ソラアユム

俺の話は長いのソラアユムのレビュー・感想・評価

俺の話は長い(2019年製作のドラマ)
4.6
『俺には働かなくていい才能がある…』


30代ニート男、岸辺満が家族の問題に屁理屈と詭弁を駆使して切り込んでいく様を描くホームコメディ

非常に良質なホームドラマだった。
日本のドラマは殆ど見ないのだが、去年偶然地上波で見かけて(確か9話だった)生田斗真の饒舌ぶりに惹かれ、いつか見ようと思っていたドラマ。

1話25分×2エピソードという形式
2つのエピソードは一見、違う話だが所々繋がっている。エピソード名が全て『食べ物×モチーフ』となっていて、そのチョイスも絶妙である。

特段新しいことをやっているわけでもなく、劇的でドラマチックな事は全く起きない非常に小さな物語だが、そこには今の日本で失われつつある家族の絆が在る。

家族同士のテンポの良い掛け合いが見事。これは間違いなくキャスティングの勝利。生田斗真、小池栄子、安田顕、清原果耶、原田美枝子が揃った時の会話がとにかく楽しく見ていて飽きることがなかった。

屁理屈が“気づき”を与える。

このドラマは終わり方がいつも秀逸。前半はテンポの良い会話劇とコミカルなやりとりをしつつ、エピソード後半では家族の切実な問題に切り込んでいくシリアスな展開が多い。満は屁理屈と詭弁を立てれば右に出るものはいない変人キャラとして描かれるが、暴論とはいかないまでの筋が通っている為、毎度妙に納得させられる。満の屁理屈は綺麗事ではなく物事の本質を捉えている為、家族や周りの人達の人生に多くの“気づき”を与えていくのだろう。毎度ハッとさせられるオチで中々に侮れない作品だった。

好きなのは『毛蟹と体温計』
安顕の名演が光り輝く素晴らしいエピソード。清原果耶(ネクストブレイク女優間違いなしの逸材)も安田顕扮する新しい父親との微妙な距離感を見事に演じ切っていた。今まで経験したことのない種類の感動に目頭が熱くなる。

そして最終話『コーヒーとマラソン』
伏線の回収もスマートだが、一つの物語が閉じようとする寂しさもありながら、全ての登場人物の関係が清算され見事な大円団を迎えたと思う。満、頑張れ!

続編があるなら是非ともリアタイでみたいドラマ