で放射能を浴び尽くした赤子。原発の前ではあまりに軽い命。こんな代物に利権を巡って集る日本って…

終幕、レガノフ博士の発する警鐘に言い様のない感情が込み上げる。嘘の代償とは何なのか。人権の軽視、モラルの崩壊、思考の停止がやがて国家を、人類を破滅させる。このドラマのメッセージを最も的確に受け取れるのは哀しいかな、日本にいる僕達なのだ。必見!
長内那由多

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