MIDORI

ザ・モーニングショー シーズン1のMIDORIのレビュー・感想・評価

5.0
アメリカの賞レースでも絶賛されていたので、いつか見ようと後回しにしていたドラマでしたが、もっと早く観ておけば良かったと思うほど、欠点の無い極上のドラマでした。

ニューヨーク・マンハッタンにある、4大ネットワークの一つで、全米No.1視聴率を誇る朝の情報番組を舞台に、人気キャスターの同僚女性へのセクハラによる即刻解雇の日から、局内のあらゆる人たちが自分たちの持つネタなどを使って昇進などをしようと、複雑な人間関係が明らかになっていきます。

このドラマではUBAというテレビ局が舞台となりますが、これはアメリカ最古のテレビ局である“NBC”のことで、タイトルであるThe Morning Show(通称:TMS)は、NBCの看板番組でアメリカ最古の朝の情報番組“Today”のことを指しています。TMSのライバル番組である“Your Day, America(通称:YDA)”は、Todayのライバル番組で“ABC”が放送している“Good Morning America(通称:GMA)”のことです。

原作は、2013年にニューヨークタイムズから出版されたノンフィクション小説“Top of the Morning”です。原作ではセクハラの内部告発などは特になく、あくまでTodayとGMAの長年に渡る視聴率争いなどの話が軸となっています。しかし、2017年にMeToo運動などで女性たちが声を上げるようになり、Todayで20年近くアンカーを務めていたマット・ラウアーが同僚からセクハラで訴えられて即刻解雇。これと同時期にこのドラマも制作も始まり、フィクションなのかノンフィクションなのか、もはや分からなくなってくるのがこのドラマの面白味であります。

ドラマの製作総指揮には、主演であるジェニファー・アニストンとリース・ウィザスプーンも名を連ねています。内容が内容なので、男社会で強く生き抜く、性格が対照的な女性アンカー二人を軸として、局内の人間模様もスタッフの女性を中心に描かれているのがいいと思います。

個人的に面白いなと思ったのが、主演3人について。ジェニファー・アニストン、リース・ウィザスプーン、スティーヴ・カレルといえば、それぞれエミー賞やGG賞、オスカーなどを獲得している俳優陣なので、演技力についてはお墨付きです。他にもこの3人には共通点があって、それは全員がNBCの3大コメディに出演していることです。NBCの3大コメディといえば、“サインフェルド”、“フレンズ”、“オフィス”ですが、ジェニファーはフレンズの主演、リースはフレンズでジェニファー演じるレイチェルの妹役、スティーヴはオフィスで主演を演じています。このドラマは前述の通り、NBCのTodayで起きた不祥事を描いていますので、この3人はNBCに対して挑戦状を叩きつけたことになります。マット・ラウアーのセクハラはかなり前からあったようで、テレビ局のドル箱であり視聴者からの好感度も高かったマットの印象を守るために、UBA同様にNBCもマット・ラウアーのセクハラを何度も揉み消していたそうです。NBCの人気コメディからスターになった俳優たちがこの作品に出ていることを考えると、告発される前から多少なりとも業界内で噂とかもあったのではないかな?と。ドラマのストーリーもNBCを批判するような内容となっているため、このドラマがテレビ局で製作されるのではなく、IT企業出資のオリジナルドラマとして製作され、テレビ局の印象操作に巻き込まれずにメッセージ性あるものとして作品が完成したことは、本当に良かったと思います。

テレビ局を舞台にしたドラマでは、他にHBOの“ニュースルーム”などがありますが、正直こちらの作品のほうが面白いです。このドラマを観るためだけにAppleTVを契約するのもアリなのではないかと思うほど良かったので、ヒューマン系のドラマが好きな人にはぜひ観てほしいなと思います。
MIDORI

MIDORI